【2025/01/21 更新】
「寄付ってどんな意味『寄附』や『募金』、『義援金』とは何が違うの?」
「寄付すると何か良いことがあるの?」
「寄付に興味があるけど、どうやって寄付先を決めれば良いの?」
こんな疑問をお持ちではないでしょうか。
寄付は、社会課題の解決や支援を身近に感じられる行動ですが、その仕組みや方法、歴史について詳しく知る機会は少ないかもしれません。
この記事では、
- 寄付の言葉の意味
- 寄付先の選び方や寄付の方法
- 寄付のメリット
- 寄付市場の現状や未来について
- 寄付の果たす役割
についてわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、あなたの疑問が解消されるだけでなく、寄付を通じて社会に貢献するための具体的な選択肢が見つかるはずです。
目次
寄付とは?定義と概要を解説
寄付とは?
寄付とは、簡単に言えば「誰かを助けるために、自ら進んで支援を与える行為」です。
お金や物品を提供し、見返りを求めずに困っている人や団体を支える行動として、古くから人々の生活や社会の一部として存在してきました。
たとえば、募金箱への寄付や困窮する地域への物資提供は、典型的な寄付の一例です。
「寄附」「募金」「義援金」「支援金」との違いは?
これらの言葉は、いずれも社会貢献を目的とした行動に基づいています。
似たような言葉ではありますが、どのような違いがあるのでしょうか?
「寄附」とは
「寄附」は法律や公的文書で使われる正式な表現です。
たとえば、税制優遇を受けられる「寄附金控除」の制度や、官公庁の資料や法律・経理・税制関係などの書類には、この表記が用いられます。
一方で「寄付」という言葉は、一般的な会話や文章で用いられる表現です。
法律的な文脈よりも、広く親しみやすい言葉として使われることが多く、寄付文化を広める際の啓発活動や広告などで頻繁に見られます。
それぞれの言葉の意味については、以下の記事もご参考までにご覧ください。
「募金」とは
募金は、特定の目的のために広く一般から資金を集める行為を指します。
例えば、赤い羽根共同募金は、地域福祉の推進を目的として市民主体で行われる募金活動です。
募金活動は、多くの人々から少額ずつの寄付を募ることが特徴です。
寄付は、自らの意思でお金や物品を提供する行為全般を指します。目的や使途を限定せず、寄付先団体や個人の判断に委ねるケースも多いのが特徴です。
「募金」という言葉は、資金を集める行為だけでなく、実際に資金を提供する行為についても使われることがあります。そのため、「寄付」と同じ意味で使われる場合もありますが、厳密には異なる意味を持つ言葉です。
「義援金」とは
義援金は、災害などで被災した人々を直接支援するために集められる寄付金を指します。
例えば、日本赤十字社では、被災地の方々を支援するため、災害ごとに義援金を受け付けています。
集められた義援金は、被災都道府県に設置される義援金配分委員会へ全額を送り、被災者の生活支援に役立てられます。
寄付は、広くさまざまな社会課題や公益的な活動を支援するために提供されます。寄付の使い道は多岐にわたり、寄付先団体がその活動目的に応じて活用します。
「支援金」とは
支援金は、特定の活動やプロジェクトを応援するための資金提供を指します。
例えば、クラウドファンディングを通じてアートプロジェクトや新規事業を支援する場合、支援金という表現が適用されることが多いです。
支援金は「寄付」と比べて、受け取る側が特定の目的のために使用する傾向が強いのが特徴です。
寄付は、公益性や社会全体の利益を目的とした支援行為です。特定のプロジェクトや団体を対象にすることもありますが、広く公益性を重視した使い方がされます。
お小遣いと寄付の違い
寄付を「誰かを助けるために、自ら進んで支援を与える行為」と捉えると、「お年玉などのお小遣いと何が違うの?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
お年玉や親戚間でのお小遣いは、主に子どもの成長を応援する目的や家族内の習慣として行われます。これらは「寄付」とは異なり、個人間のプレゼントやサポートに近い行為です。
一方で、家族や友人でも、公益性のある活動に関与する人や団体に資金を提供する場合、それは寄付として扱われることがあります。
たとえば、家族がチャリティ活動を行っており、その運営を支援するための資金提供を行うケースです。寄付と身近なお金の贈与の大きな分かれ目は、「公益性があるかどうか」にあります。
公益性があるかどうか判断するには?
公益性があるかどうかを判断する際には、どのようなポイントを基準にすれば良いのでしょうか?
以下に挙げる要素を満たしている場合、公益性があると考えられます。
不特定多数の人々に恩恵をもたらす活動か?
公益性を判断する際の重要なポイントは、その活動が不特定多数の人々に恩恵をもたらすかどうかです。たとえば、医療、教育、福祉、環境保護など、広く多くの人々が利益を受ける取り組みが該当します。
一方で、地元のお祭りや町内会活動のように、特定のコミュニティに限定された恩恵をもたらす活動もあります。これらは地域社会の活性化に寄与するものの、公益性という観点では範囲が狭いと見なされることがあります。
ビジネス目的や個人的利益のためではなく、純粋に社会全体のために提供されるものか?
寄付の公益性を判断するもう一つの基準は、寄付金がビジネス目的や個人的利益のためではなく、純粋に社会全体のために使用されるかどうかです。
例えば、公共施設、学校、NPO法人、NGOなどの運営や活動に寄与する目的で使われる場合、その寄付は社会全体への貢献が期待されます。
では、NPO法人や学校法人、宗教法人、政党などの法人格への寄付は、すべて公益性があると断言できるのでしょうか?
政党への献金や宗教法人への寄付は、法的には「寄付」として扱われることが多いです。
しかし、寄付金の使途やその団体の活動目的によっては、必ずしも公益性があるとみなされるわけではありません。
例えば、特定の利益団体の活動に偏った資金運用がなされる場合や、特定の宗教的・政治的な目的にのみ使われる場合、公益性が問われることがあります。
信頼できる寄付先の選び方
寄付の基本的な意味を理解した次のステップは、自分の支援が本当に必要とされている活動や団体などの寄付先を見つけることです。
このセクションでは、寄付先を選ぶ際に、その団体が信頼できるかどうかを見極めるための3つのチェックポイントを紹介します。
企業の良し悪しを判断する材料として、一般的に「ひと・もの・お金」の3つが大切と言われます。
NPOでは、それは「ひと・活動・お金」です。
企業で言うところの”もの”、すなわち”商品”は、NPOがどのようなアプローチで問題を解決しようとしているのか、つまり活動の内容です。
その活動内容に賛同することが、まさしく、寄付を通じた応援と言えると思います。
さらに寄付先として判断する上で、「ひと・活動・お金」を適切な言葉に言い換えると、「職員・活動・会計」です。
以下に、それぞれについて解説します。
職員の顔が見えるか?
NPOの活動には、代表をはじめ、理事や職員、インターンやボランティアなど、多様なスタッフが関わっています。
団体の公式サイトで職員の顔を出していることは、活動に自信がある証拠です。
「自分のお金を誰に託すのか?」を知ることで、より安心して寄付を続けることができます。
その上で、職員数やボランティアの人数など、関わっている人の数も確認できると、なお良いと思います。
- 職員の顔:携わっている人の顔が見えるか。「自分のお金を誰に託すのか」を知ることが重要。
- 職員数:どれくらいの人が関わっているか。人数が多ければいいわけではありません。
あなたと似たような想いを持って活動しているスタッフがいる団体なら、それはあなたの価値観とマッチする団体かもしれません。
活動によって問題を解決しているか?
同じ社会問題に取り組んだとしても、解決するアプローチは団体によって、実にさまざまです。
例えば「子どもの貧困」と一口に言っても、
- 学習支援を通じて、子どもの学力向上に資する
- 食品配付を通じて、健康や栄養状態を改善する
- 相談窓口を通じて、虐待や暴力などを予防する
というように、団体によって活動の領域は異なります。
そもそもNPOが取り組んでいる問題は、すぐに解決には至らず、長い時間がかかることが多いです。
寄付先として検討している団体の支援アプローチは本質的に問題を解決し得るのか、またそのアプローチに共感するかどうか、などを見ると良いでしょう。
- 支援アプローチ:問題を解決、もしくは改善する活動を行っているか。
- 活動の実績:活動によって、しっかりと実績や成果を上げているか。
そうした活動の進捗を定期的に報告するプログラムが整っている団体であれば、自らのお金がどのように活用されたかの理解が進み、寄付をするモチベーションが増します。
透明性の高い会計報告を行っているか?
ほとんどのNPOは、会計報告を公式サイトで公開しています。
逆に会計報告を公開していない団体は、資金を不正に利用しているのではないかと、寄付者から疑問を持たれても仕方がないでしょう。
団体の公式サイトを確認すると「会計報告」や「年次報告」といった形で、会計や財務に関する情報を公開していることが多いので、チェックしてみましょう。
支出の内訳を、例えば事業費80%・管理費20%としている団体であれば、「1,000円寄付したら、おおよそ800円が直接的な活動に、200円が活動を継続していくために必要な費用に変わるんだ」と目安をつけることもできます。
- 会計報告:透明性の高い報告を行っているか。
- 寄付の使い道:納得できるお金の使い方をしているか。
さらに、監査法人や公認会計士による監査を受けていることを確認できれば、より信用度は高まると思います。
詳細はこちらの記事もご覧ください。
寄付の方法
信頼できる寄付先を見つけたら、次に考えるのはどのような形で支援を行うかです。
寄付の方法にはさまざまな選択肢があり、自分のライフスタイルや価値観に合った方法を選ぶことで、寄付をより身近に感じることができます。
ここでは、お金による寄付や不用品寄付、ポイント寄付をはじめとしたさまざまな寄付方法と、それぞれの特徴や選び方を解説します。
また、遺贈寄付やマッチング寄付など、特定の目的や仕組みを持つ寄付についてもご紹介します。
お金による寄付の方法
お金による寄付にはさまざまな方法があり、どの方法を選ぶかで寄付の対象や仕組みが異なります。ここでは、以下の3つの主なルートについて解説します。
直接団体に寄付する
大きく、マンスリー・サポートと呼ばれたりする継続的な寄付と、都度の寄付に大別されます。
継続的な寄付があることで団体は収入の見込みを立てやすくなり、活動に長期的な視点で力強く取り組むことができます。継続収入が大切なのは家計も同じなのでイメージしやすいですよね。
一方で、都度の寄付は災害などの際に極めて重要です。
継続的な寄付と言うと、心理的なハードルを感じられるかもしれません。
しかし、団体が取り組む社会課題の解決をサポートするためにとても有効な手段であることに加えて、送られてくる年次報告書などを通じて、寄付の使途を確認したり、成果を実感できるといった大きなメリットもあります。
解約・退会はいつでも可能ですので、ぜひ毎月の家計の中で無理のない範囲で継続的な寄付を始めることを考えてみてください。
寄付ポータルサイトから寄付する
現代では、インターネットを活用した寄付の方法が広がり、寄付をより身近で簡単なものにしています。ここでは、主な寄付ポータルサイトやプラットフォームを3つ紹介し、それぞれの特徴や活用方法を解説します。
ふるさと納税を通じた寄付
ふるさと納税は、自分が応援したい自治体やその活動を寄付という形で支援できる仕組みです。寄付した金額の一部は所得税や住民税から控除されるため、地域貢献と節税の両方を実現できます。
一部のふるさと納税では、地域の課題や取り組みを「プロジェクト」として掲載しており、より具体的な使い道を選んでふるさと納税を行うことができます。例えばふるさとチョイスGCFでは「ピースワンコ・ジャパン」や「フローレンス」のような団体が取り組む社会課題のプロジェクトを応援することができます。
8300頭の命を救った広島から「全国殺処分ゼロ」へ。 野犬の保護・譲渡促進を | ピースワンコ
ふるさとチョイスGCF
ふるさと納税の仕組みについては、ふるさとチョイスのHPで紹介されている以下の図をご覧ください。
ふるさと納税についてはこちらの記事もご覧ください。
特定のプロジェクトを「クラウドファンディング」で寄付
クラウドファンディングは、特定のプロジェクトや課題に対して、インターネットを通じて寄付を募る仕組みです。ふるさと納税が自治体を通じた寄付であるのに対し、クラウドファンディングは個別のプロジェクトに直接支援できる点が特徴です。
日本国内で広く利用される寄付型クラウドファンディングのプラットフォームとしては、READYFORが有名です。災害支援、医療、教育、環境保護など、幅広い分野のプロジェクトが掲載されており、達成後も進捗状況が報告されるため、寄付がどのように活用されたかを確認できます。
READYFOR HP
寄付金控除を受けられるのは、国や自治体、学校法人、認定NPO法人、公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人など、税制上の寄附金控除の適用対象とされる団体が実施するプロジェクトに限られます。
そのため、クラウドファンディングを活用する際には、支援先の団体が寄附金控除の対象となるかを事前に確認することが重要です。
税制上のメリットを活用したい場合は、各プラットフォームや団体の情報をよく確認するようにしましょう。
※READYFORの「プロジェクトをさがす」ページで#寄付金控除型のタグで検索ができます。
オンライン募金についてはこちらの記事もご覧ください。
その他のネット募金など
ネット募金といえばよく耳にするYahoo!ネット募金ではTポイントを使った寄付が可能で、少額から気軽に参加できます。
またフリマアプリでの寄付の事例として有名なメルカリ寄付は、不要な物品の売上金を寄付に回せる仕組みです。断捨離やフリマアプリの利用が、社会貢献につながる新しい形の寄付です。
Yahoo!ネット募金の評判や口コミについてはこちらの記事もご覧ください。
企業を通じて寄付する
企業が提供する寄付の仕組みを活用する方法も効果的です。
自分自身の購入や契約が社会貢献に直結するため、寄付のハードルを下げる仕組みと言えます。
例えば、ソフトバンクのチャリティプログラム「チャリティスマイル」は利用料金の一部が寄付に回る仕組みで、ユーザーが特別な手続きをすることなく社会貢献に参加できます。
ご利用料金にお客さまが10円プラス、ソフトバンクも10円プラス、計20円を毎月寄付いたします。 オンラインや店頭でのお申込みに加え、ソフトバンク携帯電話から「*8888」に電話(自動音声システム)でもかんたんにお申し込みが可能です。
ソフトバンク
不用品寄付
不要になった衣類や家具、家電製品などを寄付することも、資源の有効活用として社会に貢献する方法の一つです。
ただし、団体によって受け付けている不用品の種類が異なります。例えば、衣類を受け入れている団体もあれば、家庭用品などを求めている団体もありますので、事前に公式ホームページで詳細を確認することが重要です。
各団体の募集内容を確認し、自分の寄付が最も効果的に活かされる形で届けられるようにしましょう。
不用品寄付について、更に詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
ポイントによる寄付
ポイント寄付は、クレジットカードのポイントやマイル、電子マネーの残高などを活用して寄付を行う方法です。この仕組みを利用することで、日常の買い物やサービス利用で自然と貯まったポイントを、簡単に社会貢献に役立てることができます。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
遺贈寄付
遺贈寄付は、個人が亡くなった後にその遺産を特定の団体に寄付する方法です。主に終活の一環として活用され、遺言書に寄付の意思を記載することで実現します。この方法により、家族だけでなく、社会や公益のために遺産を活用することが可能です。
遺贈寄付について、更に詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
その他の寄付や、言葉の意味
ここまで紹介してきた主要な寄付方法以外にも、さまざまな形で社会に貢献できる寄付の選択肢があります。
篤志寄付
「篤志」とは、ある事柄や事象に対して熱い志を抱くことを指します。篤志寄付は、個人の意志で特定の活動や団体を支援する寄付を指します。特に、緊急時の災害支援や、個別のチャリティーイベントにおいて行われることが多いです。
指定寄付
指定寄付は、寄付者が資金の使途を指定し、特定のプロジェクトや活動に使われることを求める寄付です。団体の活動全体ではなく、特定の目的に限定されるため、寄付者が意図した形で支援が行われます。例えば、学校の新しい図書館の建設費用や医療設備の購入資金などがこれに当たります。
現物寄付
現物寄付とは、現金ではなく物品を直接提供する寄付の総称です。食品、医薬品、衣料品、専門機器など、団体や支援先が必要とする具体的な物資を提供する形態を指します。
一方で、「不用品寄付」は、現物寄付の一形態ではありますが、自分が不要だと感じたものを寄付する方法を指します。
現物寄付が受益者のニーズに基づいて提供される物資を重視するのに対し、不用品寄付は寄付者の視点から提供される物品が中心です。
マッチング寄付
マッチング寄付とは、企業が個人の寄付に応じて、同額または一定の割合を上乗せして寄付を行う仕組みです。この仕組みは、従業員に限らず、顧客や取引先、一般の寄付者が対象となる場合もあります。企業はこの取り組みを通じて、社会貢献に積極的である姿勢を示しながら、寄付者の意欲をさらに高める効果が期待できます。
マッチング寄付は、寄せられた寄付にLINEヤフー株式会社や団体を支援する企業などが一定比率の額を上乗せする寄付です。
Yahoo!ネット募金
寄付のメリット
寄付は社会貢献の一環であり、多くの人が何かしらの形で行っていますが、その一方で寄付を始める際に不安を感じる人も少なくありません。
ここでは、寄付を行うことで得られるメリットと、寄付に伴うデメリットについて具体的に解説します。
なお、メリット以外のデメリットについても知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
社会への貢献と充実感
寄付は、地域社会や世界中の困難に立ち向かう人々を支援することで、社会貢献の喜びや達成感を得ることができます。
特に、子ども支援や環境保護など、自分が関心のある活動を行う団体に寄付することで、社会に役立つ実感が得られるでしょう。
税金控除の対象になる
多くの認定NPO法人や公益財団法人への寄付は、確定申告を行うことで寄付金控除を受けられる場合があります。
これにより、寄付金の一部が税金から還付され、結果的に金銭的な負担を軽減できることがメリットの一つです。
詳細な税制優遇措置については、国税庁の寄付金控除制度に関する情報をご参照ください。
税金控除や節税についてはこちらの記事もごらんください。
自己成長や新しい視点の獲得
支援活動を通じて、寄付先の活動や課題に触れることで、自分自身の視野が広がり、社会課題について深く理解できるようになります。
また、寄付による支援先とのつながりが生まれることで、自身の成長や新たな価値観の発見にもつながります。
寄付の過去・現在・未来
これまで見てきたように、寄付は私たち一人ひとりが社会の課題解決に参加するための手段として、日常生活に溶け込みつつあります。
しかし、寄付が果たす役割や形は時代とともに変化してきました。
ここでは寄付の長い歴史を振り返りながら、その背景にある人々の思いや、現代のテクノロジーが寄付にどのような可能性を与えているのかを解説します。
そして最後に、寄付市場の今後の動向を、具体的な要素に分けて考察していきます。
寄付の歴史|日本と海外での寄付のおこり
寄付の歴史は、宗教的な布施や地域共同体への奉仕にその起源を持ちます。日本では、奈良時代に光明皇后が設立した「施薬院」がその代表例であり、貧しい病人に対して施薬・治療を行う施設として機能していました。
施薬院は、貧困な病人を保護し、治療や薬物の提供を行っていました。現代の病院あるいは療養施設に近いものでした。諸国から提供された薬草を無償で患者に施していたと伝えられています。
光明皇后と悲田院・施薬院 – 大森赤十字病院
中世ヨーロッパでは、カトリック教会が信者からの寄進を受け取り、その財産を管理・運用していました。これらの寄進は、信者が自分や家族の死後の魂の救済を願って行われることが多く、教会は受け取った収入を社会福祉やインフラ整備に活用していました(出典:「14世紀、15世紀のカトリック教会への財産の寄付とその管理のあり方」)。
近代に入ると、寄付は宗教的な枠組みを超えて、福祉、教育、医療など具体的な目的を持つ公益活動の支援手段として広がりました。個人のみならず、企業や財団による寄付も活発化し、これらの動きが現代のNPOやNGOといった組織の基盤を築くこととなりました。
このように、寄付は時代とともにその形態や目的を変化させながら、社会の発展と福祉の向上に寄与してきました。
寄付の現在|寄付市場の現状と動向
寄付市場は、先述のような多様なニーズに応える柔軟な形態を取り入れながら、社会的・経済的変化に対応し進化してきました。このセクションでは、現代日本における寄付市場の動向を個人や企業、そして社会全体の広がりという観点から考察していきます。
日本における寄付市場の現状と課題
日本の寄付市場規模について、寄付ナビのライターでもある山内悠太氏によるこちらのブログによると、2020年の個人からの寄付は約1兆2,126億円と推定されています。
この金額には、返礼品が一般的な「ふるさと納税」の6,725億円が含まれており、これを除くと実質的な個人寄付は約5,401億円と考えられます。
また、法人からの寄付は2019年度で約6,729億円とされ、個人寄付と法人寄付を合わせると約1兆2,130億円となります。
一方、アメリカの個人寄付額は約34兆5,948億円(GDP比1.55%)とされており、日本の寄付市場はアメリカと比較すると規模が小さい状況です。
日本における寄付文化について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
個人寄付の拡大
インターネットを活用した寄付プラットフォームの普及により、寄付は身近で手軽なものとなっています。
前述のREADYFORなどのクラウドファンディングサイトは、多くの人々に寄付の選択肢を提供し、少額からの参加を可能にしました。また、SNSを通じた寄付キャンペーンなども若年層の間で浸透しつつあるのではないでしょうか。
また「1,000円から始める寄付」などといった小額寄付が定着し、寄付を日常的な行動に取り入れる流れが広がると予想されます。特にサブスクリプション型寄付(マンスリーサポート)の普及により、安定的な資金確保が可能となり、寄付団体は中長期的な計画を立てやすくなっていると言えます。
少額寄付のおすすめ団体についてはこちらの記事もご覧ください。
企業による取り組みの増加
企業がCSR(企業の社会的責任)活動の一環として寄付を行う事例が増えています。
また、ESG投資(環境・社会・ガバナンス)やインパクト投資と連携し、社会課題解決を目的とした企業寄付が拡大しています。
寄付文化の国際的広がり
アジアの経済成長に伴い、富裕層や中間層が増加し、彼らの寄付意識が高まっています。特に、中国やインドでは、寄付が社会貢献の重要な手段として認識され始めており、地域や社会の課題解決に寄与する動きが活発化しています。
また、難民支援や気候変動への対応など、国際的な社会課題に対する寄付の重要性も増しています。自然災害や人道危機へのスピード対応が求められる中で、国際的な寄付市場は今後さらに拡大する可能性があります。
このように、日本における市場規模は比較的小さい状況ですが、個人寄付の多様化や企業の社会貢献活動の増加を背景に、進化を続けていくと、寄付ナビは考えます。
寄付の今後|テクノロジーの発展と可能性
近年、テクノロジーの進化は寄付のあり方を大きく変えています。本章の最後は、テクノロジーがもたらす影響を考察していきます。
寄付のデジタル化
インターネットを通じたネット募金やクラウドファンディングは、地理的な制約を超え、多くの人々が寄付に参加できる環境を整えました。
スマートフォンアプリやQRコードを使った寄付は、手軽さが求められる現代社会にマッチしています。
ブロックチェーン技術による透明性向上
ブロックチェーン技術の応用により、寄付金の使途をリアルタイムで追跡し、透明性を高める仕組みが注目されています。寄付者は、自分の寄付がどのように活用されているのかを確認でき、団体への信頼性が向上します。
実際にビットコインをベースにした慈善団体のBitGive財団は、ブロックチェーン技術を活用し、寄付金の行方を援助者に見せている。これによって、寄付金の不正利用がないことを証明し、援助者の信頼度を高めている。
ブロックチェーン技術の仕組みが大きな影響を与える15の業界
AIによる効率的なマッチング
AI技術を活用した寄付プラットフォームでは、寄付者の関心や価値観に合った団体やプロジェクトを提案する機能が進化しています。これにより、寄付者と団体の双方が満足できる支援の形が広がっています。
AIを利用したパーソナライズされた電子メール キャンペーンでは、寄付者に過去の寄付を思い出させ、寄付履歴に基づいて支援したいと思われる新しいキャンペーンを提案することもできます。
MARKET RESEARCH INTELLECT
テクノロジーの進化は、寄付をより身近で透明性の高い行為へと変えつつあります。これにより、寄付者が自身の価値観や社会課題への関心に基づいて寄付を行いやすくなるだけでなく、団体が安定した支援を受けられる仕組みが広がっています。
寄付が社会に果たす役割とは? 寄付を身近に感じるために
寄付を検討する人の中には、「それって行政の仕事では?」と考え、寄付を躊躇する方も多いようです。実際、行政や企業がさまざまな社会課題に取り組んでいます。
「寄付って本当に必要なの?」と感じることもあると思いますが、実は、行政や企業だけではカバーしきれない役割があります。
その役割を担うのが、NPOなどの非営利組織であり、その活動を支えるために寄付が必要です。
行政や企業を補完する「支流」としての役割
寄付は、大規模な課題において、行政や企業の取り組みを補完する役割を担っています。
災害時の支援活動では、行政がカバーしきれない地域で、NPOやNGOが重要な役割を果たすことがあります。
例えば、認定NPO法人カタリバは、東日本大震災や熊本地震で被災した子どもたちへの学習支援や居場所支援を行っています。行政の支援が行き届かない地域や個別のニーズに対し、寄付を通じて子どもたちの居場所の提供を可能にしています。
カタリバHP
地震によって地域の小・中・高校の体育館や教室も避難所となり、普段であれば児童・生徒が使用しているストーブを避難者の皆さんのために使っていたことから、多くの学校で子どもたちが使用する暖房器具の不足が課題となっていました。このような状況を受け、カタリバに寄せられた寄付金の一部を学校再開に向けた暖房器具と灯油の提供に活用しました。(中略)子どもたち同士でこれからのまちについて話し合うテーブルも設けるなど、大人だけでなく子どもの声も聞く工夫を行いながら多様な意見を集め、行政に届けました。
カタリバ – 令和6年能登半島地震・豪雨被災地子ども支援
このように、寄付を通じた支援は、行政や企業が手の届かない部分を補い、課題解決をより効果的に進める「支流」としての役割を果たしています。
ニッチな課題に挑む「本流」としての役割
また、行政や企業では対応が難しいニッチな課題にも、寄付は大きな役割を果たします。
少数の人が直面する特定の障害への支援や、地域の伝統文化を守る活動などは、寄付がなければ実現が難しいことが少なくありません。
例えば、認定NPO法人フローレンスは、病気や障害を持つ子どもたちとその家族が直面する、行政や企業のサービスでは補いきれない支援の空白に着目した活動を行っています。
フローレンスHP
特に「訪問型病児保育」では、保護者が急な仕事や家庭の事情で子どもの看病ができない場合に、専門スタッフが自宅を訪問して保育を行うサービスを提供しています。
こうした課題は、行政や企業の仕組みでは手が届きにくい分野であり、寄付が活動の継続と拡充を力強く支えています。
寄付は、このように大規模な仕組みでは対応が難しい課題に真正面から取り組み、社会の「本流」として解決に向けた動きを作り出す重要な存在です。
寄付をどのように捉えるべき?
改めて「寄付」とは何なのでしょうか?
寄付は、大きな川を支える”支流”であり、小さな流れを主役にする”本流”でもあると、寄付ナビは考えます。
社会を支える広大な仕組みの一部として寄付を考えると同時に、自分自身が支援する具体的なテーマや人々を通じて、寄付の価値をより深く実感することができます。
寄付は、必ずしも大きな金額を必要とするものではありません。少額の寄付やポイント寄付、日常の不用品を活用した寄付など、私たち一人ひとりが取り組める方法はたくさんあります。こうした日常的な行動を通じて、寄付を「特別なもの」ではなく、「身近なもの」として感じることができるでしょう。
寄付は、社会を変える大きな力になると同時に、自分自身の価値観や生き方を見つめ直すきっかけにもなります。
ぜひ興味を持たれた方は、実際の寄付先をまとめた以下の記事もご覧いただき、寄付を始める一歩を踏み出してみてください。