最近は大規模な自然災害の発生が多く、その度に寄付という支援方法が注目されています。
被災地支援のために初めて寄付や募金活動を行ったという方も少なくないのではないでしょうか。
そうした災害支援に限らず、公的機関や公益活動を行う団体に対して寄付をすると、納める税金が減額される「寄付金控除」という仕組みがあることをご存知でしょうか。
ここでは、初めての方にもわかりやすく、寄付金控除の概要と、それを受けるために必要な手続きについてご説明します。
目次
寄付金控除とは?国税庁のサイトを調べてみると・・
そもそも寄付金控除とは、寄附を通して社会貢献活動や市民活動を支える人が増えることを目的とした税制上の優遇措置の一つです。
具体的には、特定の団体に寄付した額に応じて、所得税や住民税(自治体によって異なる)の一定額が減免される制度です。
国税庁のホームページでは
納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、「特定寄附金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。これを寄附金控除といいます。
このように書かれています。
そして、この「特定寄附金」とは、、、と用語を説明していくと、話がややこしくなってしまってハードルが高く感じられてしまうので、活用に当たって必要な確認事項と手続きを5つのステップにまとめてみました。
ステップ1:支援先団体が寄付金控除の対象になるか?をチェック
まず大切なのは、支援先の団体が控除の対象となっているかどうかです。
国や自治体への寄付も対象となりますが、法人の場合は注意が必要で、NPOであれば認定NPO、社団法人や財団法人であれば公益とつく公益社団法人や公益財団法人が対象となります。
その他には、社会福祉法人も対象となります。
よく「特定非営利活動法人」という法人名を目にしますが、それは一般的なNPO法人を指す名称であって、この名称だけでは認定を受けているかどうかは判断できません。
法人格以外の確認方法として、まずは支援先団体のホームページを確認してみてください。
対象となる団体のほとんどで、そのことがホームページに明記されていて、寄付を募るページには寄付金控除についての説明が載っています。
また、内閣府のホームページには認定を受けたNPOの一覧がありますのでそちらからも確認できます。
所轄庁認定・特例認定NPO法人名簿内閣府NPOホームページ
ステップ2: 支援方法が寄付に該当するか?をチェック
次に確認しておきたいのが、支援方法が本当に寄付金控除の「寄附」に該当するかどうかです。
最近は、古本や洋服を活用したリサイクル系の寄付やポイントでの寄付など、様々な支援するツールが登場していています。
ですが、種類によって寄附に該当するケースとしないケースがあるので要注意です。
主な判断のポイントは2つ、「領収書」と「対価性」です。
ポイント1 領収書
わかりやすい例として募金箱を考えてみます。
募金箱への寄付は誰がいくら入れてくれたかわからず、領収書が発行できませんので、寄付金控除の対象にできません。
また、買取業者を経由するリサイクル系の寄付の場合では、買取業者が買取額からさらに上乗せして寄付してくれるケースがあります。
そうすると、支援は手厚くなりますが、物品提供者からの寄附としては成立しない場合があります。
もちろん買取業者が買取額をそのまま支援先に入金し、寄附として領収書を受け取ることができるケースもありますので、事前に確認することをお勧めします。
ポイント2 対価性
団体を支援する方法としては、年会費を払って団体の正会員や賛助会員(協力会員)になるという仕組みもあります。
これについては、領収書が発行されても、同時に会員という地位によって何らかの特典や総会における議決権などが得られることが多くあります。
そのため、その支払いには対価性があるということで、いわゆる純粋な寄附とは認められないケースが多いのでご注意ください。
ステップ3:翌年1-2月に、領収書が郵送で届くか?を確認
最後に確認しておきたいのが、領収書の発行とその到着時期です。
ステップ4の確定申告で領収書が必要になりますので、きちんと発行されることと、申告期限に間に合うかどうかが重要です。
多くの団体は確定申告の手続きに合わせて1月後半〜2月中に前年の寄附の総額の領収書を出してくれるケースが多いです。
とはいえ、寄付をするとその都度発行される場合も少なくありません。
また、寄付の申し込み画面上で領収書が必要か確認される場合や、寄付者からの意思表示がない限りは発行されない場合などもあり、しっかりと確認しておいた方がいいでしょう。
加えて、クレジットカードによる寄付の場合、手続きから団体への着金までにタイムラグが発生します。
そのため、年内に払ったつもりでも団体への入金が年をまたいでしまうと、申告の対象は翌年に延びてしまいます。
年末押し迫ってからの寄付の際にはそうした点も注意が必要です。
領収書について、複数の事例を紹介した記事もありますので併せてご確認ください。
ステップ4:確定申告の書類を作成する
さて、ここからは確定申告の手続きに入ります。
確定申告は前年1年間の税額を確定させる手続きで、例年2月16日から3月15日までの1ヶ月間が申告期間とされています。
必要書類や手続きを解説した手引きなどは各自治体の税務署などで受け取れるほか、国税庁のホームページでもPDFでダウンロードできます。
申告手続・用紙国税庁
寄付金控除に申請には確定申告書と添付書類の2点が最低限必須となります。
確定申告書
行政関連の書類作成が面倒だと思う方にお勧めなのが「確定申告書作成コーナー」です。
オンラインで必要事項を入力して申告書を作成できるというサービスで、1ページに1項目ずつ入力画面が出るので、どの欄に何を記載するかあまり迷わずに済みます。
添付書類
確定申告書の他に、添付書類として領収書を専用の台紙に貼ります。
この添付書類台紙は国税庁のホームページからダウンロード可能です。
確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書等国税庁
領収書を貼る際に、書類に記載された支援先団体の名称や寄付金額などに誤りがないか、照合して確認しておきましょう。
また、書類の返還を希望することもできますが、いろいろ煩雑になりますので、手元に記録を残しておきたい方は郵送前にコピーをとっておくことをお勧めします。
次の年の参考になります。
ステップ5:税務署に提出する
最後は提出です。
提出方法は「持参」「送付」「e-tax」の3通りで、e-taxによる電子申告以外は、住所地等に基づいた所轄税務署に提出とされています。
所轄の税務署は国税庁ホームページ内の「税務署の所在地などを知りたい方」というページで調べることができます。
税務署の所在地などを知りたい方国税庁
送付の方法は、信書となるため、「郵便物」(第一種郵便物)又は「信書便物」と規定されていますので、普通に封筒に入れて郵便として投函すればいいということですね。
提出は3月15日という締め切りがありますので、くれぐれも余裕を持って準備して発送しましょう。
ちなみに、昨年私が申告した際には、期限ギリギリに提出して、4月中旬には還付金の振込がありました。
最後に:税金による「行政頼み」ではなく、意思による“応援の証”に
以上、5ステップを解説しましたが、いかがでしょうか。
一見するとややこしそうな制度ですが、知ってみればそこまで複雑な制度ではありません。
税金による行政頼みではなく、自分が必要と思った活動や、共感した団体の支援を通じて実現したい社会のために自分のお金を使ったという証となります。
ぜひ制度を活用して、減額分を再度応援したい団体に寄付してみてください。