「特定遺贈」は遺贈寄付で活用できる?法律や税金など、よくある疑問に答えます

特定遺贈での寄付を検討されている方にとって、残されたご家族や非営利団体が無事に財産分割の手続きを終えるためにはどうすればいいのか、お悩みのことと思います。

「特定遺贈で寄付をすると、税金はどうなるの?」
「もし非営利団体が放棄するとしたら、手間はかかるの?」

こうした疑問をお持ちの方へ向けて、特定遺贈に関する知識をまとめました。

特定遺贈とは?「何をどの団体に寄付するか?」が明確な方にはおすすめ

遺贈寄付とは「遺言によって、残された財産の全部または一部を、無償で非営利団体などに寄付すること」です。

そして遺贈は、その形式によって、特定遺贈と包括遺贈に分類することができます。

  • 特定遺贈:「金〇〇万円をNPO法人△△に遺贈する」というように、財産と受け取る人を特定して遺贈すること
  • 包括遺贈:「全財産(の◯分の1)をNPO法人△△に遺贈する」というように、財産を個別に特定せずに遺贈すること

この特定遺贈と包括遺贈、どちらを選べばよいでしょう?

「何を寄付するか?」と「どこに寄付するか?」が明確になっている方は、特定遺贈での遺贈寄付がもってこいです。

なぜなら特定遺贈のメリットは、借金や連帯保証債務を遺贈する財産として特定しない限り、それを非営利団体は引き継がないからです。

包括遺贈で財産を引き受けた非営利団体は、相続人と同等の権利義務が生じますので、債務があればそれも引き継ぎます。
包括遺贈と比べて、特定遺贈は債務を継承する恐れがありません。

包括遺贈と特定遺贈を比較!寄付する時、相続トラブルにならない方法は?

ただし、特定遺贈にもデメリット(?)や注意点があります。

どの財産を残したいのかが不明瞭であったり、財産の所在(不動産の登記・預金の口座番号など)に誤りがあった場合は、特定遺贈が無効になってしまいます。

以上の観点から「何を寄付するか?」と「どこに寄付するか?」が明確になっている特定遺贈は、遺贈寄付との相性が良いです。
遺贈寄付を行うには最もスタンダードな方法と言って、差し支えないでしょう。

「遺言執行者」や「遺留分」など、よくある質問をまとめました

特定遺贈ですが、具体的にに手続きを進めるうえでは、何に気をつければよいでしょうか?

遺贈寄付を検討されている方から「法律や税金のことなど、分からないことが多くて不安」というお声を伺います。
寄付者の目線でどういったことをご不安に感じるのか、よく頂く質問にお答えします。

質問1:遺言執行者は、誰に頼めばいい?

遺言執行者とは、寄付者が亡くなった後に、財産の名義変更や寄付の送金といった相続の手続きを行う人を指します。

遺言執行者は財産の管理や換金など、遺言執行の為にかかる一切の権利義務を有することになります。
未成年者と破産者以外であれば、どなたにでも依頼することが可能です。

遺言執行者は、相続人や寄付先との利害関係が絡みやすい立場にある、とも言えます。
あなたが信頼のおける人物で、且つ法務や税務に詳しい方にお願いするのが一般的です。

もしそうした方がいらっしゃらないのであれば、弁護士や司法書士に依頼することも、視野に入れて良いでしょう。

質問2:遺留分として、家族にはどれくらい残した方がいい?

遺贈寄付をする為には、残されたご家族への配慮が、とても大切です。
相続人には、遺留分といって「最低限これだけは相続する権利があなたにはありますよ。」という財産の取得分が、法律で守られています。

ご家族と寄付先へのバランスの取れた遺言を作成する為にも、余裕を持って、遺留分を確保しておきましょう。

遺留分を守って遺贈寄付のトラブルを防ぐ!具体的な計算方法と遺言の文例

質問3:もし寄付先の団体に、遺贈を放棄されたら?

せっかく故人の財産を寄付しても、非営利団体に受け取ってもらえない場合もあります。

その場合は残されたご家族や遺言執行者に、「遺贈寄付を放棄する」旨の内容証明郵便で郵送されてくることが多いでしょう。

(放棄に至っては口頭で伝えるだけでも法律上問題はないのですが、トラブルを回避するためです。内容証明郵便で伝えることで「誰が、誰宛に、いつ、どんな内容の郵便をしたのか」ということを日本郵便が証拠として残してくれるからです。)

内容証明郵便を受けとったら、必ず開封して記載内容を確認され、今後の対応を検討して下さい。

通常の書留郵便と同様に、不在の場合は郵便局で保管され、保管期間(約1週間)を過ぎると非営利団体に戻ってしまいます。

税金はかかる?現物(不動産や有価証券)の寄付は要注意!

現金で遺贈寄付をするだけであれば、ご家族にも寄付先にも、寄付をすることによる税金はかかりません。

しかし現金ではなく現物資産(不動産、有価証券、絵画や骨董品)を寄付される際には、寄付をすることによって税金が発生するケースがあります。

遺族にかかる税金

みなし譲渡所得税

含み益のある現物資産を寄付すると、残されたご家族にみなし譲渡所得税という税金がかかります。

寄付先は財産を受け取り、ご家族が税金を払うという、少々いびつな税制ですが現行制度上は課税対象です。
含み損を抱えている場合は、みなし譲渡所得税はかかりません。

また、寄付先の法人格によっても課税対象となるかどうかが異なります。
公益法人等への寄付は、寄付後に税務署で所定の手続きを行うと非課税になりますが、認定NPO法人やNPO法人は課税対象です。

参考

公益法人等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例のあらまし国税庁HP

非営利団体にかかる税金

固定資産税

一般的に固定資産税は、財産を保有することでかかる税金ですが、寄付した後はランニングコストとして寄付先が負担することになります。

寄付後の活用使途や売却の目処など、財産の行き先があれば問題ありません。
もしそうでない場合、良かれと思って寄付したとしても、非営利団体の負担となってしまうこともあります。

現物資産を寄付される場合は、生前に寄付先とよく相談しておきましょう。

不動産取得税

不動産取得税とは、特定遺贈で相続人以外が不動産を取得した時にのみかかる税金です。
包括遺贈では財産を引き継がれる方が相続人と同等に扱われる為、課税されません。

不動産取得税は以下のように課税されます。

  • 土地・住宅家屋…固定資産税評価額 × 1/2 × 3%
  • 事務所・店舗等の家屋…固定資産税評価額 × 4%

※宅地及び宅地比準土地に該当する不動産は固定資産税評価額の2分の1、それ以外は固定資産税評価額に標準税率を乗じて計算されます。

不動産を遺贈寄付する際は、あなたの不動産に大体いくらの税金がかかるのか、事前に把握しておきましょう。

また現物寄付は、その複雑さ故に、受け入れている団体とそうでない団体があります。
意中の団体が現物寄付を受け入れているのかどうか、事前に確認し相談の上、行うようにしましょう。

 

ここまで、特定遺贈にまつわる法律や税金をご紹介して参りました。
遺贈寄付を検討する上で、何かお役に立てれば幸いです。

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