(出典:国境なき医師団HP)
「緊急性の高い医療ニーズに応える」ことを目的とする、国境なき医師団(Médecins Sans Frontières=MSF)。
紛争や自然災害などの緊急を要する状況下で、怪我人や病人の治療などのために、薬の配給や医師·看護師の派遣等をしています。
その活動を支えているのは、民間からの寄付。
「ちゃんとした団体なの?」「寄付で応援して大丈夫?」
そんな疑問を持つ方のために、国境なき医師団の評判や口コミ、支援先として検討する時にチェックしたい3つのポイントをまとめました。
目次
ブログやSNSで見つかった、国境なき医師団(MSF)の評判·口コミ
国境なき医師団について、ネット上で検索したり、ソーシャルメディアで探してみました。
すると、さまざまな方からの書き込みが見つかりました。
ポジティブな評判·口コミや、支援者からの応援メッセージ
まずはポジティブが評判から。「毎月の寄付」や特定プロジェクトに「今回に寄付」をしている方が、次のようにメッセージをつづっています。
寄付が根付いている海外の大富豪に少しでも近づけるように、少額ですが毎月の寄付を始めることにしました。
どこに寄付しようか迷ったのですが、最終的には「国境なき医師団」に決めました。(中略)
国境なき医師団を選んだ理由は3つ(中略)国や政治的権力から独立性を保っている スタッフは命をかけて活動している 節税にもなる
(出典:ブログ「寄付しようぜ!国境なき医師団へ寄付する方法はネットで簡単!節税にもなるよ」)
国境なき医師団に寄付しました。ロヒンギャ難民緊急援助。3000円だけですが120人分の基礎医療セットがまかなえるそうです。いとうせいこうさん著「『国境なき医師団』を見に行く」を読んでて感銘を受けたから。第一章のハイチを読み終え、いま次章のギリシア編。 https://t.co/Fq839uq3Pd
— 杉山敦 (@tuktukcafe) 24 December 2017
(出典:個人支援者の方のツイート)
僕は寄付請求のたぐいはいっさい信用しないというか、どう使われるか分からないお金を支払うのがイヤなので、これまでは基本的に無視してきた。
しかし、2年ほど前から実は「国境なき医師団」に寄付をしている。金額は微々たるものだ。一日50円、つまり月間で1500円(中略)
寄付して3年目の今、「国境なき医師団」から来たダイレクトメールに再び感動した(中略)
そこに記載されているのは確かに僕が寄付した金額であり、僕のささやかな善意が彼らの努力によって形になったことを明確に知らせてくれているものだ。人のカネではない、僕のカネの成果があったことを教えてくれている
(出典:ブログ「『国境なき医師団』のマーケティングが卓越な件」)
ネガティブな評判·口コミや、募金活動への批判·疑問
その一方で、疑問や不安などネガティブな評判も、ブログやYahoo!知恵袋などで見つかりました。
先日東京郊外のデパートで国境なき医師団の募金活動が行われていました。
たまたま前を通り過ぎた際に、若い男性スタッフに申込書を渡され「是非お名前だけでも!」と言われたのでとりあえず名前だけならと思い用紙に【名前だけ】を記入しましたが、その後スタッフから「ではこちらで募金の手続きをお願いします。3千円ですか?5千円ですか?」といきなり寄付ありきの話で手続きさせられそうになった(中略)
国境なき医師団は世界各地で活動されており、募金に頼る部分が大きいであろうことは想像がつきます。
しかし国境なき医師団がこのような強引な募金活動を容認しているのはおかしいと思います。
(出典:Yahoo!知恵袋 )
「 国境なき医師団(Médecins Sans Frontières=MSF 」は何者ですか、
スマホを使用していると知らない内にこのサイトに誘導されます、寄付をやたら勧めます。
事務所住所などの記載は一切なし、非常に胡散臭いです。
個人情報保護が叫ばれている時代に名簿業者からリストを購入して送りつけてくるのでは、どんなに崇高な活動をしていたとしても印象が悪くなってしまうだけなのは私も同意するところ(今回のケースでは名簿業者経由ではなく、クレジットカード会社経由)。(中略)
ほんと、なぜ国境なき医師団はそこまで経費をかけてでも募金を集めなくてはいけないのでしょうか?
これだと寄付を集めたとしてもそれが広報費ばかりに消えてしまうため、寄付する意味がなくなってしまいそうな気がします。
(出典:ブログ「国境なき医師団から、やや迷惑なダイレクトメールが到着。こういう郵便物はどこが費用を負担して、発送しているのだろうか?」)
ダイレクトメール(DM)やWEB上での寄付ページへの誘導、対面寄付の要請などで、不信感や不快な気持ちが生まれた方もいたようです。
また、海外の国境なき医師団で、性的虐待をしたスタッフの解雇という不祥事も公表されたため、寄付を止めたという口コミもありました。
支援先としてMSFは信頼できる?3つのチェックポイント
このようにポジティブ·ネガティブな評判や口コミがありますが、実際はどうなのでしょうか?
毎月の寄付やプロジェクトごとの寄付を検討している方にとって、大切なお金を預けるかどうか、どんなポイントで判断すれば良いのでしょうか ?
私自身も40近くの団体へ個人的に寄付したり、 NPO 法人に勤務して寄付を集める経験をした立場から、見極めるポイントをいくつかお伝えします。
ポイント1:国境なき医師団日本は、団体として信頼できるか?
まずは「組織としてどのような形をとっているか?」ですが、「国境なき医師団日本」は東京都から認定を受けた認定NPO法人です。
国境なき医師団日本への寄付は、税制優遇措置の対象となっています。
所得税、法人税、相続税、一部の自治体の住民税において、それぞれに定められている条件を満たすことで、優遇措置を受けられます。
認定NPO法人に寄付をすると税制優遇の対象になるのは、活動の実績と公正な法人運営などが行政によってしっかり審査されているからです。
申請にあたっては、「年間100人以上の方から、3,000円以上の寄付を受けている」といった実績が要件となり、また経理財務や情報管理など管理体制の整備が求められます。
認定元の自治体(例:東京都)から、「適正な法人運営をしているか?」をチェックされ、十分に行っていないと更新(5年ごと)がされません。
「寄付金をしっかりと活用している組織」として、行政からも認められていることが、分かります。
ポイント2:寄付金は適正に管理され、会計報告がされているか?
活動資金については、収入・支出とも内訳がWEBサイトで公開されています。
2021年度の総収入は119.3億円で、「個人を中心とした民間からの寄付金が93.7%を占めている」そうです。
そのように集まった資金は、「MSFオペレーション事務局」を経て、活動地に届きます。
2021年度は、総支出119.2億円のうち82.7%が援助活動費(人道援助プログラム支援金+スタッフ募集・派遣、研究・開発等)と広報・アドボカシー活動費を合わせた「ソーシャル・ミッション費」に使われているとのことでした。
(出典:「国境なき医師団に「毎月の寄付」を決める前に調べた、リアルな活動現場と寄付金の使い道」)
年次報告書では、年度ごとに発行される活動報告書の他に、正味財産増減計算書と貸借対照表(企業会計でP/LとB/Sにあたります)を含めた主要財務諸表・監査報告書などが掲載されています。
四大監査法人の一つ「あずさ監査法人」から外部監査も受けていて、会計について一定の透明性は担保されているように見えました。
ポイント3:資金を活用して、きちんと活動しているか?
国境なき医師団は1971年の設立以来、紛争地や難民キャンプ、感染症の流行や地震・ハリケーンなど自然災害などに苦しむ地域に、医師や看護師などからなる医療チームを派遣。
保健医療サービスを受けられない人びとを対象に、緊急的な医療支援や人道救助の活動を行なっています。
こうした活動が認められ、1999年にはノーベル平和賞も受賞しました。
2019年は4万7,000人以上の海外派遣スタッフ・現地スタッフが、約70の国と地域で活動を展開しています。
日本でも「特定非営利活動法人国境なき医師団日本(認定NPO法人)」を、1992年に設立。
東京都新宿区に事務局を構え、「ファンドレイジング(寄付金募集)」と「スタッフ(医師や看護師など)の採用」、「証言活動」の3つに取り組んでいます。
国境なき医師団日本は、2021年に90人を活動現地に派遣したとのことです。(出典:国境なき医師団HP)
年度ごとに活動をまとめた活動報告書を発行しているほか、活動ニュースのコーナーを設置。
記事や動画で、現地での活動の様子を発信しています。
たとえば「新型コロナウイルス:第2波で感染爆発したインド 国境なき医師団は緊急対応を再開」といったように、一刻を争う具体的な活動の様子が分かり、支援をした方は実感を得やすいでしょう。
寄付をすると、郵送でもDMやニュースレターが届きます。
現地の日本人スタッフからのメッセージも掲載されいて、活動現場の過酷さや支援の必要性が分かります。
最後に:私自身も「毎月の寄付」で支援を始めて、考えたこと
私自身も現在、国境なき医師団を「毎月の寄付」(マンスリーサポーター)で支援しています。
いとうせいこうさん(小説家)のルポ「『国境なき医師団』を見に行く」を読んで、その活動の実態や現場のスタッフの方々の奮闘ぶりに感銘を受けたこと。
また資金調達(ファンドレイジング)に取り組まれている方のお話を聞くなかで、資金の必要性を地道に訴えていること、そしてドナーと誠実に向き合いコミュニケーションをしていると分かったことが、その理由でした。
ネガティブな口コミに記載されていた、強引に感じられる勧誘や要請も起こっていたのかもしれませんし、実際は分かりません。
私自身も、寄付の依頼のDMが届くと、正直「またか・・」「さすがに今回は無理」という気分になってしまうことも、正直ありました。
一方、資金使途の透明性や支援者への活動報告については、他のNGOやNPOと比べても高いレベルで誠実なコミュニケーションをとっているように感じています。
また募金活動にかける費用への批判も見られましたが、より多くの苦しんでいる人を大規模に助けるために、「PRやマーケティングにもしっかりと投資をしてたくさんの方に支援をしてもらおう」という考え方なのかなと理解しています。
最後は私の主観も混じってしまいましたが、支援を検討している方にとって、少しでも参考になりましたら嬉しいです。
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