「日本人は寄付をする文化がない」
「その一方で、欧米は習慣的にチャリティーに参加している」
これって本当に合っているのでしょうか?
今回は寄付に関するデータを比較・検証し、なぜ日本に寄付の文化が根付かないと言われているのか、もしそれが本当なら私たちに何ができるのかについて解説します。
目次
本当に日本人は寄付してない?アメリカ・イギリス・韓国とデータで比較
まずは、日本人が他の国と比べて寄付をしていないのか、比較してみましょう。
2016年の各国個人寄付データ
日本 | アメリカ | イギリス | 韓国 | |
総額 | 7,756億円 | 30兆6,664億円 | 1兆5,035億円 | 6,736億円 |
年間平均額 | 2万7,013円 | 12万5,664円 | 7万4,400円 | 9,095円 |
寄付者率 | 23% | 63% | 69% | 35% |
(出典:寄付白書2017)
4カ国の中で日本は寄付者率(直近1ヵ月で非営利団体に寄付した人の割合)が最も低く、平均額では韓国より大きいものの、アメリカとイギリスには遠く及びません。
アメリカとイギリスは一部の富裕層が平均額を引き上げていることを考慮しても、イギリスに至っては7割近くの国民が習慣的に寄付をしているのは流石というところでしょうか。
そして興味深いことに、寄付者率世界1位は、途上国のミャンマーだそうです。
なんと国民の9割が直近の過去一か月間において何かしらの寄付をしています。
【4年連続世界一位】世界に誇るミャンマーの寄付文化について
後発開発途上国に分類されるミャンマーですので一回の寄付金額自体はそれほど多くないと思われますが、定期的に(中には少額を毎日)寄付をしている国民がたくさんいます。
寄付はお金持ちだけがするものでなく、市井の人にとって各々ができる範囲で参加するものという意識が根付いていることが、ミャンマーやイギリスの寄付者率の高さから伺えます。
人はなぜ寄付をするのか?2つの理由
確かに「日本では寄付をする人は少数派」ということが分かりました。
では日本でも習慣的に寄付をしているような方は、どのような心持ちで寄付しているのでしょうか?
理由1:名誉が得られるから
最も分かり易い例が、地震や台風などの災害が発生したときの義援金ではないでしょうか。
「嵐」の相葉雅紀さんが千葉県庁を訪れ、義援金6000万円の目録を手渡しました。https://t.co/c49F08Ksjl
— 毎日新聞 (@mainichi) 2019年9月24日
(出典:被災地に多額の寄付をする芸能人-Twitter)
もちろん「自らにできることをしたまで」という意識が先ではあるものの、一方でイメージ戦略的な要素も含まれていると思います。
多額の寄付による恩恵は芸能人だけではありません。
一定金額以上の寄付をすれば、一般人でも表彰制度を設けている非営利団体は多いです。
「社会に恩返ししたい」という実感を得るために、寄付する人は意外と少なくありません。
私自身を振り返ってみても「利己的だからこそ利他に徹する感覚」があります。
社会の役に立てることが喜びだと感じられている人が、結果的に讃えられ、名誉が付いてくるとも言えるでしょう。
理由2:幸福感が感じられるから
習慣的に寄付をする人の方が、そうでない人より幸福度が高いという実験は各方面で行われており、既に科学的に実証されています。
興味深かったのは、これと同じ傾向が出るのは、カナダのように裕福な方が多い先進国には限らないこと。「一人あたりの収入が下位15%に入る」ウガンダでも同じ実験を行なったところ、「他人への投資が幸福度を高める」という結果が出たというのです。
自分のためではなく、他人のためにお金を使う行為は、何も寄付だけではありません。
- 家族や友人など、大切な人にプレゼントを贈る
- 目標に向かって頑張っている人を金銭的に援助する
- 以前から会いたかった人に会いにいくための交際費
このように日々の支出を見直すだけで、幸せを感じられるお金の使い方は沢山あります。
その中のひとつに寄付があると捉え直してみると、今よりも寄付が身近に感じられるかもしれません。
浸透しつつある日本の寄付文化、実際の事例3つ
日本人にとって、寄付が日常生活の中に違和感なく挿入されるためには、具体的にどのようなアクションが必要なのでしょうか。
現在、進められている事例をご紹介します。
事例1:10代から寄付や社会貢献活動に触れる
子ども時代からチャリティーに触れているかどうかは、成人した後の寄付者率にも影響すると言われています。
一般的に日本の義務教育では、寄付や社会貢献活動と接する機会は限定的です。
若年世代の寄付行動は一般的傾向として本調査を開始した2010年からほぼ変わらず他世代に比べて低調である。概ね、20%台で推移しており、全体平均の寄付者率より20ポイント程度低い。
寄付白書2017
そうした中で10代から寄付に興味を持ってもらうべく、日本ファンドレイジング協会が「寄付の教室」という移動授業を展開しています。
寄付の教室とは、子どもたちが幾つかの選択肢の中から、自分が寄付したいと思った寄付先を選び、それを選択した理由を生徒同士でシェアするという授業です。
写真は私もオブザーバーとして参加させていただいた、甲南女子高校での寄付の教室です。
生徒たちにも興味を持ってもらえるよう、アイドルの社会貢献活動といった事例を踏まえて、親しみやすく説明をしています。
ここで重要なことは、生徒同士が同じ寄付先を選んだとしても、なぜその寄付先を選択するに至ったのか、寄付の動機は三者三様であると、子どもたちに気付いてもらうことです。
子どもたちが主体的に寄付に参加するきっかけ作りの取り組み、と言えるでしょう。
事例2:寄付税制の拡充
寄付をすることで、税金を一部減らすことができるのはご存知ですか?
寄付した金額の約40%程度は、確定申告によって還付を受けることができ、これを寄付金控除と言います。
例:寄付金控除の対象団体に、月3,000円/年3万6,000円を寄付した場合
- 所得税:(36,000円-2,000円)×40%=13,600円
- 住民税:(36,000円-2,000円)×10%=3,400円
合計1万7,000円が還付され、実質的な負担分は1万9,000円で済みます。
通常、財やサービスの価格が1万円であれば1万円支出するが、寄付については1万円を支出しても税控除によって還付される分だけ手元に残る。
寄付白書2017
つまり、税控除が導入されると、寄付価格が下落する価格効果が発生するため、他の財やサービスを消費するよりも寄付することを選択する、という議論である。
寄付によって税金を含めたトータルの支出が減るということはありませんが、寄付金控除によって寄付を行うインセンティブは上がると言えるでしょう。
事例3:あなたのアクション
ここまで、日本に寄付文化は本当にないのか、そして日本で寄付文化が醸成されるために、どのような取り組みが行われているのかについて、解説してきました。
ここであなたにご紹介したいのが、NPOの”マンスリーサポーター”という寄付の方法です。
マンスリーサポーター制度を導入しているNPO団体は、少なくありません。
毎月少額を引き落としで寄付できるので、寄付のし忘れもなく、無理なく続けられます。
ご参考までに、私も毎月寄付しているNPOを2つご紹介すると・・
かものはしプロジェクト
主にインドで「子どもが売春宿に、だまされて売られてしまう」という社会問題の解決を目指している団体です。
想像してみてください、泣く泣く売春宿で働かされている子どもを。
かものはしプロジェクトとは、私が社会人インターンとして関わらせていただいたのが最初のご縁。
「活動を寄付でも応援したい!」という想いもあり、サポーター会員に入会しました。
> 団体公式サイトで詳しくみる
寄付金控除の対象団体です
追記:かものはしプロジェクトは、2019年より日本国内の課題にも取り組み始めました。
主な事業内容は以下の通りです。
- 困難に直面する若者への支援強化:児童養護施設に自立支援の専門家を派遣、退所後に困難に直面した若者からの相談対応や、金銭管理指導を支援。
- 退所後も安心して生活できる仕組みづくり:退所後にサポートが激減する状況を変えるため、退所後支援の充実に向けたネットワークづくりや政策提言などを実施。
「虐待や、その経験から今まさに助けを必要としている子どもが同じ街にいるかもしれない、そんな子どもたちのために何かしたい」
「世界の問題も気になるが、自分の暮らす日本の未来も良くしていきたい」
そんな想いに共感された方は、是非団体公式ページから詳細をご覧ください。
> 団体公式サイトで詳しくみる
寄付金控除の対象団体です
チャンス・フォー・チルドレン
貧困に苦しむ子どもは途上国だけ、そんな風に思っていませんか?
この日本にも、貧困の問題は存在します。
日本の低所得世帯の小学生から高校生を対象に、塾や習い事の受講料として活用できる「スタディクーポン」を支給している団体です。
私は活動説明会で、代表の今井さんから、直接お話を伺いました。
教育格差をなくすことで「貧困の連鎖」を断ち切る取り組みに共感。
以来「CFCサポート会員」として、継続的に寄付しています。
> 団体公式サイトで詳しくみる
寄付金控除の対象団体です
ぜひ寄付ナビで、あなたのお気に入りの寄付先を見つけてください。
日本の寄付文化が促進されることはもちろんですが、あなたの毎日が少し豊かになることを祈っています。