日本人は「寄付が嫌い?」「寄付の文化がない?」統計や歴史から分かった、ウソホント

日本人には寄付をする文化がない、そして日本に寄付文化が根付くのはまだまだ先のことで当分ない、そんな風に言われることが多いですね。
私自身、寄付をいただく仕事をする中で、面と向かってそう言われてしまうこともありますし、自らの肌で感じることもあります。

では本当に、これからの日本に寄付文化は根付かないのでしょうか?
今日はそんな疑問を解消すべく、実際のデータや史実から過去、現代、そしてこれからの日本の寄付文化の展望について、お話ししていきます。

日本全体の寄付市場規模は7,756億円と、アメリカの約40分の1

日本の寄付市場とアメリカの寄付市場。
アメリカの方が寄付は盛んに行われているという予想はつきますが、実際にはどれくらいの差があるのでしょうか?

金額や人数などの数字から規模の比較をしてみましょう。

国全体の合計金額を比べると?

日本では年間どれくらいの金額が寄付されているのでしょうか。
「寄付白書2017」によると、2016年の日本の個人寄付総額は7,756億円。
対してアメリカは30兆6,664億円となっており、日本の40倍の市場規模があります。

直近1ヵ月以内に寄付した人の割合は?

チャリティエイド財団が独自に行ったインタビューによると、直近1ヶ月以内にチャリティ団体に寄付をした人の割合はアメリカが63%、日本は23%でした。
アメリカの方が習慣的に寄付をしていることが分かります。

一人あたりの寄付額は?

「寄付白書2017」によると、2016年の日本の個人寄付平均額は27,013円です。
一方アメリカは、年間平均1,155ドル。
1ドル110円とすると127,050円、日本の約5倍となっています。

日本は寄付者率も、一人当たり寄付額も相対的に低いと言わざるを得ません。

日米の個人寄付総額と名目GDPに占める割合「寄付白書2017」より引用

日本の“寄付の歴史”を紐解くと、古くから伝わる寄付文化があった!

前述したように日本の寄付市場は圧倒的に後進国です。

「日本は税金によって、国が主導しているので、民による寄付は合わない」
「欧米諸国と比較して、日本には寄付文化がない」

と本当に言い切れるのでしょうか?

事例1:仏教伝来と共に、日本に普及した寄付集め

駅前など人通りの多い場所でお坊さんがお椀を持って、ずっと待っている姿を見たことはありませんか?
あれは「托鉢(たくはつ)」と言って、食べ物や金銭を乞う修行です。

托鉢の歴史は古く、仏教開教以来、修行の一環として粛々と行われてきました。
日本にも飛鳥時代の仏教伝来に併せて、托鉢の文化が海を渡って輸入されたとされています。

奈良時代になると、治水や橋の建設が進み、仏教僧が率先して民間から奉加(ほうが)と呼ばれる寄付集めをしたという記録が残っています。

事例2:江戸時代の大坂は「きたのう貯めて、きれいに使う」

江戸時代の大坂(大阪)には、商売上の美徳として、「きたのう貯めて、きれいに使う」という精神が宿っていました。

商売に使うお金と公共に使うお金は別会計という意味で、本業の商売では汚いと言われるくらいに無駄を省いて倹約に勤め、広く社会に貢献できるような寄付に使うお金には糸目をつけないというお金との付き合い方を示しています。

現に大阪の八百八橋は町人の寄付によって建設されたと言い伝えられています。
やはりお金の使い方が上手い人が結局商売も上手く回る、ということを彼らは長年の経験から獲得していたのでしょう。

「きたのう貯めて、きれいに使う」、私たちの日々の家計管理など日常生活にも使える良い言葉ですね。

事例3:歳末たすけあい

日本人にとって、一番馴染みのある寄付キャンペーンの一つが「歳末たすけあい」ではないでしょうか?

歳末助け合い募金の評判や口コミは?寄付先として、信頼できるかをチェック

毎年12月に「地域歳末たすけあい」「海外たすけあい」の2種類の寄付キャンペーンが展開されます。

平成30年度の寄付実績は歳末たすけあいが41億1,164万2,000円、海外たすけあいが6億3,609万5,488円となっています。

私も個人的に平成29・30年度の海外たすけあいに気持ちばかりの寄付をしました。
普段から寄付はしないまでも、「年末だから」「毎年のことだから」と歳末たすけあいには参加する、という方も多いのではないでしょうか?

NHK歳末たすけあいHPより

「寄付市場」は、7年間で約1.5倍に成長中。その要因は?

日本の個人寄付推計総額は2010年の4,874億円から、2016年には7,756億円と、7年間で約1.5倍に成長しています。(出典:寄付白書2017)

拡大傾向にある日本の寄付。
その要因として、どのようなことが考えられるのでしょうか。

要因1:東日本大震災発生時の寄付

2011年3月11日、死者1万5,895人、行方不明者2,539人という未曾有の大災害が日本列島を襲いました。

地震を引き金に津波、原発事故が同時発生したことにより、ボランティアを志願された方が現地入りできなかったこともあり、今自分たちにできることをしようと実に68.6%もの人が寄付を実行、個人寄付推計総額は1兆182億円にものぼりました。(出典:寄付白書2017)

直近の寄付市場の推移を見てみると、震災直前の2010年の個人寄付総額は4,874億円に対し、2016年には7,756億円と7年間で1.59倍に成長しています。(出典:寄付白書2017)

東日本大震災が寄付市場の隆盛に奇しくも拍車を掛けたのではないかと、数字からは読み取れます。

要因2:寄付税制の見直し

日本の寄付税制も少しずつ改善を続けています。

以前は所得控除という方式でしか節税できませんでしたが、今は所得控除と税額控除の2種類どちらか有利な方を選択できるようになりました。
ちなみに、税額控除は民主党・鳩山政権肝いりの政策です。

所得控除は年収4,000万円以上の方が選択する方式ですので、一般的な方は新しく設置された税額控除を選択することで節税効果は高くなります。(ご紹介した控除方式はあくまで目安です。厳密な所得計算や節税方法には個人差があります。)

弊サイトでも、寄付金控除について詳しく解説した記事がございますので、是非そちらもご高覧ください。

寄付金控除を受けるには?初めて寄付した方にも分かる簡単5ステップ

要因3:クラウドファンディングの隆盛

大手クラウドファンディングサイトReadyforでは、2017年3月時点でプロジェクト数6,152件、累計資金調達額37.8億円、総支援者数258,592人の市場が形成されています。

クラウドファンディングとSNSの相性は抜群で、Twitterであればリツイート、Facebookであればシェアで自分のフォロワーに情報を瞬時に拡散できます。

クラウドファンディングを寄付と見做すことができるのかは別で議論が必要です。
しかし、こうしたWeb媒体が発達している影響で、市民にとって寄付が日常的な行為になりつつあると言えるのではないでしょうか。

未来の日本社会は「10兆円市場」!

日本ファンドレイジング協会では、寄付市場を現在の10倍以上の規模である「10兆円市場」に成長させることを目標として掲げています。

寄付という行為は一旦慣れてしまえば、割と気軽に参加できる社会投票でもあります。
地元のスポーツチームやお気に入りのアーティストを応援するような気軽さで、自分が応援したいNPO団体があって良いと思います。

弊サイトは、あなたのお気に入りの寄付先を見つけることができる、そんなサイト運営を目指しています。
是非サイト内の記事をご高覧いただきまして、あなたのお気に入りの寄付先を見つけてもらえたら、こんなに嬉しいことはありません。

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