包括遺贈と特定遺贈を比較!寄付する時、相続トラブルにならない方法は?

遺贈寄付をする為には、あらかじめご家族や非営利団体へ、どのように分配するのかを決めておく必要があります。

財産の分配の仕方によっては、残されたご家族と非営利団体の間で、トラブルに発展する可能性があることはご存知ですか?

遺贈は財産をどのように分配するのかによって、「特定遺贈」と「包括遺贈」の2つに大別されます。

遺贈寄付を検討されている方や残されたご家族が、相続時のトラブルに巻き込まれないように、注意点をまとめました。

特定遺贈とは、財産を特定して遺贈する方法

特定遺贈とは、「△△(非営利団体)には、金〇〇万円を遺贈する」という風に、遺言者の個々の財産を特定して分配する遺贈方法です。

メリット・デメリット

特定遺贈のメリットとデメリットを整理してみました。

メリット

  • 非営利団体が債務を引き継ぐ恐れがないので、団体にとって好ましい。
  • 特定遺贈の放棄には申述の期限がなく、相続人もしくは遺言執行者に放棄する旨を伝えるだけで遺贈を放棄できるので、比較的手続きは簡便になる。

デメリット

  • 財産の変動には対応できず、遺言作成時に指定した財産がない場合、引き継げない。
    相続発生までに指定した財産が目減りしていたり、消失したりしていると、予定していた受け渡しができない恐れがある。

これらを踏まえた上で、特定遺贈を選択する場合は、遺言にどのように記載すればよいのでしょうか?
そこで遺言の文言を、事例として紹介させて頂きます。

ケーススタディ

家族構成は、夫・妻・長男の3人家族を想定しています。

遺言公正証書

第1条 遺言者は、下記の不動産を妻〇〇(昭和××年×月×日生)に相続させる。
(1) 土地
     (住所:××)の土地
(2) 建物
     (住所:××)
    家屋番号××の× の建物

第2条 遺言者は、下記の自動車を長男〇〇(平成××年×月×日生)に相続させる。
     車名 トヨタ自動車 ××
     車体番号 ×× – ××
     登録番号 ×× あ 1234

第3条 遺言者は、下記の預貯金を特定非営利活動法人〇〇(住所:××)に遺贈する。
    ××銀行 ××支店 口座番号567890


財産ごとに、引き継ぐ人を特定して、財産を分配してみました。

特定遺贈のポイントは、借金や連帯保証債務を特定しない限り、引き継ぐことはないことです。

遺贈寄付を受ける非営利団体にとっては、債務まで請け負ってしまうリスクがないので、寄付を受け取りやすくなります。

遺言公正証書とは、公証役場で作成する遺言(公正証書遺言)のことです。
弊サイト内でも公正証書遺言について、詳しく解説した記事がございますので、そちらも併せてご高覧ください。

遺贈寄付では、公正証書遺言の相続登記をオススメする理由と注意点まとめ

包括遺贈とは、財産の変動にも対応できる遺贈方法

包括遺贈とは、故人の財産を個々で指定せずに、全財産を包括して割合で分配する遺贈方法です。

包括遺贈で財産を引き継ぐ人は、非営利団体であっても、相続人と同等の権利義務が発生することがポイントです。
特定遺贈と同じく、包括遺贈についてもメリットとデメリットを挙げさせて頂きます。

メリット・デメリット

メリット

  • 遺言作成時から相続発生時までに、財産が変動していても対応できるので、指定した割合通りに財産を分割できる

デメリット

  • 借金や連帯保証債務があると、非営利団体もそれを引き継ぐことになるので、非営利団体にとっては債務の有無を確認する必要がある
  • 遺贈を放棄する場合、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に放棄の申述が必要となる。
    相続開始があったことを知った時から、3ヶ月を過ぎてしまうと遺贈を承認したことになるので、相続発生後速やかに関係者に連絡することが望まれる。

それでは、包括遺贈も特定遺贈と同様に、遺言の文例を確認していきましょう。

ケーススタディ

家族構成は、先程と同じく、夫・妻・長男の3人家族です。

遺言公正証書

第1条 遺言者は、遺言者が本遺言効力発生時に有する3分の1を妻〇〇(昭和××年×月×日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、遺言者が本遺言効力発生時に有する3分の1を長男〇〇(平成××年×月×日生)に相続させる。

第3条 遺言者は、遺言者が本遺言効力発生時に有する3分の1を、特定非営利活動法人〇〇(住所:××)に遺贈する。


それぞれに3分の1ずつ、割合を指定して、財産を分割してみました。

しかし、この遺言のまま相続手続きに入った際のことを想定してみましょう。
もし被相続者に債務があると、特定遺贈とは異なり、非営利団体にもその債務が引き継がれる恐れがあります。

債務の状況によっては、せっかく遺言で寄付先が決まっても、非営利団体から寄付の受け取りを断られてしまう、という事態にもなりかねないのです。

包括遺贈による債務の継承を避けたい!清算型包括遺贈とは?

先の章で、包括遺贈には非営利団体が債務を継承するリスクがある、とご紹介しました。
遺留分を確保した上で遺贈寄付を行う場合や、遺留分を行使できる相続人がいない場合は、清算型包括遺贈という手法で遺贈寄付を行うのも有効です。

清算型包括遺贈とは、財産を遺言執行者に換金・清算してもらった後に、残った財産を包括遺贈するという分配方法です。

ケーススタディ

遺言の文例としては、包括遺贈のケーススタディに執行方法を追記することで可能です。

第4条 遺言執行者は、遺言者の財産を適宜換金し、同金額から遺言者の債務や諸費用を控除して、尚残余がある場合、これを妻、長男、特定非営利活動法人〇〇に交付する。

清算型包括遺贈をもってしても、債務を引ききれない場合は、非営利団体が債務を継承することになります。

その場合、非営利団体は遺贈の放棄を検討する必要があります。
 
 
いずれにせよ、遺贈寄付を行う際は、残されたご家族への配慮が欠かせません。

せっかくのお気持ちを実現する為にも、前もって計画的に遺言の作成を進めましょう。

参考資料:遺贈寄付ハンドブック(改訂版)・全国レガシーギフト協会

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