「節税目的の寄付」「寄付金で税制優遇」「寄附金控除」といった言葉を、耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。
「寄附で節税」とは、具体的にどのようなことなのでしょうか?
「どれくらい税金が安くなるのか?」「どの寄付が対象になるのか?」
具体的なケースやよく聞かれるポイントなどを解説します。
目次
「寄付で節税できる」の意味は?寄付額の約40%が、所得税から差し引かれる
あなたが、2017年に認定NPO法人に52,000円を寄付したとします。
確定申告をするため、収入や経費、控除などを計算した結果、納める所得税が50万円だったとしましょう。
この時、寄付した団体が税制優遇の対象になっていれば、寄付した金額の一部を、本来支払うべき所得税額である50万円から差し引くことができると、国の制度で認められています。
控除される割合は寄付金額から2千円を差し引いた額の40%、このケースでは(52,000円-2,000円)×40%=20,000円です。
したがって、納めるべき所得税は500,000円-20,000万円=480.000円に。
所得税の金額がちょっとだけ低くなった、つまり「節税」になったことがわかるでしょう。
これが寄附金控除による税制優遇の仕組みです。
このケースや計算式は、分かりやすく解説するため、単純化しています。
税制優遇の金額については、「税額控除」を選んだ場合で計算しています。
所得税だけでなく、住んでいる地域や支援先の団体によっては、住民税も控除を受けられる場合もあります。
(遺産の相続にあたっても、相続税の税制優遇の制度が設けられています。)
ただし初心者の方がまずはざっくりと理解するためには、平均所得に近い方の場合、(国や自治体、日本赤十字など一部を除いて)公益法人や認定NPO法人に寄付をすると、寄付金額の40%近く、最大で50%近くだけ税金が安くなる、と覚えるのが分かりやすいでしょう。
寄付金控除と税制優遇の仕組み、よく聞かれる5つの質問
寄附税制について調べると、税務の専門用語やいくつかの場合分けしたルールなどがあって、税金になじみのない方にとっては、分かりにくいと感じることがあるかもしれません。
詳細な解説は専門のサイトに譲りますが(文中のリンクを参照)、よく聞かれる5つの質問に簡単にお答えします。
質問1:どの団体に寄付すれば、税制優遇の対象になる?
国や地方自治体、公益社団法人や公益財団法人、社会福祉法人、認定NPO法人などが対象です。
学校や政党への寄附も、対象に含まれる場合もあります。
通常のNPO法人や一般財団法人・一般社団法人は対象とならないので、気をつけましょう。
一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)国税庁
質問2:個人と法人で、制度に違いは?
これまでは個人の寄附金控除を解説してきましたが、法人も寄付による税制優遇についての規定があります。
会社が寄付をしても、通常は事業にとって必要のない出費と判断されてしまい、経費(損金)としては認められません。
しかし、例外として国や地方公共団体、特定公益増進法人などに寄付をした場合は、一定の限度額で損金として算入できるようになっています。
質問3:所得税だけでなく、住民税も安くなるって本当?
寄付をした団体が、都道府県や市町村が条例によって指定している団体に含まれていれば、住民税も税制優遇の対象(都道府県は4%、市町村は6%)となります。
所得税とは異なり、一部の例外(地方自治体や共同募金会、日本赤十字への寄付)を除き、自治体から個別に指定されていなければ、税制優遇の対象とならないので気をつけましょう。
あなたの寄付した団体が対象になっているか?は、お住いの自治体のホームページなどで確認できるはずです。
ふるさと納税以外の寄附金税制総務省
質問4:「税額控除」と「所得控除」をどちらを選べばよいの?
「税額控除」とは、1章目のケースに載せたように、支払うべき所得税の金額から寄附金控除分を差し引く方法です。
一方「所得控除」とは、医療費や保険など通常の控除分と同じように、所得から差し引く方法です。
基本的にはどちらかを自由に選べますが、一般的な所得水準の方にとっては、税額控除の方が控除金額が大きくなる(節税になる)でしょう。
所得税の税率が高い(収入が多い)方には、所得控除の方が控除金額が大きくなる場合があります。
質問5:手続きは簡単?確定申告しないといけないと聞いたのですが・・
(サラリーマンなど通常は確定申告が必要ない方でも)確定申告が必須です。
年末調整だけでは、寄附金控除は受けられないので注意しましょう。
確定申告の書類に寄附領収書も合わせて提出して、還付(や追徴)分に反映されます。
まとめ:「節税」だけを考えたら、お勧めできないが・・
これまで寄附金控除や税制優遇の仕組みを、初心者の方に分かりやすく解説してきましたが、「寄付で節税できる?」と考えた方は既にお気づきかもしれません。
もし単純に節税目的だけで寄付を検討しても、あまり効果的ではないでしょう。
経済的メリットだけでみると、マイナスに
なぜなら、寄付それ自体には、経済的なリターンは原則としてありません。
金銭的な損得だけをみれば、寄付金額から控除分を引いた金額だけ、マイナスとなってしまうからです。
たとえば確定拠出年金や保険のように、節税に適していると言われる金融商品は、世の中にたくさん出ています。
また、一般的な「寄付」よりは、ふるさと納税の方が控除される金額の比率が高く、自治体によっては経済的価値のある返礼品ももらえるので、節税目的には適しているでしょう。
さらに、確定申告に際しては、書類を記入したり領収書を揃えたりなどの手間も発生します。
寄付金の額が数千円や数万円といった範囲なら、割に合わないかもしれません。
“ご褒美”や意思表明の手段として捉えれば
一方、「活動を応援したい」「社会に貢献したい」といった気持ちを表すための手段として寄付を捉えるならば、話は別です。
そちらがメインで、寄附金控除は“ご褒美”ぐらいに捉えるならば、節税メリットは実感できるはずです。
また税金と寄付を同じように社会のための支出と捉える考え方もあります。
応援する認定NPO法人が活動している分野で、もしあなたが「国だけに任せるよりもNPOが参加した方が、同じお金を使っても効率的に社会を良くしてくれる」と考えたなら、「税金を50万円支払うなら、その20%の10万円をNPOに寄付して、寄附金控除の約4〜5万円分だけ税金を安くしてもらう」と、あなたが意思を表明する手段として税制優遇を活用するのもよいでしょう。
寄付を「望む未来をつくるための投資」と捉える人もいますし、「寄付した本人も幸福を感じやすくなる」といった統計データも知られています。
寄付本来の意義や目的を十分に踏まえたうえで、税制優遇や寄附金控除も活用する方が増えれば良いなと考えています。