かものはしプロジェクトの5年分の年次報告書から、寄付が有効に使われているか検証してみた

(出典:2020年度年次報告書より引用)

こんにちは、寄付ナビの鈴木大悟です。

私は2018年から現在に至るまで、サポーター会員として、認定NPO法人かものはしプロジェクトへ毎月の寄付を継続してきました。

「寄付したお金は何に使われているの?」
「本当に人身売買は減っているの?」
「この先も寄付を続けると、どんなことに使われるの?」

そんな、ふとした疑問を解消すべく、私なりの3つのチェックポイントを元に、かものはしプロジェクトへの寄付が有効に使われているかを検証します。

これからかものはしプロジェクトへの寄付を検討されている方にとって、少しでもお役に立てていれば幸いです。

ポイント1:結局、寄付は何に使われた?

まず最初に「これまで5年間、毎月寄付を続けてきたけど、結局それって何に使われたの?」という疑問について、チェックしてみました。

主な寄付の使途は以下の2つです。

  1. タフティーシュ事業:人身売買犯罪の裁判と、取り締まりの捜査を強化する
  2. リーダーシップネクスト事業:サバイバーリーダーが、被害者支援、地元行政・警察・メディアへ働きかけを行う

※ かものはしプロジェクトでは人身売買の被害者のことを”大変な境遇を生き延びた人”という敬意を込めて「サバイバー」、サバイバーから一歩進んで人身売買をなくす活動に参加するまでになった女性を「サバイバーリーダー」と呼んでいます。

それぞれの事業について、実現された支援と支出実績を見てみましょう。

人身売買から女性と子どもを守る「タフティーシュ事業」

概要

被害にあった女性たちが権利と正義を取り戻せるよう、継続的な裁判支援とサバイバーの生活再建によって、刑事司法制度や福祉制度を強化する。

実現された支援

2021年末までに90人のサバイバーが被害者補償を申請し、内50人に補償が認められる。

期間

2019年9月〜2022年11月

2021年度支出実績

4,959万円

 
タフティーシュ事業のポイント

インドの人身売買の問題を複雑化させている大きな要因の一つが「被害者が遠く離れたいくつかの州をまたいで取引されること」です。

東部の貧困地帯から、西部の大都市ムンバイまで、たくさんの女性が売り飛ばされている―かものはしプロジェクトHP

インドは州自治で、それぞれの州で法律が異なるため、州をまたぐ捜査は困難を極めます。

このような環境下で、人身売買を取り締まる場合、それぞれの地域の政府機関やNGOが連携することが不可欠であるはずが、その連携が不十分な現状があります。

かものはしプロジェクトでは被害にあった女性たちの権利と正義を守るため、パートナー団体を通じた各政府機関への働きかけ、並びに継続的な裁判支援とサバイバーの生活再建支援に注力しています。

またタフティーシュ事業は、2022年4月28日にトムソン・ロイター財団のStop Slavery Collaboration賞を受賞しました。
この賞は人身売買を止めるために、協力・連携をしながら画期的な取り組みをしている団体に授与される賞です。
州をまたいで行われる人身売買犯罪を防ぐという文脈の中で、「連携賞」を受賞したことは大変に意義深いことです。

サバイバーのリーダーシップ育成「リーダーシップネクスト事業」

概要

サバイバーリーダーたちが、被害者支援・地元行政・警察・メディアへ働きかける。「当事者の声を制度に反映させること」がとても重要。

実現された支援

総勢211人のサバイバーリーダーが、人身売買問題の解決のためにアクションを起こす。内7人がデリーへ行き、人身売買取締法案に対する要求を、国会議員、中央官庁官僚、メディアに対して積極的に行う。

期間

①2020年8月〜2021年7月/②2021年8月〜2024年7月

2021年度支出実績

①511万円/②4,292万円

 

リーダーシップネクスト事業のポイント

人身売買の被害を生き抜いてきたサバイバーたちが、社会を変えるリーダーへと成長することを支援する事業です。

リーダーシップ研修を受けた人数(2018年度実績)―かものはしプロジェクトHP

サバイバーリーダーが被害者女性に寄り添うことで本音を言いやすくなったり、「私も頑張ればこんな風に輝くリーダーになれるんだ」というロールモデルを創出したり、などといった効果があります。

サバイバーリーダーの言葉は多くの人の心を動かし、インドのNGOだけでなく、政治家やメディアを大きく動かしています。

事業費と管理費の割合

直近5年間の会計報告から、事業費と管理費を抽出しました。

「極端に管理費が多い」といったこともないように見受けられます。

  • 2021年度:事業費:273百万円(82%)/管理費:57百万円(18%)
  • 2020年度:事業費:264百万円(80%)/管理費:64百万円(20%)
  • 2019年度:事業費:308百万円(83%)/管理費:65百万円(17%)
  • 2018年度:事業費:199百万円(72%)/管理費:77百万円(28%)
  • 2017年度:事業費:196百万円(71%)/管理費:81百万円(29%)

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ポイント2:どんな成果が生まれたのか?

寄付使途の次に気になったのが、「支援の結果、どんな成果が生まれたのか?」という疑問です。
この疑問を解消するために、当初の目標を達成しているか?をチェックしました。

2012年からスタートしたインド事業ですが、当初は2020年までに、人身売買の問題を解決することを目指していました。

2019年度年次報告書より引用

先述したポイント1の「タフティーシュ事業」でご紹介した、州をまたいで女性が売り飛ばされるという現状を打破する「包括法案(包括的な人身取引法案)」がインド国会で可決されることが、インドでの目標を達成する上で非常に重要です。

しかし2018年、包括法案は下院を通過したものの、総選挙を前にして、上院で議論されることなく頓挫しました。

一方で、かものはしプロジェクトの努力全てが、水の泡になった訳ではありません。

2021年には約150万円の被害者補償金が認められました。
タフティーシュ事業を開始する前と比べて、10〜20倍の補償額が恒常的に認められるようになり、司法制度における被害者補償権が確立されつつあります。

また、2018年から支援しているサバイバーリーダーシッププログラム(2020年度より「リーダーシップネクスト事業」に名称変更)も一定の成果を残しています。

被害者からサバイバーへ、サバイバーからサバイバーリーダーへと成長を遂げたカイラさん(仮名)の言葉をご紹介させてください。

2018年度年次報告書より引用

もしも私のことを悪く言ったり、攻撃してきた人が私のことを頼ってきたとしても、私はその人の役に立ちたい。
なぜなら、昔の私みたいに、誰からも話を聞いてもらえないという経験をもう誰にもしてほしくないから。

(出典:2018年度年次報告書4ページ)

かものはしプロジェクト共同代表の村田早耶香さんは、カイラさんの言葉を受けて、次のようにコメントしています。

『彼女の身に起こったことを、自分ごととして考えてみたときに、私はほほえみながら、彼女と同じ言葉を口に出せるだろうか。』

(出典:2018年度年次報告書4ページ)

カイラさんのようなサバイバーリーダーは、決して少なくありません。
「2021年3月時点で191人のサバイバーを支援した実績」からも、かものはしプロジェクトが「人身売買の被害者数が世界最大と言われているインド」で生んだ成果は大きいと言えるのではないでしょうか。

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ポイント3:この先いつまで、いくら寄付を続ければ、目標が達成されるのか?

最後に「この先いつまで、いくら私たちが寄付をすれば、高い確率で目標を達成し得るのか」をチェックしました。

かものはしプロジェクトは、ネクストゴールを「2024年までにインドで問題を解決する」と掲げています。

2024年の総選挙までに包括法案を成案させ、

  • インドで州をまたぐ捜査機関を設置
  • サバイバーたちがリハビリテーションを受ける権利

などを、実行力を伴った法律で実現する計画です。
活動が十分な成果を上げるためには、毎年1億円の資金(インド事業における支出)が必要となるそうです。

過去のインド事業における資金使途(2019年度 年次報告書より)―かものはしプロジェクトHP

被害者数が世界一と言われているインドでの問題解決が進めば、世界の人身売買の被害者数を大きく減らすことに繋がります。

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まとめ:人身売買のない世界の実現に向けて、私たちの寄付が有効に活用されている

今回年次報告書を検証してみて、活動報告の節々から、かものはしプロジェクトが「誰ひとり問題の解決を諦めていないこと」が伝わってきて、5年間寄付を継続してきた一人の支援者として喜びを噛み締めています。

人身売買の被害者が「痛み」「哀しみ」「怒り」を乗り越えて、やがて自分の人生を生きていくようになる、そのプロセスを、私は応援せずにはいられません。

あなたもサポーター会員として、かものはしプロジェクトの活動を長期的且つ継続的に応援しませんか?

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