発展途上国の支援で、日本人が活躍する事例6選!国際機関やNGO・NPOなど

世界では、依然として13億人が「貧困状態」にあります(UNDP調べ)。
また、貧困状態の半数近く(6億人)が、18歳以下の子どもだったり、サハラ以南アフリカや南インドでは事態が深刻だったりと、継続的な支援が必要です。

ただ、これまでに国際機関やNGOなどが国際協力に尽力してきた結果、以前より状況は改善しつつあるのも事実。
もちろん、日本にも国際協力を進める組織や団体が数多くあり、途上国の発展に貢献しています。

こうした途上国支援を行う国際協力を行う組織について、実際に活躍している日本人の様子を交えつつ事例をご紹介します。

事例1:国家レベルの大規模プロジェクトでインフラ整備(国際協力機構-JICA)

国際協力機構:Japan International Cooperation Agency(以下、JICA)は、日本の代表的な国際協力実施機関のひとつ。
外務省の関係機関として、主に政府開発援助(ODA)や海外協力隊の派遣などを実施しています。

主な事業内容ODA(技術協力、無償資金協力、有償資金協力)
海外派遣協力民間連携事業(インフラ整備、医療・保健設備など)
国際緊急援助
支援対象途上国の国家(国民)
主な活動地域アジア、アフリカ、中東、中南米、大洋州など
重点課題SDGsのうち10のゴール(飢餓・栄養、健康、教育、水・衛生、エネルギー、経済成長・雇用、インフラ・産業、都市、気候変動、森林・生物多様性)

JICAは、途上国の現地政府や企業を含む様々なパートナーと連携しながら活動を進めています。

例えば、タイでは空港と市内や郊外を結ぶ鉄道の駅や線路の建設、車両の提供を支援。
2021年の開業を目指し有償資金協力を行っています。

(出典:JICAのタイプロジェクト-Twitter )

他にも、ウガンダでは、サラヤ株式会社と現地の保健省と連携しながら、エボラウィルスへの対応について、41名の医療関係者に研修を行なっています。

(出典:JICAウガンダプロジェクト-Twitter )

また、JICAといえば青年海外協力隊で知られている「海外派遣協力」も主軸事業。
1965年に発足して以来、91カ国、43,000人以上の隊員を派遣してきました。

2018年からホンジュラスに派遣された佐谷さんは、現地の感染症を減らすために、保健推進員の育成を支援しています。

(出典:JICA HP

JICAには、大型インフラ整備プロジェクト(ハード)がある一方で草の根の小規模なプロジェクト(ソフト)もあります。
取り組む分野もSDGsをほぼ網羅しており、範囲の広い国際協力を実施しています。

事例2:世界190カ国で子どもの命を守る(UNICEF:国連児童基金/公益財団法人日本ユニセフ協会)

ユニセフ(UNICEF:国連児童基金)は、途上国の子どもの健康問題に取り組んでいる国連機関。
190カ国において教育問題、保健衛生、栄養改善などを通じて、貧困状態にある子どもの支援を幅広く行っています。

また、日本ユニセフ協会は、国連機関のユニセフのネットワーク組織。
主に、国内でのユニセフ本体の取り組みについて広報活動や募金活動をしています。
運営は、主に個人や法人の募金により成り立っているので、各国のユニセフ協会の役割は重要です。

主な事業内容子どもの生存と成長(ワクチンの予防接種など)
教育支援(学用品の寄付など)
子どもの保護水と衛生の改善(トイレの設置)
支援対象途上国の子どもたち
主な活動地域アフリカ、アジア、南米
重点課題保健、栄養、水と衛生、教育、暴力や搾取からの保護、HIV/エイズ、緊急支援

ユニセフは、途上国にそれぞれ地域事務所を構えて活動を展開。
本部や各国のユニセフ協会からの募金や支援を受けて地域事務所がプロジェクトを推進しています。

(出典:日本ユニセフ協会HP

マラウイ事務所では、サイクロンの被災地で子どもの権利を守るために活動している日本人ユニセフ職員がいます。
被災地の避難所では、毛布や蚊帳などが十分でなかったり、施錠ができない避難所などでは子どもへの性的暴力や人身売買の危険がありました。

マラウイ事務所で働く中谷さんは、子どもの保護の強化に向け「安全な遊び場」を現地の福祉事務所に設置。
他にも、避難所の保護担当者の育成をするなど積極的に取り組んでいます。

(出典:日本ユニセフ協会HP

主な2020年の実績として、栄養不良の治療を受けた子どもが730万人、3,790万人の子どもと青少年に教育支援を実施、2,800万人以上の子どもに学用品の寄付を行いました。
多くの子どもたちに支援が届いています。

(出典:日本ユニセフ協会HP

ユニセフは、子どもの支援に特化することで、より効果的に貧困問題に取り組んでいる組織です。

事例3:十分な医療が受けられない貧しい地域でも質の高い医療を(ジャパンハート)

ジャパンハートは、医療が届かない地域(途上国や僻地)に医療を届けることを理念とした日本発の国際医療NGOです。
創設者が海外医療の現場で感じた危機感がきっかけで2004年に設立。
現在ではアジアの地域を中心に6カ国で活動しています。

途上国などで治療行為を行うだけではなく、視覚障害者の支援、HIV孤児の子どもの教育なども実施。
近年は高度な医療の提供にも挑戦しています。

主な事業内容医療支援(途上国への医師派遣、高度医療の提供)
視覚障害者の支援
子どもの教育・自立支援(HIV孤児支援)
医療人材育成、小児がん家族支援
支援対象途上国、僻地などの医療が届かない地域
主な活動地域アジア
重点課題医療・高度医療、教育

創設当初から、車に医療器具を乗せて各村を周るという巡回診療・手術活動を継続しています。
ミャンマーでは、みんなが集まりやすいようにお寺を診療所として利用しています。
また、診察代や薬代は無料となっており、1日で300人ほど集まるそう。

(出典:ジャパンハートHP

2016年には、カンボジアに「ジャパンハートこども医療センター」を開設。
子どもから大人まで無償で医療を提供しています。

さらに、このセンターではカンボジアでは治療が難しいとされている「小児がん」の治療を強化しています。
日本から定期的に医師を招き、現地医師の育成や手術を支援。
これまでに23人の小児がんの子どもが入院しています。

(出典:ジャパンハートHP

こうした医療行為は、日本からのボランティアで参加している医師や看護師によって支えられています。
プログラムは短期・長期となっており、年間700人が活動に参加しています。

(出典:ジャパンハートHP

現在に至るまで、ボランティア医師・看護師は3,500人以上、途上国での治療件数は15万件を超えています。
日本国内での活動を合わせると治療行為は20万件にものぼります。

(出典:ジャパンハートHP

ジャパンハートは、「届かないところに医療を」という明確なポリシーを持ち、専門性の高い国際強力をしている組織です。

事例4:インドで「性的搾取を目的とした人身売買」がない社会を創る(かものはしプロジェクト)

かものはしプロジェクトは、インドで強制的に子どもが売られてしまわない社会を目指し活動する日本のNPOです。
2002年から、当時大学生だった3人で活動を開始。

当初より、カンボジアからプロジェクトを遂行してきた結果、売られる子どもが著しく減少しました。
現在は、インドに活動地を絞って「人身売買のない」社会を目指しています。

主な事業内容被害者女性のケア、現地取締機関の強化
支援対象女性、子ども
主な活動地域インド
重点課題人身売買

インドでは、貧困が原因でだまされて売春宿で強制的に働かされている女の子がいます。
かものはしプロジェクトでは、こうした人身売買の被害にあった女性のケアをしながら、セラピーや職業訓練を通じて人生を取り戻す機会を提供。
さらには、被害者が「サバイバー」として声をあげ、主体的に社会を変える取り組みができるようリーダーシップ研修もしています。

また、人身売買が行われている地域では、地元警察などの監視が機能していない可能性があります。
警察や裁判官、地元NGOを含めて取り締まりを強化するように働きかけています。

(出典:かものはしプロジェクトHP

なお、2002年から2018年まではカンボジアで「人身売買」のない社会作りをしてきました。
問題が減少してきたため、プロジェクト自体は終了。

以降は、職業訓練用だったコミュニティファクトリーが独立し、NPO法人SALASUSUでの活動が新たに始まっています。
カバンなどの手工芸がカンボジアの女性たちにより製作され、雇用の創出につながっています。

(出典:かものはしプロジェクトHP

これまでに、被害にあった女性(サバイバー)179人が社会変革のリーダーシップ研修を受けたり、329人の女性が心のケアを受けました。

インド現地のパートナーも13団体。
他にも、様々な成果が出ており、活動が着実に広がっています。

(出典:かものはしプロジェクトHP

かものはしプロジェクトは、設立当初から「人身売買」という問題に的をしぼって活動を続けている日本独自のNPOです。

事例5:途上国との公平な取引を行い雇用の創出を(マザーハウス)

マザーハウスは、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を理念とする社会的企業(ソーシャルベンチャー)です。
バングラデシュをはじめとする途上国に自社工場を設け、現地の素材や技術を活かし鞄や財布などの革製品を国内で販売。

国際機関やNGOとは異なり、支援プロジェクトを実施するのではなく、「事業を通じて」社会貢献を実現しています。

主な事業内容アパレル・雑貨の生産・販売
理念事業を通じて途上国の可能性を世界に届ける
主な活動地域バングラデシュ
重点課題雇用の創出

マザーハウスが途上国に自社工場を持つことで雇用の創出に。
自社工場なので、取引先からの一方的な契約や条件を押し付けられることもないですし、児童労働なども起こりにくくなります。

また、日本国内でも「途上国発ブランド」として新しい価値を提供でき、消費者の選択肢が増えます。
こうして、途上国と日本のそれぞれにとって価値がある「WINーWINな関係」を保ちながら支援を行うという新しいアプローチの国際協力を実現しています。

(出典:マザーハウスHP

現在、マザーハウスの商品は、国内では、33カ所の直営店やデパートで、 海外では台湾、香港、シンガポールにて販売。
生産地も、バングラデシュやネパールに加え、インドネシア、スリランカ、インド、ミャンマーと広がっています。

(出典:マザーハウスHP

なお、「事業を通じた社会貢献」という考えかたは、一般企業の間でもひろがりつつあります。
例えば、ネスレでは自分たちのCSR活動をCSV(Creating Shared Value)と称して、事業が社会課題の解決につながるか常に意識しています。

通価値の創造(CSV)は、ネスレの事業活動の根幹をなすものです。
ネスレは、株主の皆さまと社会に価値を創造することが、企業としての長期的な成功につながると考えています。
私たちの活動と製品は、ネスレの長期的な成功に寄与すると同時に、社会にプラスの変化をもたらすものでなければなりません。

ネスレHP

近年では、「社会貢献」を意識した事業展開を行う社会的企業が増えつつあります。
マザーハウスはその代表格であり、先駆的な企業のひとつです。

事例6:196の国家が加盟し、グローバルに経済開発や人道支援を行う(国際連合・国連開発計画)

国際連合(以下、国連)は、196カ国が加盟し、世界平和を目的とした組織です。
主要機関である総会や安全保障理事会などで国際平和および安全の維持について審議を行い宣言を行います。

2015年には、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)が採択され、各国での取り組みが始まっています。

国連には、総会や安全保障理事会の主要機関の他に専門機関があります。
経済開発(UNDP)、環境(UNEP)、保健(WHO)など分野ごとの専門機関が、途上国をはじめとする各地域で支援活動を実施。
専門機関には、専門性の高い人材によって分野ごとの調査研究が進められているほか、他団体(政府やNGO)との連携もしています。

UNDPは2013年4月から日本政府の拠出金(約17.4億ドル)のもと、プロジェクト・パートナーである熱帯医学特別研究訓練プログラム(TDR)とイノベーションによる国際保健を推進する非営利団体「PATH」と協働し、「アクセスと提供に関するパートナーシップ (ADP: Access and Delivery Partnership)」 プロジェクトを5年間の予定で実施しています。

UNDP HP

国連による途上国の支援は、小規模のものからイニシアチブやプラットフォームといったグローバルで統一した仕組みをつくるものまで幅広くあります。
特に、大きな仕組みづくりは、国連が得意とするところで関連する団体や組織をまとめて議論する場を提供したり、意識啓発や技術研修を実施しています。

UNDPとインドネシア政府農業省の協同事業である、インドネシア・パーム油プラットフォーム(Indonesia Palm Oil Platform、以下InPOP)を設立しました。
InPOPはパーム油業界の関係者を一同に集め・議論する場を提供し、さらに小規模農家の生産性向上、ISPOの浸透、森林の本来の価値の浸透を目指しています。
そのために、政府の小規模農家訓練機関の強化、農協の支援、企業と共同での技術導入や財政管理指導等、多岐の活動を行っています。

UNDP HP

一方、小規模のプロジェクトも運営されています。
リビアではUNMAS(国連地雷対策サービス)の日本人職員が、紛争地域での危険回避技術研修を実施しています。
人質事件に巻き込まれたときの対処法、被弾したときの止血法などを具体的に指導しています。

(出典:国連HP

国連は、社会開発、紛争解決、難民支援、国際裁判のほか加盟国首脳による総会の事務局など果たす役割が大きい世界規模の組織です。

まとめ:国際協力を進める組織は十人十色。ただ、依然として途上国には支援を待つ人が。

国際協力を実施している組織は、国連から小さなNPOまで幅広いです。
そして、それぞれの団体ごとの特徴や強みがあります。
しかし、規模にかかわらず、こうした国際協力を実施する組織の思いは同じ。
それは、途上国をはじめとする課題を抱えた人を支援したい気持ちです。

これまでに、それぞれの組織がアプローチしてきた結果、少しずつではありますが、状況は改善しています。
ただ、まだまだ解決するには時間がかかるのも事実なので、あらゆる組織や個人による継続的な支援が求められます。

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