(出典:カタリバHP)
【2024/11/18更新】
最近少しずつメディアでも取り上げられるようになった「ヤングケアラー」の存在。
ヤングケアラーとは、家庭で両親や祖父母、きょうだいの世話や介護などをしているこどもたちのことを指します。
厚生労働省と文部科学省が連携して実施した調査によると、公立中学2年生の5.7%(約19人に1人)、公立の全日制高校2年生の4.1%(約24人に1人)が「世話をしている家族がいる」と回答しており、1 学級につき 1~2 人のヤングケアラーが存在している可能性があることが分かっています。
自分の学業や健康よりも家族を優先して生活しなければならない子どもたちのために、居場所支援や社会づくりを行う団体も存在し、私たちは寄付によってその活動を応援することができます。
しかし読者の方の中には、支援したいという気持ちはあっても、寄付に踏み出せないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では以下の項目を通じて、寄付に対する不安や疑問を解消し、どのようにして支援ができるのかを詳しく解説します。
- ヤングケアラーの子どもたちを支える団体の紹介
- 言葉の定義と日本における人数
- ヤングケアラーが抱える問題
- 私たちができることや寄付先・募金先の選び方
あなたにぴったりの寄付先がきっと見つかるはずですので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
ヤングケアラーの子どもたちを支える団体3選
まずは「すぐにおすすめの寄付先を知りたい!」という方のために、寄付ナビ編集部が厳選したおすすめの団体を3つご紹介します。
カタリバ:対話の場と専門家への相談窓口でヤングケアラーを支える
国の実態調査によると、ヤングケアラーとして働く子どもがいる家庭は、いない家庭に比べて、ひとり親家庭である割合が高くなっています。
さらにカタリバが生活困窮世帯の中高生を対象に行った調査では、「週に1回以上家族の看病、世話をしている生徒の割合が約2割」という結果も出ています。
ヤングケアラーがいる家庭は抱えている困難が複合している場合も多くみられ、その背景は簡単なものではないことが分かっています。
(出典:カタリバHP)
カタリバでは、そんなヤングケアラーとその家庭を支えるため、さまざまな支援を行っています。
カタリバが力を入れているのは以下の3つのプログラムです。
全て無償で、ヤングケアラーとその家族に提供しています。
- ヤングケアラー向け対話プログラム
同じヤングケアラーとして頑張っている同年代との情報交換や、日常の困りごとを相談したり、ケアラーの先輩との対話を通して進路や将来について考えられる機会を設けます。 - ヤングケアラーと家族の相談窓口
それぞれのご家庭のありたい姿を専門家と一緒に考え、公的支援の受給に向けたサポートや様々な困りごと、お悩みの相談に乗ります。 - 保護者向けワークショップ
希望される方に、ケアや子育て、家族関係などをテーマとした参加型のイベントを開催します。
ホームページには、実際に活動に参加した子どもたちの声も掲載されていました。
[団体概要]家族の事情もあり、これまでは進路のことも含め目先のことしか考えられてなかったけど、プログラムの中でケアの先輩のいろんな話を聞いたりして、自分一人で考えず人に相談していくことも大事だなと思うことができました。
高1女子/ひとり親
新しい見方が知れてよかったです。
介護があるから家から出られないと思って進路は諦めていたけど、まだ希望があると思いました。
活動内容 | 安心できる居場所の提供、学習支援、食事支援、災害時の居場所の提供や学習支援、探究学習の実践支援など |
活動地域 | オンライン(全国)、岩手県、宮城県、福島県、東京都、島根県に加え、各地域団体を後方支援 |
支援対象 | 主に日本の小学生〜高校生など |
寄付の使途 | 人件費、教材・備品・消耗品費、移動・交通費など |
運営団体 | 認定NPO法人カタリバ |
カタリバでは、ヤングケアラーを支える活動を含むカタリバ全体の活動を応援する「NPOカタリバサポーター」を募集しています。
月1,000円〜継続的に寄付をするカタリバサポーターになると、定期的な活動報告のメルマガ、サポーターの方限定の報告会や子どもたちとの交流会など、さまざまな情報が届きます。
編集部オススメのポイント!
カタリバは認定NPO法人なので、税額控除を受けられるのも嬉しいポイントですね。
ヤングケアラーの子どもたちやその家庭を具体的に支援したい、という方はぜひ寄付を検討してみてください。
> 団体公式サイトで詳しくみる
寄付金控除の対象団体です
日本ケアラー連盟:ヤングケアラーを社会全体で支える仕組みを作る
「ヤングケアラー」という言葉は少しずつ認知されつつありますが、その実態はまだ詳しく調査されておらず、さらにはそれを支える行政の仕組みもまだ脆弱です。
日本ケアラー連盟は、ケアラー・ヤングケアラーを社会全体で支える仕組みを作るための活動を行っています。
日本ケアラー連盟が行う活動は以下の4つです。
- ケアラーの実情を把握し、仕組みづくりに生かす調査研究事業
- ケアラーのための具体的な支援法の制定や政策実現を目指す、政策立案・提言活動
- ケアラーの暮らしを支える支援ツール開発などのケアラー支援事業
- 一般の方に問題を知っていただくための啓発・情報提供事業
ホームページには、具体的に政策を変えるためには何が必要なのかをまとめた冊子や、ヤングケアラーの実情を紹介する研修動画、毎月の活動を報告する日本ケアラー連盟通信など、幅広い情報が開示されており、ヤングケアラーが置かれている課題を深く理解することができます。
活動内容 | ヤングケアラーを支える仕組み構築に向けた調査研究・政策提言など |
活動地域 | 日本全国 |
支援対象 | ケアラー・ヤングケアラーの人びと |
寄付の使途 | 制度構築のための調査研究、ツール開発費用など |
運営団体 | 一般社団法人日本ケアラー連盟 |
日本ケアラー協会では、大きく3つの支援方法が紹介されていました。
- 2,000円〜10,000円の年会費を納め、会員になって応援する
- 月々500円〜寄付をするマンスリーサポーターとして応援する
- 1口3,000円以上の単発寄付で応援する
Facebookでは活動報告や啓発のための情報発信やイベントも頻繁に実施されており、支援をしながら、ヤングケアラーについての課題を深く知ることができそうです。
ヤングケアラーを社会の仕組みを変えることで支えたい、という方はぜひ寄付を検討してみてはいかがでしょうか。
ケアラーアクションネットワーク協会:ヤングケアラーの経験を学びに変え、本人と社会を変えていく
本人にその自覚がないまま、家族の世話や介護を行うヤングケアラー。
そんなヤングケアラーは、自身の経験から家族に障害や疾患があることが普通であるという“公平な視点”と、”多様な違いを認め合う力”をもっています。
この力を社会に向けて発信したり、その力を使って社会を変えていくことで、「公平で分断がなく尊重し合える社会」という新しい価値観を生み出したい、と活動を行うのがケアラーアクションネットワーク協会です。
ケアラーアクションネットワーク協会は、ケアラーが家族の世話を続けながら自分の人生を自由に選択できる社会になるために必要なサービスを提供する、をミッションに活動しています。
具体的には、ケアラー同士が出会い、共感し合える居場所支援と、そのケア経験を学びに転換して人生を豊かにするプログラムを提供。
ヤングケアラー同士が悩みを話し合える場づくり、セルフケアや障害の深い理解についての講座提供を実施しています。
ヤングケアラーにまつわる映画の作成など、問題の啓発に力を入れているのも特徴的です。
活動内容 | ケアラー当事者の居場所作り、教育プログラムの開発・提供、啓発活動 |
活動地域 | 日本全国 |
支援対象 | ヤングケアラーとして家族の世話をする人びと |
寄付の使途 | ヤングケアラーに提供される講座実施費用、啓発活動にまつわる費用等 |
運営団体 | 一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会 |
ケアラーアクションネットワーク協会では、月1,000円の継続寄付で団体を応援する、CANアンバサダーを募集しています。
HPによると、CANアンバサダーは、主にヤングケラーを支援する活動に賛同し、継続的に子どもや若者を応援しながら共に成長する仲間のこと。
良い活動を広めるアンバサダーになって欲しいという気持ちを込めて、ヤングケアラーについて説明する小冊子や、団体が制作する映画の宣伝カードが送られてくるそうです。
ヤングケアラー自身の経験や彼ら、彼女たちが持つ力を、社会を変えるエネルギーに変えることを支えたい、という方はぜひ寄付を検討してみてはいかがでしょうか。
身近な存在「ヤングケアラー」の定義は?
ヤングケアラーとは?
子ども家庭庁はヤングケアラーを以下のように定義しています。
本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと。
子ども家庭庁
- 障害や病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている。
- 家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている。
- 障害や病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている。
- 目を離せない家族の見守りや声かけなどの気遣いをしている。
- 日本語が第一言語でない家族や障害のある家族のために通訳をしている。
- 家計を支えるために労働をして、障害や病気のある家族を助けている。
- アルコール・薬物・ギャンブルの問題を抱える家族に対応している。
- がん・難病・精神疾患などの慢性的な病気のある家族の看病をしている。
- 障害や病気のある家族の身の回りの世話をしている。
- 障害や病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている。
家事や、身体的な介助だけでなく、相手の辛い気持ちを聴くなどの精神的なサポートや、安全に行動できるよう見守ることなども含まれます。
また、一言にヤングケアラーといっても、子どもたちが置かれている状況は様々です。親が日本語が話せないという場合もあれば、祖父母の病気の介護の場合もあり、兄弟姉妹の世話をしているということもあります。さらに、ケアを担う子どもたち一人ひとりの気持ちも、もちろん様々です。
しかし、一見状況の異なる子どもたちを「ヤングケアラー」として捉えることで見えてくるものがあります。
どれくらいの人数の子どもが、ヤングケアラーに該当する?
最新の調査では、中学2年生の約18人に1人、高校2年生の約21人に1人がヤングケアラーに該当するようです。世話をしている相手は、きょうだいが最も多く、父母、祖父母と続きます。
子どもがケアを担うことは何が問題?
「ヤングケアラー」を社会問題として捉えることも増えてきましたが、子どもがケアを担うこと自体が問題であるわけではありません。エピソードの柚月さんのように料理ができるようになることや、葵さんのように幼い子供の世話をできるようになることは、生きる上で役に立つことも多いでしょう。また、他者をケアすることで、人間的な成長をする人もたくさんいます。
子どものときからケアを担うことができることはすごいことで、例えばイギリスではヤングケアラー自身が、「ヤングケアラーであることに誇りを持てるように支援している」といいます。
実態調査においてもケアをすることで「きつさを感じているか」という問いに対しては、きつさを感じていないとの回答が半数を超えます。
一方的に「ヤングケアラーであることは問題だ」という姿勢で子どもたちを捉えるべきものではないでしょう。しかし、子どもがケアを担うことを「家族を助け合って素晴らしい」と美談として終わらせてしまうだけでは、子どもの負担や苦しさに目を向けられなくなってしまうことが、問題視されています。
実態調査において「きつさを感じていない」と回答した子どもたちも、幼少の頃からケアをすることが当たり前になってしまっていて、きつさに気が付いていない可能性もあります。具体的な影響を見てみましょう。
健康への影響
世話をしている家族がいる場合のほうが、健康状態がよくないと回答する割合が高くなります。
世話をしている家族の有無による、健康状態の違い(中学2年生)
学業への影響
世話をしている家族がいる方が、欠席する割合が高くなります。同様に、遅刻や早退の割合も増えます。
世話をしている家族の有無による、学校への出席状況の違い(中学2年生)
ケアを担うことで、学業や進学に影響が出ていると読み取れます。
悩み事
悩み事は家族の世話をしていない人に比べて多く、また「家族の経済的な状況のこと」や「自分と家族との関係のこと」等の悩みが多くなっています。
現在の悩み事(中学2年生)
子どもには、子ども時代を生きる権利があります。時間にゆとりを持ち、遊んだり、学んだりしながら、自分の興味関心を深め、自分らしく大人になっていくことが必要です。
しかし、ヤングケアラーの子どもたちは、自身の心身の健康や、自分自身の余暇、勉学よりもケアを優先せざるを得ないことがあります。また、ケアの受け手を中心に生活が回る中で、ヤングケアラーは、自分とゆっくりと向き合ったり、自分自身のことを相談する時間もあまりとることができない人も多いです。
ヤングケアラーとされる子どもたちは、家族のケアを担うことによって、貴重な子ども時代を奪われてしまっていることも少なくありません。
ヤングケアラーについて、さらに詳細に知りたい方はこちらの記事も是非ご覧ください。
ヤングケアラーの支援で私たちにできること
では、今私たちにできることは、どのようなことでしょうか。
ヤングケアラーについて知り、言葉を広める
子どもと関わる大人がヤングケアラーについて知り、適切にサポートできるようにするためにも、子ども自身が自分はヤングケアラーかもしれないと気が付き、必要あれば適切な支援を受けられるようにするためにも、まずはヤングケアラーについての認知を広めることが必要です。
団体に寄付をする
ヤングケアラーを支援している団体への寄付も、間接的にヤングケアラーを支援することに繋がります。
カタリバ:日本のヤングケアラーとその家族を支える
カタリバはヤングケアラーとその家族に対して、主にオンラインでの支援を行っています。ヤングケアラーである子どもたちとの定期面談、ヤングケアラー同士で話をできる場の開催、保護者向けのワークショップの運営などを行っています。オンラインだからこそ、全国の家庭とつながることができ、ヤングケアラーである子どもたちが、未来に希望をもち可能性を拓いていくことをサポートしています。
編集部オススメのポイント!
子ども達が夢をあきらめないですむように、学習サポートや心のケアを行うのが、認定NPO法人カタリバです。
> 団体公式サイトで詳しくみる
寄付金控除の対象団体です
支援先として信頼できる?3つのチェックポイント
ここまで読んでいただき、様々な支援の形や支援団体について知っていただけたかと思います。
しかし、中には「結局どこに支援したらいいかわからない」という方もいらっしゃるかもしれません
そんな方のために、寄付ナビが考える「支援先として信頼できるかのチェックポイント」をご紹介します。
一般的に、企業の良し悪しを判断する材料として「ひと・もの・お金」の3つが大切と言われます。NPOでは、それは「ひと・活動・お金」です。
企業で言うところの”もの”、すなわち”商品”は、NPOがどのようなアプローチで問題を解決しようとしているのか、つまり活動の内容です。
その活動内容に賛同することが、まさしく、寄付を通じた応援と言えると思います。
さらに寄付先として判断する上で、「ひと・活動・お金」を適切な言葉に言い換えると、「職員・活動・会計」です。
- 職員の顔が見えるか?
- 活動によって問題を解決しているか?
- 透明性の高い会計報告を行っているか?
支援を迷っている団体があれば、是非参考にしてくださいね。
まとめ:ヤングケアラーを支援する活動に寄付したい方のご参考に
今回は「カタリバ」「日本ケアラー連盟」「ケアラーアクションネットワーク協会」の3つをご紹介しました。
団体名 | 寄付ナビ編集部オススメのポイント |
カタリバ | ① 10代を対象としたキャリア教育で、子どもの意欲と創造性を引き出し、育む ② 創業者とスタッフの皆様の情熱が共感を呼び、2万人以上の支援者が活動を支えている |
日本ケアラー連盟 | ①ヤングケアラーが置かれている課題を深く理解することができる情報多数 ②ケアラーを支える社会的仕組みをつくるための政策提言も行なっている |
ケアラーアクションネットワーク協会 | ①「公平で分断がなく尊重し合える社会」という新しい価値観を生み出すことを目標としている ②ヤングケアラーにまつわる映画の作成など、問題の啓発に力を入れている |
自分の学業や健康よりも、両親や祖父母、きょうだいのケアをしなければならない環境を強いられている子どもたちを支援したいと思った方は、是非寄付の検討をお願いします。