かものはしプロジェクトは、カンボジアでの人身売買を防止する事業から始まり、現在ではインドと日本で活動しています。特に、2019年からは、日本での児童虐待の問題が深刻化していることから、国内事業も始めています。
かものはしプロジェクトの活動や働く想いについて職員の草薙さん(日本事業担当)と樋山さん(ソーシャルコミュニケーション事業担当)にお話をうかがってきました。
お話を聞いた方のプロフィール
草薙直基さん(入職10年目) 新卒で人材紹介会社に入社後、法人営業を経てかものはしプロジェクトに入職。ソーシャルコミュニケーション事業を経て、現在は日本国内事業に従事。 |
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樋山真希子さん(入職7年目) 食品メーカーでの営業の後、複数のNPO団体での事業に従事を経て、かものはしプロジェクトに入職。ソーシャルコミュニケーション事業部に従事。 |
目次
一般企業からNPOへの転職へ。学生時代からの想いが実現。~かものはしプロジェクトで働く人ってどんな人?
寄付ナビ:
お二人がかものはしプロジェクトで働くようになったきっかけをお聞かせください。
草薙さん:
学生時代にベトナムを訪れ、貧富の差を目の当たりにしてから、NPOで働くことを考えましたが、新卒で一般企業へ。数年後に、社会起業家の人たちがメディアで注目されるようになり、NPOや社会課題を解決する仕事にも関心を持ち始め、かものはしプロジェクト(以下、かものはし)への転職を決めました。
樋山さん:
私の場合NPOへの転職は、東日本大震災がきっかけでした。以降、紆余曲折ありながらも複数のNPO団体を経験して、経済的に続けていけるか不安になった時もありました。しかし、「NPOで働きたい」気持ちを持ち続けていたところ、かものはしと出会えました。
学生のときに見た「闇の子供たち」という幼児虐待や人身売買について描かれた映画が忘れられなかったので、カンボジアとインドの人身売買問題に正面から取り組むかものはしの活動に共感しました。
寄付ナビ:
一般企業から転職するのに迷いはありませんでしたか。
草薙さん:
転職を考えた当時はまだ20代でした。年齢を重ねてからNPOの世界に入るのは、生活とのバランスを考えると難しいと当時は思いました。20代ならやり直しもできるので、今がチャンスだと思いあまり深く考えずに決断。この業界に転職するなら早めに、と当時は考えていました。
樋山さん:
学生の頃からNPOの存在を知っていて、具体的な活動も経験していましたので、比較的身近な存在でした。大学卒業後はNPOでの仕事を考えていましたが、当時は「新卒」で職員になることは難しい時代。社会経験を積むために一般企業に進みました。NPOで働くことは迷いよりは「念願」でもありました。
日本とインドでの社会システムの変革に挑戦。~かものはしプロジェクトの活動~
寄付ナビ:
草薙さんのご担当について教えてください。
草薙さん:
かものはしは、インドで人身売買を防止する活動と、日本では児童虐待を防ぐ活動に取り組んでいます。インド事業では、西ベンガル州を拠点に人身売買被害者(サバイバー)に寄り添う取り組みと社会の仕組みをつくる活動をしています。
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人身売買被害者(サバイバー)に寄り添う取り組み:人身売買の被害を生きぬいたサバイバーの一人一人に合わせたリハビリプログラムや裁判支援を実施。教育や生活を回復するための支援を通じて社会復帰を目指す。被害者からリーダーとして立ち上がり、社会に声をあげていくためのリーダーシップ支援も行っている。
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社会の仕組みをつくる:現地のパートナー(弁護士・NPO)やサバイバーと共に警察など関係機関と連携してインドにおける加害者の捜査・裁判の仕組み、被害者支援の仕組みを変えていく法整備や政策提言を行っている。
日本事業では、主に児童虐待防止および地域社会連携強化について取り組んでいます。そのなかでも、私が現在取り組んでいる妊産婦支援事業の具体的な活動は次の3つです。
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宿泊場所の提供:困難を抱え住居がない妊産婦に対し宿泊ができる場所を提供。安全が守られた環境での妊娠・出産・育児に備えるサポートを実施。
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日中の居場所の提供:1人で過ごすことが難しい妊産婦に対し、日中の居場所を提供。相談にのるだけでなく、育児から一時離れてリフレッシュできる場を提供。
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訪問サービス:食べ物や物資が必要な家庭に訪問して必要なサポートを提供。状況をヒアリングし、必要に応じて宿泊や日中の居場所の提供につなげる。
私が主に取り組む活動は、2024年1月から本格的に稼働しました。まずは、千葉県松戸市を中心に上記の妊産婦支援の取り組みを進めています。将来的には、全国に展開しつつ他の地域へも影響を与えていけたらと期待しています。なお、私の担当以外のその他の日本事業は2019年から始動しています。
寄付ナビ:
かものはしは海外事業を得意とするイメージがありますが、日本事業に取り組んでいるのはなぜでしょうか。
草薙さん:
かものはしは、インドなどの海外に注力していましたが、。日本でも児童虐待の問題が増加しているという現実に対し、団体としても何かできないかと考えるようになりました。できることを積極的に行おうとの意向が強まり、日本事業が始まりました。
妊産婦支援事業ではまず、居場所提供から支援活動を展開しますが、徐々に国や自治体の「制度」に働きかけます。インド事業でも取り組んでいるように「社会システム」として支援が当たり前に提供されていくような社会の仕組みつくりを目指します。
寄付は主に居場所の運営費や利用者の生活費等に活用されています。これにより、妊産婦の方々がサポートを受けたり、安心して社会に関われたり、環境の整備につながっています。
また私とは別のチームが、虐待を理由に児童養護施設などで育った若者の巣立ちの支援にも取り組んでいます。
これらの活動を通じて、社会の中に豊かなつながりを育むことにより、児童虐待が発生しにくくなり、虐待を受けた人が回復しやすくなる社会を目指しています。
寄付ナビ:
樋山さんのご担当について教えてください。
樋山さん:
ソーシャルコミュニケーション事業部では、主に外部向けに活動へのご理解をいただけるよう広報の取り組みを実施しています。
かものはしの活動は、多くのサポーター会員からの寄付により支えられています。現在では、約1万7000人ほどのサポーター会員(寄付者)がいます。サポーターの皆様と共に社会を変えるという想いのもと、社会課題の啓発活動を行うほか、イベントの企画・運営なども担当しています。
寄付ナビ:
お二人が働いていて良かったと感じるときはどのようなときですか。
樋山さん:
私は、活動を応援していただけたときに大きな喜びを感じます。たとえば、SNSや年次報告などの情報発信を受けて「前向きに自分がアクションできる勇気をもらえた」「寄付する機会を与えてくれてありがとう」などのお言葉をいただけると、こちらも応援されているような気持ちになります。
また、私自身が昨年初めてインド事業の現場を訪れることができ、現場でどのように貢献できているか、直接実感できました。特に、3年前は誰とも話せなかったというサバイバーの方が、リハビリプログラムやグループでの活動を通じて、自信をもって人前で話せるようになったことや、今では村で困っている親子のカウンセリングをするなど、10代の子に児童婚や人身売買の啓発活動をしているという話を聞き、非常に心が動かされました。自らが回復した後に、今度は社会を変えるリーダーとして困っている人や子どもたちのために活動している姿、自信に満ち溢れた彼女たちを見てとても勇気をもらいましたし、彼女たちを誇りに思いました。
草薙さん:
広報のイベントを通じてかものはしの考え方や取り組みをお伝えしたり、説明したりするなど、多くの方と直接やりとりできる機会があるのはありがたいことです。目に見えるものをあつかうのとは違い、社会を変えるために見えないものへ寄付していただくのは簡単なことではないと思っています。これからも、サポーター会員や寄付していただいたみなさまの期待に応えていきたいです。
寄付ナビ:
逆に辛かったことはありますか。
樋山さん:
直接的に辛いことではないかもしれませんが、もっとかものはしの活動への理解が広まっていけたらよいと感じてます。寄付者も支援を受ける方も支援を実施する側もそれぞれが一緒になっていけば、社会をよい方向に変えていけることをもっと頑張って伝えていきたいです。
草薙さん:
日本事業に異動してからは、妊産婦の支援をしていますが、児童虐待の話や妊産婦の境遇などのリアルな話を見聞きする機会が増えました。自身も子を持つ親として時に感情移入しすぎてしまい辛い気持ちになってしまうときがあります。なるべく、ニュートラルな気持ちでいられるよう、注意しながら取り組んでいきたいと思います。
仕事に掛ける想いとは…「フェアな社会の実現」「仲間と一緒に向き合い続ける」
寄付ナビ:
次にお二人のプライベートなこともお聞かせいただければと思います。プライベートで最近楽しみにしていることはありますか。
草薙さん:
わが家は共働きで、私は在宅ワークで働いています。その関係で、夕食の準備は私が担当しているのですが、最近凝り始めていて何を作ろうか毎日楽しみながらやっています。子どもが寝た後に、次の日の仕込をしたりなど本格的に取り組んでいます(笑)。
ただ、在宅ワークだとどうしても公私の切り替えが難しい時もあるので、仕事場の部屋から出た瞬間は、子どもや家事のことを考えるようにして切り替えるようにしたり、たまには場所を変えてたりと工夫しています。
樋山さん:
私も、在宅ワークが多いので、オンオフの切り替えには悩む時期もありました。今は、お気に入りのラジオ番組がありまして、それを仕事が終わったら聞くのが日課になっています。他にも、父親の影響で70年代・80年代の洋楽を聴くこともあります。ラジオ番組や洋楽を聞いているときが一番リラックスできていると思います。
寄付ナビ:
最後にお二人からお仕事への想いを教えてください。
草薙さん:
この10年を振り返ってみると、私の仕事への想いとして持ち続けているのは、フェアではない社会への疑問でした。現在の日本でもフェアではない状況から困難に陥っている妊産婦が多くいます。困難を抱える妊産婦の支援に取り組んでいるのも、「フェアではない社会」を少しずつ直していくことが、私の働くことのモチベーションだからです。そして、この想いはこれからも持ち続けていきます。
樋山さん:
私は、NPOで働くことの喜びは自分の仕事が誰のために、何のために行われているのかが明確であることだと思っています。ただ、人身売買などの社会課題は簡単に解決できるものではありません。あきらめずに向き合い続けることが重要です。
たしかに、一人では無力であると感じることもあります。しかし、「仲間」がいれば立ち向かえるし、向き合うのが怖いと思ったことでも共に社会課題に取り組めると思います。
かものはしにいる約1万7000人ものサポーター会員のみなさまには、同じようにこの問題に向き合い続けていただいています。こうした、たくさんの力によって私たちも社会を良くしていく想いを持ち続けられています。
これからも、サポーターのみなさんと協力しながら、社会を良くしていくために尽力していきたいと思っていますし、これからも寄付者の方の人生を少しでも豊かなものにするお手伝いをしていきたいです。
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寄付金控除の対象団体です
かものはしプロジェクトとは
かものはしプロジェクトは、2002年に「子どもが売られてしまう問題(児童買春)」を解決するためにカンボジアで活動をスタートしました。2012年からは、インドでの人身売買問題を解決するために活動をはじめ、2019年からは日本の児童虐待問題にも取り組んでいます。
団体概要:
団体名 |
認定NPO法人かものはしプロジェクト |
設立 |
2002年7月(2014年より認定NPO法人) |
理事長 |
青木 健太 |
所在地 |
東京都渋谷区 |
連絡先 |
03-6277-2419 |
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「ちゃんとした団体なの?」「寄付で応援して大丈夫?」そんな疑問を持つ方のために、支援先として検討する時にチェックしたい3つのポイントをまとめました。
寄付の方法はどのようなものがあるか
かものはしプロジェクトは、毎月1,000円~支援ができる「サポーター会員」による寄付があります。サポーター会員になると入会キットがもらえるほか、メールで毎月活動報告が送られてきます。活動の様子は、FacebokやX(旧Twitter)などでも確認することができます。
下記のWebサイトから月額で支援する金額(1,000円・3,000円・5,000円・10,000円・その他)を選び、必要事項を記入して支払情報を入力するだけで簡単に行えます。
寄付は、インドと日本の社会の仕組みを変えるための活動や、国内の啓発活動及び事業運営に使われています。年次報告書では、詳細な寄付の使途が公開されているので、詳しく知りたい方はHPをご覧ください。
ここまで読んでいただき、かものはしプロジェクトの活動に共感していただいた方は、是非以下の記事もご覧ください。
「途上国の子ども達を応援したい」「貧しい環境で生まれた子にチャンスを作りたい」という方のご参考にしていただければ幸いです。
日本やインドにおいて虐待や人身売買の被害にあう子どもや女性たちがいます。かものはしプロジェクトでは、被害者に寄り添う支援を行うとともに、社会の仕組みそのものを変えて問題を解決しようとしています。ぜひ、寄付をすることで社会を変えるひとりとして活動をサポートしてみてはいかがでしょうか。
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