募金活動等で見かけることの多いあしなが育英会。
親を亡くした子どもへの支援といえば、あしなが育英会の事を思い浮べる方も多くいらっしゃると思います。
「あしなが育英会」について、寄付をする前に押さえたい、団体概要や事業内容、寄付の使い道を解説します。
目次
あしなが育英会とは?親を亡くした子ども達を支える団体
あしなが育英会は、親をなくした子ども、親が働けない家庭の子どもを支える民間非営利団体です。
1993年に設立され、全収入の9割以上が寄付金で運営、奨学金事業、遺児ケア事業、海外遺児高等教育支援事業など行っています。
団体の設立経緯等について調べてみました。
交通遺児育英会から別団体として派生
あしなが育英会の略歴は以下の通りです。
1969年:交通遺児育英会設立(あしなが育英会の前身団体)
1993年:あしなが育英会設立(交通遺児育英会とは別団体として派生)
1999年:阪神大震災の遺児ケアを行うレインボーハウス(神戸)を建設
2006年:学生寮と遺児ケアを行う「あしなが心塾レインボーハウス」(東京)竣工
2011年:東日本大津波で被害に遭った遺児に、特別一時金を給付
2018年:給付型奨学金制度スタート
2019年:一般財団法人の法人格を取得(出典:一般財団法人あしなが育英会の歴史)
交通事故で家族を亡くした共通の経験を持つ、岡嶋信治氏と玉井義臣氏(現あしなが育英会会長)が設立した、交通遺児育英会という団体が、あしなが育英会の前身だったようです。
その後、「交通遺児育英会が人事に関する問題点を指摘されるようになり、その問題点に対立した玉井会長が、純粋な民間組織を創ろうと考えて設立されたのがあしなが育英会」のようです。
交通遺児育英会とあしなが育英会は、奨学金の支援対象が異なるのが大きな違いです。
- 交通遺児育英会:交通遺児が対象
- あしなが育英会:交通遺児を除く病気、災害、自死等で親を亡くした遺児、それらが原因で親が重度の障害を負った家庭の子どもが対象
一般財団法人として運営(2018年まで任意団体)
あしなが育英会は、1993年の設立から2018年までは法人格をもたない任意団体として活動し、2019年に一般財団法人という法人格を取得しています。
任意団体、一般財団法人共に寄付金控除を受けられる法人格ではないので、あしなが育英会へのご支援は、寄付金控除が受けられません。
奨学金支援を中心に、国内外の遺児のケア等の事業
あしなが育英会は、奨学金事業、国内遺児ケア事業、アフリカ遺児教育支援事業等を展開しています。
それぞれの事業の詳細について確認してみましょう。
事業1:奨学金支援
病気、災害、自死(自殺)など保護者を亡くしたり、保護者が著しい障害を負っている家庭の子ども達への奨学金事業です。
高校、大学、専門学校等に進学を希望している、経済的に苦しい遺児たちに奨学金を交付しています。
実績
2017年度の実績は、1,461人、21億円の貸与実績があります。
(出典:2017年度年次報告書)
貸与型と給付型がある
奨学金制度は、貸与型と給付型があり、ほとんどが貸与型で運営されています。
貸与型は返済が必要(無利子)な奨学金で、学生によって奨学金が異なります。
給付型は、返済不要の奨学金で、「給付型奨学金のおかげで進学できた」がアンケート回答者の3割を占める等、高い効果が出ているようです。
貸与型と給付型の実施割合は、奨学貸与金21億に対して奨学給付金は約1,000万円となっていて、貸与型が大半を占めています。
なお、奨学金額は、学生によって異なり、以下となっています。
- 高等学校・高等専門学校
国公立45,000円
私立50,000円 - 大学・短大
一般70,000円
特別80,000円 - 専修・各種学校
70,000円 - 大学院
120,000円 - 他、入学一時金等もあり
(出典:ウィキペディア)
奨学金の返還事業も実施
貸与型の奨学金が大半を占める現在、奨学金の返還率は90%台となっています。
そのため、奨学金事業には、返還事業も存在し、借用証書回収、長期滞納者対応、アンケート等も実施しているようです。
事業2:国内遺児ケア
国内遺児ケア事業は、以下で構成されています。
- 施設運営
継続的な心のケアを目的としたレインボーハウス、遺児進学のための学生寮「虹の心塾」「あしなが心塾」 - 企画運営
高校~大学1年生までの奨学金貸与者を対象としたキャンプ「つどい」等の企画
レインボーハウス
レインボーハウスは、阪神淡路大震災を機に遺児ケアを目的に設立された施設でしたが、2003年より対象を震災以外の遺児に拡大しています。
日本国内の神戸、東京、石巻市、仙台市、陸前高田市に施設があります。(海外にも一部、施設はあるようです)
サンドバックを殴って気持ちを発散できる「火山の部屋」
ぬいぐるみに囲まれた中でリラックスできる「おしゃべりの部屋」
という部屋があったり、同年代の遺児が2週間に1度集う「グループタイム」などのケアプログラムも実施されているようです。
「学生寮」あしなが心塾・虹の心塾
レインボーハウスと併設された学生寮は、あしなが心塾、あしなが虹塾と呼ばれています。
短大、大学生が対象で専門学生は対象外となっていて、寮費は2食つき月1万円程度で、最上級生以外は全員4人部屋に入るようです。
読書感想文や英語レッスン等のカリキュラムも実施されているようです。
つどい
「一生のなかまができる夏」をテーマに日本各地のあしなが奨学生と世界約30か国の学生がともに過ごすサマーキャンプ、つどいが開催されています。
2017年度は、大学生・専門学校各種学校奨学生のつどい、高校奨学生のつどいとして、奨学生と運営するスタッフ合計1400名規模で開催されているようです。
事業3:アフリカ遺児教育支援
アフリカ遺児教育支援事業は、2014年より開始。
世界最貧国群と言われているサハラ砂漠以南49ヶ国の各国から毎年1人ずつ優秀な遺児を世界の大学に留学させ、様々な分野で活躍するリーダーを育てる事業です。
上記事業を実現するために寄付者を集める両軸で運営されているようです。
支援方法は「あしながさん」など継続寄付と1回のみの寄付、遺贈寄付も可能
支援方法は、「継続のご支援」と「1回のご支援」とがあるので、選ぶ時にはご注意下さい。
遺産を社会的に有意義な事業に使って欲しいと思う方は、遺言による財産寄付「遺贈」を行うことも可能なようです。
継続寄付の種類
継続寄付を希望する人は、任意に寄付使途を選択可能で、あしなが育英会内部で寄付使途ごとに異なった呼称で呼ばれています。
- 日本の遺児への奨学金を支援する人「あしながさん」
- 東京、神戸レインボーハウスでの活動を支援する人「虹のかけはしさん」
- アフリカ遺児の高等教育を支援する人「アフリカ遺児のあしながさん」
継続寄付者は、カード決済、振込用紙、口座振替等から決済ができるようです。
1回のみの支援は、カード決済、振込用紙で
1回のみの支援を希望する場合は、カード決済、振込用紙でのご支援が可能なようです。
「あしながさん」「虹のかけはしさん」「アフリカ遺児のあしながさん」になる以外では、以下の支援が選べます。
- 東日本大震災・津波遺児への支援活動
- 海外遺児の支援
- がん遺児支援に特化したご寄付
遺贈寄付について
ご自身の財産を、病気や災害、自殺などで親を亡くした遺児の支援に役立てて欲しいとお考えなら、遺言書を作成し、受遺者をあしなが育英会と指定することで遺贈寄付を行う事が可能です。
金融資産をはじめ、土地・家屋などの不動産の遺贈も受付けているようです。
以上、あしなが育英会の事業と寄付の方法についての紹介でした。