「寄付金を人件費に使うのはダメ」は本当?“使途”や“使いみち”の大きな誤解

寄付する団体や活動を選ぶにあたって、気になるのがお金の使い道。

「せっかく出したお金だから、有効に使ってほしい」
そんな想いのもと、寄付者の方がよく質問するのが人件費についてです。

寄付金の使途についてのよくある誤解と、社会に役立つ使い方についての考え方を解説します。

「人権費の比率が低ければ、低いほど良い」は、正解なのか?

私がNPO法人に勤めていた時、支援者の方から時折いただいてたのが「寄付を人件費には使わないでほしい」というご要望でした。

「寄付を人件費に使う」のは、本当によくないことなのでしょうか?
実は、寄付の使い道として人件費が適切かどうか?は、活動の性質によるのです。

物資を送る活動

地震や台風など、自然災害に遭った被災地に物資を送る。
紛争や貧困に苦しむ途上国に、食料や医薬品を届ける。

こうした場合、寄付金の多くは物資の購入に充てられます

「できるだけ多くのモノを届けること」が、「命を救うこと」や「生活を助けること」になりますね。
それらにともなう間接費、たとえば人件費の比率は「低ければ、低いほどよい」という考え方は合理的に思えます。

人が頑張る活動

一方、別の分野、たとえば子どもたちの教育ではどうでしょうか?

教育には、教科書や鉛筆、校舎など物資が必要なのはもちろんです。
しかし、途上国でも日本でも多くの場合、問題となるのは物資の不足もありますが、教える人が足りないこと。
(もちろん、何が一番の問題か?は国や地域によって異なります。)

そんな時に有効なのが、先生を雇用する給与を払ったり、ボランティア学生を派遣する費用を用意したり、外部の教育機関に通える資金を用意したりなど。
つまり“人にかかる費用”を、お金を使って解決してあげるのが、効果的なのです。

まとめ:問題の原因や活動の性質によって、有効な使途はそれぞれ

これらの例からもわかるように、「寄付金を何に使うと、最も効果的に問題を解決できるのか?」は、問題の原因や活動の性質などによる、ということ。

「寄付金には人件費を使わないでほしい」「人件費の比率が少なければ、少ないほどよい」という考え方は、成り立つ場合もあれば成り立たない場合もあるのです。

なぜ“ボランティア頼み”では、本当に困った人を助けられないのか?

先ほど例に出した「教育」のように、人材を送り込むのが有効な活動について話をすると、「それなら、ボランティアでまかなえば良いじゃないか?」と質問を受けることがあります。

たしかに、ほとんどのNPOやNGOでは、無給で働くボランティアスタッフが数多く活躍しています。

震災直後に集まったボランティアと、被災地で続く長期的な課題

東日本大震災後に被災地で、炊き出しやガレキ除去などに、たくさんのボランティアが集まったのは、覚えていらっしゃる方も多いでしょう。

一方、震災から時間が経った今でも、一部の被災地では子ども達が「仮設住宅で暮らし、勉強する場所がない」や「被災体験がトラウマになって心のケアが必要」といった課題が残っています。
そのために、たとえば放課後学校を開く活動をしているNPO法人もありますが、震災の記憶も人々のなかで薄れるなか、どれだけの方がボランティアとして集まるでしょう?

一時的な“プロジェクト”ではなく長期的な“事業”として、困っている人たちを助ける活動に腰を据えて取り組むなら、継続的に活動するスタッフが必要です。
会社でいう「正社員」にあたる正規のスタッフを、NPOやNGOも雇用する必要があるのです。

「非営利なんだから、無給が当たり前」は本当?

「非営利な活動なんだから、給料が出ないのは当たり前じゃないか?」と言う方も、なかにはいらっしゃいます。
しかし、無給もしくは著しく低い給料で、活動を続けられる人はいるでしょうか?

多くの非営利団体に共通する悩みですが、結婚や出産、介護などライフステージの変化に伴って、退職せざるを得ないスタッフが出てきます。
活動を始めた頃や20代など若いうちは“想い”や“理想”だけで乗り切れても、現実な給与がネックとなってしまい、せっかく蓄えた支援活動の経験やスキルが活かされないのです。

NPOの「働く」「キャリア」をテーマに、筆者が参加した座談会

そのようなNPOに組織に、優秀な人材が集まるでしょうか?
十分な人件費を払えずにスタッフが定着しない団体への寄付は、本当に困っている人たちの役に立つのでしょうか?

社会にとって本当にインパクトのある事業を行えば行おうとするほど、必要なのは人への投資
「働きやすい環境整える」「優秀な人材を集める」という意味で、人件費が不可欠なのです。

志をもって頑張る方を「あなたが寄付で支える」

とは言っても、自分が出した寄付が「人件費として使われる」というのは、直感的には心地よいものではないかもしれません。
飲食や住居など「受益者でない人の生活のために、最終的にはお金が使われる」と捉えてしまうと、と私自身が寄付するときにはどこか引っ掛かりがあります。

でも、視点を少し変えてみて、「自分の代わりに頑張ってくれる人への応援」と寄付を捉えてみてはいかがでしょうか?

「子どもたちのために何かしたい」「震災などで困っている人を応援したい」という思いを抱く方は、私の周りにもたくさんいらっしゃいます。
でも、自分自身で長期的にボランティアをしたり、現場で腰を据えて活動したりは、お仕事やご家庭の関係で難しい方がほとんどでしょう。

そんな困難なミッションを、代わりに行ってくれているのが、NGOやNPOのスタッフ。

たしかに正職員なら給料はもらえますが、同じ能力を持つ方なら「民間企業で働くより圧倒的に低い金額」というケースが、(残念ながら現時点では)多いはずです。
自分自身の収入やキャリア、場合によっては家族といった面で困難を背負っても、志のために尽力する。

そういった志のある方々を、あなたが寄付によって支える
彼らが、子どもたちや困っている方々など、活動の受益者をサポートする。

そういった素敵な応援の循環が起こるための、“一番初めの起点”として人件費を捉えると、嬉しい気持ちで寄付もできるはずです。

特に月1,000円からなど継続的に寄付のマンスリーサポーター制度は、人件費を含めた使途の制約がないとする団体がほとんど。
「人件費」に代表されるように寄付への理解が進んでいないからこそ、NPOやNGOにとっては、使い道を指定せずにいただける寄付ほど、嬉しいものはないはずです。

毎月クレジットカードで寄付する「マンスリーサポーター」、10年間続けて分かったこと

「困っている人たちに、本当に役に立つには?」「社会のために最も有効な寄付の使われ方は?」
そういった視点から、寄付の使途や「人件費」を捉えなおす一助に、この記事がなれば嬉しく思っています。

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