(出典:ロシナンテスHP)
日本で普通に生活している私たちにとっては、当たり前にあるのが病院や薬。
風邪を引けば病院に行くことができる。
怪我をすれば薬局で薬を買うことができる。
これが途上国では「当たり前にできることではない」ということをご存知でしょうか?
途上国などに住む恵まれない方々は、医療機関で治療を受けられるお金がありません。
ましてや、病院すらない地域も多いのが現状です。
こうした医療問題を解決するため、多くのNPOが支援活動を展開していますが、寄付先としてどこが良いのか、どれだけの効果があるのか、不安を感じる方もいるでしょう。
この記事では以下の項目を通じて、途上国における医療問題を理解した上で、団体や寄付に対する不安や疑問を解消し、どのようにして支援ができるのかを詳しく解説します。
- 途上国の人たちの命を救う活動を行う団体の紹介
- 途上国の医療の課題
- 医療活動に寄付する方法
- 私たちができることや寄付先・募金先の選び方
この記事を通じて、医療問題に取り組む活動や、あなたにぴったりの寄付先がきっと見つかるはずですので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
途上国の人たちの命を救う取り組みを続ける団体4選
まずは「すぐにおすすめの寄付先を知りたい!」という方のために、寄付ナビ編集部が厳選したおすすめの団体を4つご紹介します。
ロシナンテス:アフリカの貧しい村に”巡回医療”などを届ける日本発NGO
ロシナンテスは、日本発祥の医療NPOです。
アフリカの医療が届きにくい地域で、病気予防のための給水所建設や循環医療に、2005年から取り組んでいます。
スーダンでは、一番近い診療所まで100km離れている村もあります。
当然、現地の人は体調が悪くても医療を気軽に受けることは難しいですし、そもそも医療に頼るという発想も持てないかもしれません。
ロシナンテスはこれまでに、スーダン国内に3棟の診療所を建設してきました。
それだけではなく、診療所の運営をスムーズに行えるようにサポートも行なっています。
診療所が持続的に医療を提供していくためには、医者の派遣や薬の調達がきちんとなされていくことが不可欠。
ロシナンテスでは、施設を建設するだけではなく、スタッフの育成や、スムーズな運営のためのオペレーション支援も含めて活動することで、医療を受ける人を増やせると考えています。
この地域において、すべての人が健康に生活できることを目指すプライマリ・ヘルスケアの質が大きく改善されました。
ロシナンテスHP
(中略)巡回診療事業が継続できているのは、ロシナンテスの継続的なサポートがあったからです。
活動内容 | 医療が整っていない村への巡回診療や、給水所・診療所の建設など |
活動地域 | スーダン・ザンビアなど |
支援対象 | 乳幼児とその母親・地域の村人など |
寄付の使途 | 衛生知識を学ぶ講習や、医療施設の整備にかかる費用等 |
運営団体 | 認定NPO法人ロシナンテス |
寄付は毎月1,000円から可能です。
ひとりひとりの力は、ドン・キホーテの「ロシナンテ」のように弱いものかもしれませんが、集まって「ロシナンテス」になれば、大きな力になるでしょう。
わたしたちの1,000円は決して大きな金額ではないですが、集まれば数多くの人々の命を救う力になります。
「自分にも何かできることはあるだろうか?」と思う方は、ぜひ一歩踏み出し、支援を検討してみてください。
> 団体公式サイトで詳しくみる
寄付金控除の対象団体です
国境なき医師団:内戦の負傷者の治療や感染症の拡大から途上国を守る
内戦の多い地域では、たとえ傷を負って治療が必要な場合でも、医療を受けられずに死亡するケースがあります。
また傷口から菌が入り、感染症の恐れがあっても薬を手に入れることが困難な状況です。
例えば、中東の最貧国とも呼ばれるイエメン。
2015月3月に激化した紛争では、4万人以上の死傷者が出ました。
2011年の反体制デモを機に内戦となり、2015年3月以降は政府軍と反政府勢力の武力衝突が激化。
多国籍軍の介入で首都サヌアをはじめ各地で空爆が繰り返される事態となっている。
国境なき医師団(MSF)が支援している病院も被害を受け、特に2016年8月15日の空爆では患者・スタッフ計19人が死亡。
イエメン北部の6つの病院で同年11月まで活動を一時中断した。
(認定NPO法人国境なき医師団WEBサイト より)
このように身近に危険がある状況下で負傷者の治療、産科医療、心理ケア、地域の病院の支援、医療物資の寄贈など、あらゆる手段で医療・人道援助を行っているのが認定NPO法人国境なき医師団(MSF)です。
周囲では内戦が続く中で2017年には活動を拡大し、コレラやジフテリアの流行にも対応したそうです。
活動内容 | 紛争地域での治療全般 |
活動地域 | イエメン、中央アフリカ共和国、南スーダンなど世界29ヶ国 |
支援対象 | 紛争による病気や怪我で苦しむ方たち |
寄付の使途 | コレラ治療、産後ケア、外科治療など |
運営団体 | 認定NPO法人国境なき医師団日本 |
上記の表を含め、今回は日本の支援額が最も多いイエメンを取り上げました。
他にも中央アフリカ共和国、南スーダン、レバノン、イラクなどへも積極的に支援を行っています。
MSFの詳しい活動内容や寄付の使いみちは、こちらも参考にしてみて下さいね。
同団体では、独自の調査に基づいて医療・人道援助を行う必要があると判断した場合に、活動プロジェクトを立ち上げているようです。
紛争や自然災害のほか、病院・薬がない地域への支援も行っていました。
寄付方法は、毎月の寄付と1回の寄付どちらも可能です。
例えば、月1,500円の寄付で毎月63人の人たちに清潔な飲料水を提供することができます。
「世界各国で起こる紛争によって負傷した方を怪我や感染症から守りたい」
そう思われた方は、支援を行ってみてはいかがでしょうか。
世界の医療団:医療アクセスが困難な途上国で長期的な医療支援を実施
世界には、医療を受けるにも国籍、人種、民族、思想、宗教などのあらゆる壁を乗り越えなくてはならない人々がいます。
例えば、皆さんは「ロヒンギャ難民」と呼ばれる方々を知っていますか?
ロヒンギャ難民とは、主にミャンマー西部のラカイン州に暮らす約100万人のイスラム系少数民族です。
彼らは国籍を持たずに数十年に渡り差別と激しい迫害に苦しめられ、多くの人がバングラデシュに逃れてきていました。
2017年8月25日、ミャンマー・ラカイン州で発生した襲撃とミャンマー軍による暴力、ロヒンギャが暮らすラカイン州西部から国境を渡り、バングラデシュへと逃れた人の数は70万人を超えた。
大規模な掃討作戦から70万人が命の安全を求めて逃れ、難民になったという事実は語られているが、その70万人ひとりひとりの彼らの暮らし、過去と現在、そして未来について語られることはあまりない。
(認定NPO法人世界の医療団WEBサイト より)
このように難民となった人々などに対し、世界中で医療アクセスの確保や難民支援の現場に従事する医療スタッフの育成を実現する活動を行っているのが認定NPO法人世界の医療団です。
差別や迫害だけでなく、彼らの生活を苦しめていたのはモンスーンによる豪雨でした。
せっかく逃れてきた避難所も大雨による洪水で使用できなくなってしまったり、満足できる生活ができなくなってしまっています。
活動内容 | 日本のスタッフ派遣による医療支援、治療提供 |
活動地域 | バングラデシュ・コンゴ民主共和国・シリア・レバノンなど世界81ヶ国 |
支援対象 | 医療へのアクセスが困難な地域で支援を必要としている方 |
寄付の使途 | 支援対象者の検診、手術、医療費など |
運営団体 | 認定NPO法人世界の医療団 |
先程ご紹介した国境なき医師団とよく似た印象を受けたのですが、いずれの団体も創設者が同じベルケール・クシュネルです。
国境なき医師団の創設者の1人である彼が1980年に設立したのが、この世界の医療団です。
両団体の活動の違いとしましては、国境なき医師団が緊急支援(紛争地・自然災害)を主としているのに対し、同団体では医療の行き届かない地域での長期的な人道支援が活動の中心となっています。
一般的にも国境なき医師団の方が知名度が高いのも、紛争や災害やニュースで取り上げられる等でメディアでの露出が多いのが理由なのかもしれませんね。
一方、世界の医療団ではボランティアを派遣し、地域パートナーと協働しながら医療を軸とした長期にわたるミッションを実施しています。
私たちの寄付は、彼らの衛生的な生活を取り戻すための物資の購入にも役立てられます。
毎月1,500円のご支援で保健衛生・防災教育活動に使用するテント2セットを購入できたり、毎月3,000円のご支援でコミュニティヘルスワークを担うユースの研修を2回開催することができるそうです。
「国籍、人種、民族、思想、宗教などのあらゆる壁を越えて、世界各地で「医療」から疎外された人々の支援にあたる」
これが世界の医療団の活動です。
寄付を検討されている方は、一度ホームページをご覧になってみてはいかがでしょうか。
病気と闘う人の”命”と”こころ”を救う日本発祥のNPO(ジャパンハート)
ジャパンハートは、日本人医師の吉岡秀人さんが創設した、日本発祥の認定NPO法人です。
吉岡さんがミャンマーで貧困により医療を受けることのできない人たちに対し、日本から持ってきたお金が尽きるまで治療を続けたのが活動の始まりです。
現在はミャンマーをはじめ、カンボジア、ラオスなどで医療活動を展開しています。
貧困家庭の患者は病院で治療を受けられず、ただ死を待つしかないことが少なくありません。
例えば、ミャンマーで口内にがんを患っていたある赤ちゃんは、ジャパンハートが診た時には手遅れの状態だったそうです。
たった一度だけでもいい、口内にがんを患う赤ちゃんにミルクを。
それでも、最後に一度で良いから口から直接ミルクを飲ませてあげたい。
ジャパンハートHP
お母さんにはお腹いっぱいで眠る我が子の感覚を残してあげたい。
その想いで私たちは手術を決断しましたーすべては、“心を救う”ために。
このような過酷な状況でも、患者の”命”と”こころ”の両方を救うことを大切に活動しているのが、ジャパンハートの特長と言えます。
活動内容 | 医療を受けられない方向けの外来診療・手術の実施など |
活動地域 | ミャンマー・カンボジア・ラオスなど |
支援対象 | 貧困などを理由に治療を受けられない地域の人びとやその子ども |
寄付の使途 | 手術・薬・入院の費用、交通費など |
運営団体 | 認定NPO法人ジャパンハート |
寄付の方法は、月3,000円(1日あたり約100円)からの「マンスリーサポーター」がおすすめです。
元サッカー選手の本田圭佑さんや、フリーアナウンサーの望月理恵さんも、支援者として活動に参加しているそうです。
ジャパンハートの活動内容について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参考になさってください。
編集部オススメのポイント!
医療の届かないところに医療を届けるために、あなたのご寄付が必要です。
マンスリーサポーターの申し込みを検討される方は、ぜひジャパンハートの団体公式サイトもご覧になってみてください。
> 団体公式サイトで詳しくみる
寄付金控除の対象団体です
途上国の医療の課題
発展途上国の医療の問題は、長年国際的な問題として対策が行われてきました。その成果もあり「2000年以降、世界の5歳未満児の死亡率が51%減少し、これまでになく多くの子どもが5歳を越えて生存している」そうです。(参考:ユニセフ)
しかし、依然として、出産前後の合併症、肺炎、下痢症、マラリアなど、予防または治療可能な原因により、たくさんの命が失われています。具体的な問題を見てみましょう。
医師の不足
多くの発展途上国では、特に農村部や遠隔地において医療施設や医師が不足しています。
国名 | 人口1,000人あたりの医師数 | 医師1人あたりの人口 |
---|---|---|
先進国 | ||
日本 | 2.43 | 約412人 |
ドイツ | 4.31 | 約232人 |
フランス | 3.38 | 約296人 |
発展途上国 | ||
インド | 0.78 | 約1,282人 |
インドネシア | 0.32 | 約3,152人 |
南アフリカ | 0.79 | 約1,266人 |
2022年時点の比較 参考:グローバルノート
感染症対策の不足
発展途上国では、予防接種を十分に受けることができない地域が多いです。麻疹やポリオなど、先進国では予防することができる感染症が蔓延しています。
ナイジェリアやパキスタン、アフガニスタンなどの国々では、ポリオが完全に撲滅されておらず、子供たちが感染リスクにさらされています。
医師の不足
発展途上国の多くでは、医療資源が慢性的に不足しており、薬品、医療機器、医療施設のインフラが整備されていないことが深刻な問題です。
病床数が少なく、患者が適切な治療を受けられないケースが頻繁に発生しています。また、抗生物質や抗マラリア薬などの基本的な薬品が不足している地域も多いです。
国名 | 人口1,000人あたりの病床数 |
---|---|
先進国 | |
日本 | 13.05 |
ドイツ | 8.00 |
フランス | 5.98 |
発展途上国 | |
インド | 0.53 |
インドネシア | 1.20 |
南アフリカ | 2.30 |
参照:OECD(2017年)
母子保健の遅れ
発展途上国では、母子保健に関する支援が十分でない場合が多く、新生児死亡率や母体死亡率が非常に高いです。サブサハラ・アフリカや南アジアでは、妊娠中の合併症や出産時の感染症が主な死亡原因となっています。
たとえば、ナイジェリアやインドでは、出産時の医療支援を受けられない女性が多く、母子の安全が確保されていません。(ユニセフ)
国名 | 新生児死亡率(%) | 母体死亡率(/10万人) |
---|---|---|
先進国 | ||
日本 | 0.8 | 5 |
ドイツ | 1.7 | 7 |
フランス | 2.0 | 8 |
発展途上国 | ||
インド | 22.0 | 145 |
インドネシア | 14.0 | 177 |
南アフリカ | 12.0 | 119 |
ナイジェリア | 34.3 | 917 |
参考:世界銀行(2018)
経済的な問題と医療費の負担
発展途上国では医療費の自己負担が重く、経済的に厳しい家庭が必要な治療を受けることが困難です。例えば、インドでは自己負担割合が70%と高く、これが貧困の悪循環を生んでいます。
経済的な負担が重いと、治療をためらい、病気が悪化するケースが多く見られます。
国名 | 自己負担割合(%) |
---|---|
先進国 | |
日本 | 15.9 |
ドイツ | 16.0 |
フランス | 17.0 |
発展途上国 | |
インド | 70.0 |
インドネシア | 63.0 |
南アフリカ | 52.0 |
ナイジェリア | 75.0 |
参考:世界銀行(2019年)
教育不足と医療に対する意識の欠如
教育機会が限られている発展途上国では、病気に対する認識や予防策についての理解が乏しく、結果的に健康状態の悪化を招くことが少なくありません。たとえば、エボラ出血熱の流行時、知識不足から誤った予防策が広まり、感染の拡大を助長することがありました。
医療教育の普及は、衛生習慣の改善や予防策の理解に欠かせない要素ですが、この分野への投資が十分でない地域が多いです。
発展途上国の医療には多くの国際支援が行われていますが、まだまだ支援が足りていません。緊急的な感染症対策に加え、医師や医療従事者の育成、医療インフラの整備、健康についての教育など、必要なことがたくさんあります。
そのために活動をしているのが、アフリカの貧しい村に”巡回医療”などを届けるNGO「ロシナンテス」や、貧困などを理由に治療を受けられない地域の人びとやその子どもに治療を届ける「ジャパンハート」といった民間団体です。
医療活動に寄付する方法
医療活動を行う民間の団体を、私たちは寄付で支援することができます。
オンラインでの寄付
クレジットカードやデビットカードでの寄付が可能です。寄付する金額や頻度(毎月の定期寄付など)も選ぶことができる場合が多いです。
銀行振込や郵便振替
指定の銀行口座等に直接振り込む方法もあります。
募金サイトやクラウドファンディングプラットフォーム
クラウドファンディングプラットフォームでも、医療支援を目的としたプロジェクトがあります。特定の団体やプロジェクトを選んで寄付することが可能です。
企業を通じた寄付プログラム
アマゾンや楽天などのサイトを通じて寄付金や物品を送ることもできます。
支援先として信頼できる?3つのチェックポイント
ここまで読んでいただき、様々な支援の形や支援団体について知っていただけたかと思います。
しかし、中には「結局どこに支援したらいいかわからない」という方もいらっしゃるかもしれません
そんな方のために、寄付ナビが考える「支援先として信頼できるかのチェックポイント」をご紹介します。
一般的に、企業の良し悪しを判断する材料として「ひと・もの・お金」の3つが大切と言われます。NPOでは、それは「ひと・活動・お金」です。
企業で言うところの”もの”、すなわち”商品”は、NPOがどのようなアプローチで問題を解決しようとしているのか、つまり活動の内容です。
その活動内容に賛同することが、まさしく、寄付を通じた応援と言えると思います。
さらに寄付先として判断する上で、「ひと・活動・お金」を適切な言葉に言い換えると、「職員・活動・会計」です。
- 職員の顔が見えるか?
- 活動によって問題を解決しているか?
- 透明性の高い会計報告を行っているか?
支援を迷っている団体があれば、是非参考にしてくださいね。
まとめ:医療支援の活動に寄付したい方のご参考に
今回は、途上国の人たちの命を救う取り組みを続ける団体を4つご紹介しました。
団体名 | 寄付ナビ編集部オススメのポイント |
ロシナンテス | ① 日本人医師が立ち上げた、日本発祥の団体 ② 川原さん自ら寄付者向けに活動を報告 |
国境なき医師団 | ① 包括的な医療支援 ② 現地での経験を基に、国際社会に現状を発信し、医療や人権の改善を訴える活動も展開 |
世界の医療団 | ① 紛争や貧困による医療格差の是正を目指して、基本的な医療支援から予防医療、精神ケアまで幅広く活動 ② 医療支援だけでなく、現地の医療従事者や地域住民と協力し、医療知識の普及も行う |
ジャパンハート | ① 貧困などを理由に治療を受けられない地域の人びとやその子どもへの支援 ② 著名人も活動を支援している |
私たちが当たり前に受けられている医療ですが、途上国に住む方々にとっては様々な障壁があります。そうした方々の生活を救うため、何かアクションをしたいという方は、是非寄付にご参加ください。