世界の水問題とは?10分で分かる本当の問題と解決策|本要約「水の世界地図」

「水の危機と言われているけど、実際に何が問題なの?」
「水不足とか衛生面での問題とか、いろいろあってよく分からない・・・」
「水問題を解決するためには何が必要なの?」

こんにちは、寄付ナビの鈴木大悟です。
本日紹介する書籍「水の世界地図」は、このような疑問を持っている方向けの決定版とも言える内容になっています。

寄付先選びをお手伝いするサイトである寄付ナビが、なぜこの書籍を紹介するのか。
それは途上国支援と水問題が切っても切り離せない関係にあるからです。

そんな水問題を私自身が詳しく知らないままではいけないと思い、今回この「水の世界地図」を読んでみました。
実際にメモを取りながら読んでみると目からウロコの知識や驚きのデータの連続で、メモはA4用紙でなんと16 ページ分に!
その中でも特に重要だと感じたことをこの記事でお伝えしたいと思います。

本書の著者の1人には、国際的な問題に関してユニセフやWaterAid(水問題に取り組むNGO)、グローバル水パートナーシップなどへの寄稿実績もあるマギー・ブラック氏、そして監訳者は沖大幹・東京大学生産技術研究所教授と国内外の水問題の権威が名を連ねており、書籍としての信頼性は極めて高いと言って良いと思います。
本書は平成22年発行の第2版なので古くなっているデータもあるかもしれませんが、水問題への理解を深めるために役に立つことには変わりないと思います。

まずは本書の最大の主張をお伝えします。

水不足の本質は供給の減少ではなく、資源配分にある。
水が質的にも量的にも適切にかつ公平にマネジメントされれば、全てのニーズを満たすために十分な量の水がある。

驚きの内容ではないでしょうか。
私はとても驚きました。
それでは、この主張を頭に入れた上で、要約していきますね。

本書は全35章で構成されていますが、特に私の印象に残ったことを中心に以下のように再構成しました。

水に関する基礎知識

水の問題に入る前に、その前提として知っておきたい基礎知識を得ておきましょう。

地球上で利用可能な淡水の量とは?

・地球上には約13億8,600万km3の水が存在しており、帯水層のなかには枯渇しつつあるものもあるが、その量は決して変化しない*。
・大部分が塩水であり、淡水の量は2.5%にあたる3,500万km3にすぎない。
・淡水の3分の2以上(69.5%)は氷河、雪氷、そして永久凍土層として固定されてしまっているため、利用できない。
・人間が技術的に利用可能な30.5%の淡水のうち、ほんのわずかな量(0.4%)だけが地球表面に存在しており、残りの淡水(30.1%)は地下の帯水層の中に含まれている。
*水の総量は変わらずとも、再生可能な水資源量は変わると考えられている。

地球の表面の大部分が水で覆われているために地球はよく「水の惑星」と呼ばれており、水のおかげで地球に生命が誕生したと言われています。
特に日本に住んでいると水は無限に存在するように思えることもありますが、人間が技術的に利用可能な淡水の割合は驚くほど少ないですね。

私たちは水を何に使っている?

・取水される淡水の用途の内訳は農業用水が70%、工業用水が20%、生活用水が10%。日本の場合、農業用水が65%、工業用水が15%、生活用水が20%。
・私たちは食料や工業品を作る際に使われる大量の水を間接的に消費している。
・1キロカロリーの食物を生産するのに約1リットルの水が必要であり、特に多くの水を必要とする牛肉は、1kgの生産に15,500リットルの水が必要である*。(鶏肉は3,918リットル)
・紙1kgを生産するのに必要な最低水量は324リットル。
*牧草で育てる場合と穀物飼料で育てる場合とではこの値は変わってくる。

牛肉や紙を生産するためにこれだけの量の水が使われていることは衝撃的でした。
また、1日2,000キロカロリーの食事をすると2,000リットルの水を消費している計算になり、水を2リットル飲んだとしたらその100倍ですね。

普段の生活でも、水の消費量を気にしながら食材を選んだり、不要な紙を減らすように気を付けたいと思いました。

世界の水問題の現状は?水に関する様々な課題をチェック

ここでは、水不足、水の汚染や感染症、水と紛争、水と気候変動、といった切り口でまとめてみます。

水不足の最大の原因は供給の減少ではなく”資源配分”

・世界の水不足とは総供給水量が減少しているという話ではない。雨が降るところと人が住むところとの間にズレがあることが問題である。
・水が適切にかつ公平にマネジメントされれば、全てのニーズを満たすために十分な量の水がある。
・人口密度が高い地域では、河川や地下帯水層から持続不可能なほどの速さで取水している。
・乾燥地域や降雨が季節的に集中している地域では、灌漑農業のために膨大な水が利用されている。
・使われている水の5分の1は帯水層(地下水が蓄えられている地層)から取水されている。再補給されているものもあるが、帯水層の多くは再生不能ながら一方的に取水され続けている。

水不足は、地球全体の供給の絶対量ではなく、地域ごとで見た場合の需要と供給のバランスのズレの問題のようです。

実例の一つとして、インドと中国における水と人口に割合についてのデータが紹介されています。

世界の水と人口割合(2007年)

  • インド:人口16%・水3%
  • 中国:人口19%・水6%

インドには世界の水供給の3%しかないのに、世界の人口の16%が住んでいるために、水が不十分だということです。

本書ではまた、地球には全てのニーズを満たすために十分な量の水があるから需要をコントロールする必要はないと言っているわけではなく、「増え続ける人口、特に水を浪費するライフスタイルで暮らすことのできる人数の増加により、増えも減りもしない供給可能量の上限にまで水需要が伸びてきている」と警鐘を鳴らしています。

水不足の国は?アフリカなど深刻な地域

・約10億人が恒常的には飲料水にアクセスすることができず、特に干ばつと砂漠化に対して脆弱である。
・約25億人が衛生施設なしに暮らしている。
・2025年までに約20億人が水不足の地域に住むことになるだろう。

水のマネジメントが改善されなければ、水不足に苦しむ人口が約20億人まで増えるという予想は、深刻に捉える必要があると思います。
本書では、「自然の水循環によって最大限利用可能な水資源の量」を5段階に分けて、全ての国をその5段階に分類しています。

自然の水循環によって最大限利用可能な水資源の量(2003〜2007年)

分類 国の例 年間1人あたりの水資源量 m3/(人・年)
水供給豊富 アメリカ合衆国、オーストラリア、ブラジル、コンゴ民主共和国 10,000以上
水ほぼ十分 日本、タイ、フィリピン、メキシコ、チャド 3,000〜99,999
水不十分 インド、スペイン、イラン、ナイジェリア 1,700〜2,999
水ストレス シリア、エチオピア、デンマーク、パキスタン 1,000〜1,699
水欠乏 ケニア、モロッコ、アルジェリア、サウジアラビア、イエメン 1,000未満

同じアフリカ大陸の中でもコンゴ民主共和国のように「水供給豊富」に分類されている国がいくつかあるということでした。
しかし、全体で見ると、水不足の国は西アジアや中東、アフリカ地域に集中している傾向が見られました。

「水供給豊富」に分類されている国をさらに地域別に見ると話はまた違うようです。
例えばオーストラリアの場合、内陸地域のほとんどが砂漠で干ばつの被害を受けやすく、都市でも西部のパースは水不足が深刻化しつつあるそうです。
需要と供給のバランスのズレは、国単位、地域単位で細かく見る必要がありますね。

不衛生で汚い水

・開発途上国では下水の90%は未処理のまま河川に垂れ流されている。
・開発途上国では工場排水の70%は未処理のまま河川に垂れ流されている。
・有機廃棄物の80%を先進国が排出している。
・有機廃棄物は酸素呼吸なしでは分解されないため、魚や植物その他の水棲生物を破滅に導き、激減させている。

水不足とともに深刻なのが水の汚染です。
水の汚染の大きな要因として、人の糞便、工場排水が挙げられています。

汚染された水は私たち人間だけでなく、生態系全体、中でも特に淡水で暮らす生き物に影響を与えています。
下の表の通り、淡水環境は地球上で最も種の多様性に富むと考えられています。

相対的な種の豊かさ(1997年)

  • 海水:0.2
  • 陸上:2.7
  • 淡水:3.0

このような淡水種ですが、その個体数は1970〜2000年の間に50%に半減し、その絶滅の原因は多くの場合、水路内の汚染物質だそうです。

汚染された水によって引き起こされる感染症

・水汲みで入手した水は、飲用、洗濯、炊事、家畜などのために利用しなければならないため、衛生状態を保つための水の利用は後回しになることが多い。
・水は多くの疫病を媒介する動物の温床である。
・全世界で年間120万人がマラリアで死亡し、うち806,000人がアフリカである(2004年)。30秒ごとに1人の子どもがマラリアで亡くなっている。
・コレラ、腸チフス、赤痢のような下痢性疾患は、糞便が口を経由して伝染する典型例である。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて私たちは手洗いをすることの大切さを再認識しました。
水は安全であれば命を守ってくれる存在ですが、汚染されていれば感染症の原因となる命を奪う恐ろしい存在になってしまいます。

また、私たちは感染症が医療面や経済面で大きな負担をかけることを、新型コロナウイルス感染症を通じて学びました。
これは他の感染症についても同様です。
マラリアは、「発作ごとにのべ10人日分の費用がかかり、推計で熱帯アフリカの入院料の30%にも達しており、貧困層に多大な金銭的負担」をかけています。

水不足が紛争の原因にも

・約260の河川流域が2カ国以上にまたがる国際河川である。
・人口が増え1人あたりの取水量も増えるにつれ、河川水、地下水の開発をめぐる競争と紛争が増加する。
・多くの国では水供給の多くを他国から流入する河川水に依存している。河川がせき止められたり、流れが変更されたりすると紛争の火種となる。汚染物質の排出も、下流の住民が上流の住民に対峙する要因になりうる。

水は不足すると、石油と同様に紛争や対立の原因になってしまいます。
例えば「1993年、サダム・フセインがイラク南部の湿地を干上がらせたことによって50万人の命の糧が奪われた」そうです。

最近でも、アフガニスタンで用水路の建設に取り組んでいたNGO「ペシャワール会」の中村哲医師が殺害された背景には、用水路を巡る水利権が関係している可能性についての報道がありました。

イスラエル・パレスチナ紛争においても、水は重要な論点になっています。
イスラエルは「ヨルダン川上流の水の65%を取水し、南の乾燥している海岸地域で利用するためにパイプで水を送っている。そして、ヨルダン川西岸のパレスチナ人が掘削する井戸の数と深さを規制」しているそうです。

イスラエルとパレスチナの生活用水(2004年)

  • パレスチナ人:1日70リットル
  • イスラエル人:1日290リットル

気候変動の影響は?異常気象で水害も多発

・気温の上昇は水循環全体に作用する。
・気候変動は雨の降り方や川の流れ、淡水の供給に影響を与えると考えられているが、悪影響の方がどんな便益よりも上回るだろう。
・北半球の高緯度地域では今より雨が多く振り、中緯度地域では今より雨が少なくなる可能性が高い。
・2080年までに20%もの人々が洪水の危険性が増大する地域に住むことになる。

想像どおり、気候変動は水問題と大きな関係があります。
日本では台風の大型化に気候変動の影響があるとも言われていますが、今より雨が少なくなる可能性が高い地域もあるようです。

また、世界の淡水の「質」も悪化する可能性が高いそうです。
洪水は「病原体や残留農薬、工場から排出される重金属、そしてリンなどとともに土砂堆積物を川に流し込みますが、それらが温暖化でより暖かくなった水と混じることによってアオコのような藻の大量発生をもたらすであろう」と予測されています。

日本の水問題の現状は?米国&発展途上国の需要と比較

本書によると日本の水需要や利用データは以下の通りです。
比較用に先進国のアメリカ合衆国と途上国であるエチオピアのデータと並べています。

  日本 アメリカ合衆国 エチオピア 単位(対象期間)
水の依存性 0% 8% 0% (2007年)
改善された水資源 100% 99% 42% アクセスできる人口割合(2004〜2006年)
水使用量 693 1,654 77 m3/人(2000〜2005年)
各分野の水使用量 生活 20% 13% 6% m3/人(2000〜2005年)
農業 62% 41% 94%  
工業 18% 46% 0%  
ウォーターフットプリント 1,153 2,483 675 (2001年または最新データ)

世界の水問題を扱っている本書には日本に関する記述が多くないため、この先は別のソースで得た情報を紹介させていただきます。
本書の監訳者である沖大幹・東京大学生産技術研究所教授出所の情報がJICAのホームページに掲載されていました。

表の最後にあるウォーターフットプリントとは何のことでしょうか?

食料や工業製品に使われる”仮想”水も明らかにするウォーターフットプリントとは?

・現代社会のライフスタイルでは食料や工業製品に埋め込まれた”仮想”水(バーチャル・ウォーター)を大量に使っている。
・ウォーターフットプリントは、食料や工業製品、サービスに埋め込まれた水の量を定量化する概念である。
・自国製品に埋め込まれている水に輸入製品に埋め込まれている水を足し、輸出製品に埋め込まれている水を引いて算定する。
・水使用量の16%は輸出食料や製品の生産用である。

ウォーターフットプリントとは、私たちが直接消費する水の量だけでなく、食料や工業製品、サービスなどを通じて間接的に消費する水である”仮想”水の量も含めて水消費を定量化するための概念です。

第1章で牛肉1kgの生産に15,500リットルの水が必要であることを学びましたが、私たちは大量の水を間接的に消費しており、日本の場合、水の総消費量に占める仮想水の割合が60〜87%あるそうです。
”仮想”水のことも考えて生活したいですね。

ここでは日本の水問題として、仮想水の輸入を取り上げたいと思います。

中国、東南アジアから多くの仮想水(バーチャル・ウォーター)を輸入

・仮想水の年間総輸入量は640億m3/年で、日本の年間水使用量(取水量ベース)が約831億m3なので、77%の仮想水を海外に依存している。
・うち中国や中南米からの輸入量は、各22億m3/年、25億m3/年とヨーロッパからの輸入量(14億m3/年)よりも多い。
・日本への仮想投入水量を品目別に見ると、とうもろこし、大豆、小麦が50%以上を占めている。

仮想水を輸入することは、輸入元の国の水を私たちが間接的に使っていることを意味します。
もし輸入元の国で水不足が起きていれば、私たち日本人の消費がその原因の一部なのです。

輸入される仮想水の50%以上を占めているとうもろこし、大豆、小麦は、家畜のエサになる場合もあれば、人間が消費する場合もありますが、最終的には大部分が人間の食べ物になります。

仮想水の輸入を減らすためには、私たち1人ひとりが国産の食べ物を口にするように意識することができます。
肉を食べる際には、国産のエサを食べて育った動物の肉を食べることまで心がけられると理想的ですね。

水問題への対策や解決策とは?様々な対策をチェック

ここまでは、水不足の最大の原因は供給の減少ではなく”資源配分”であるという主張の元、水に関する様々な問題を学んできました。
それでは、水問題を解決するための対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

ミレニアム開発目標(MDGs)と持続可能な開発目標(SDGs)の達成に不可欠な水と衛生

・水と衛生の問題を解決せずに達成可能な国連ミレニアム開発目標はない。

まずは、水問題を解決するために国際社会がどのような目標を立てているか確認しましょう。

SDGsという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、2010年に出版された本書では、2015年に合意されたSDGsの前身であるMDGsに言及しています。
そこで本記事では、外務省やJICAのホームページも参考にMDGsとSDGsを比較しながらまとめていきたいと思います。

MDGsとSDGsの比較

MDGs SDGs
目標数 8ゴール・21ターゲット 17ゴール・169ターゲット
対象国 主に開発途上国 すべての国
達成期限 2015年 2030年
水に関する目標 目標7 環境の持続可能性の確保
7-C 2015年までに、
安全な飲料水と基礎的な衛生設備を
継続的に利用できない人々の割合を半減させる。
目標6 すべての人々の
水と衛生の利用可能性と
持続可能な管理を確保する。
(目標6の下に8つのターゲットがある)

そして本書では、MDGの8つの目標を達成するためには、水と衛生の問題を解決することが不可欠だとしています。

MDGsの8つの目標

  • 目標1 極度の貧困と飢餓の撲滅
  • 目標2 普遍的初等教育の達成
  • 目標3 ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
  • 目標4 乳幼児死亡率の削減
  • 目標5 妊産婦の健康の改善
  • 目標6 HIV/エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止
  • 目標7 環境の持続可能性の確保
  • 目標8 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

例えば目標3の「ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上」は、水と衛生にどのような関係があるか不思議に思われるかもしれません。

しかし、「女性が水供給を得やすいように改善し、水汲みに使う時間を減らせば、収入を生んだり家族を支援したりする仕事に注力できる」ようになるから、水と衛生がこの目標の達成のために重要だとしています。
水汲み労働に占める女性の負担を示す下の表を見ると、確かにその通りであることが分かります。

水収集における労働分担割合(2005-2006年)

  • 成人女性:64%
  • 少女:7%
  • 成人男性:25%
  • 少年:4%

最後に、MDGsの水に関する目標の達成状況も確認しておきたいと思います。

2015年最終報告
書における成果
・改善された水源から安全な飲料水を入手できる人の割合は、
76%(1990年)から91%(2015年)に向上。
1990年以降、26億人が新たに利用できるようになった。
・2015年、世界の人口の68%が改善された衛生設備を利用している。
1990年以降、21億人が新たに利用できるようになった。
残る格差・課題 ・地表水を使う人の90%が農村部で暮らしている。
・貧富の差がトイレの利用率の差と関連しており、
辺地に暮らす人や社会から疎外されている人ほど、
トイレが利用できない。

(出典:日本ユニセフ協会HP)

核心は水マネジメントによる水の公正な配分と水質管理

・水は全ての利用者によって効率的かつ平等に分かち合われるべき共有資源だという認識が必要である。
・これまで、水のマネジメントは飲用水の供給、公衆衛生、農業、鉱業、工業といった政府の部局ごとに分断されてきた。
・水を協調してマネジメントし公正に配分することが全ての水関連政策の核心であり、水マネジメントの新しい方法が見出されなければならない。
・淡水資源を全体的に扱うための統合的水資源マネジメントという急進的で新たな手法が導入された。

これが本書の最大の主張だと思いました。
まず大前提として、水がすべての人にとっての共有資源であることを理解することが大切です。
特に「水資源に対して少しも支配力を主張できない人々の権利が、水をめぐる全ての裁定では特に保護される必要がある」として、弱い立場に置かれている人々の権利を守ることを主張しています。

そして、これまでは縦割りで行われてきた水マネジメントを、分野横断的、統合的にマネジメントし、水質を維持しながら、公平に配分する方法を開発する必要があるのです。

本書ではその一例として、「統合的水資源マネジメント(IWRM)」という手法を紹介しています。
これは私にも理解が難しかったのですが、環境保護、貧しい人々の食料安全保障、ガバナンス、公平な料金体系といったあらゆる構成要素をカバーしながら、水をマネジメントする手法のことです。

ただし、統合的水資源マネジメント(IWRM)の実行は非常に難しく、その採用が広がるには時間がかかるだろうとしています。

そして固有の利害関係がある水問題は一般に各地域固有の問題と考えられており、(IWRMに限らず)「統合的なマネジメントや利用は、国家や国際間レベルよりも、地域レベルでの方が実際に実施可能であることが多い」として、インドでの成功事例を紹介しています。

インド・グジャラートのツンティ・カンカシア村の事例

成果
耕作面積 85ヘクタール(1991年以前)
→153ヘクタール(2001年)
年間の収穫回数 三期作まで可能に
収穫量 4倍に
年間家系収入 8,950ルピー→35,620ルピー

水マネジメントのための国際的な協調は可能!

・260を超える河川流域が複数の国によって共有(13の河川流域が5カ国以上で共有)されているため、その水を公平に利用するには交渉と合意が必要である。
・水に関する国際協調の方が通例で、例外は少ない。
・アフリカには政治的な国境で分割された河川や湖沼がもっとも多い。アフリカ大陸の地表水の90%は国際流域にあり、人口の75%が住んでいる。

これはとても意外でしたが、水に関する国際間の協力は紛争よりも多いそうです。
(ここで言う紛争とは武力によるものではなく、対立的な話し合いのこと)

水の協力と紛争(1948〜2008年)

  • 協力:1,743件
  • 紛争:816件

例えばインドとパキスタンは、間にあるインダス川流域の水を配分するインダス川流域水協定に1960年に合意していますが、「その後2度も両国は戦争に突入しそうになったにもかかわらず、水の放流を中止するぞといった脅しがこれまでなされたことはない」そうです。

水道事業の民営化は万能薬ではない

・1990年代、市場原理に基づいて運営すれば同時に水は保全され、効率は改善され、供給範囲は広がるだろうという前提で、(水道事業を含む)公共機関の民営化が推進された。
・開発途上国における公共サービスの民営化は、世界銀行とIMF(国際通貨基金)による構造改革プログラムや融資の条件となった。
・民営化や国際水会社との共同経営は容易ではなかった。費用を全て回収するために必要な料金値上げは実行不可能であり、貧困層だけでなく地方議会や地方政府からも抗議が噴出する。いくつかの国際水会社はすでに撤退している。

水道事業が民営化された場合、事業者は利益を上げるために価格設定をする必要がありますが、多くの場合、それは値上げを意味します。
一方で、水は「生命維持に不可欠な資源」であり、人々にとっての権利でもあるので、適正な価格で低所得者層も含むあらゆる層に供給される必要があります。

本書では水道事業の民営化の撤退事例や抗議活動の事例がいくつか紹介されていますが、民営化は万能薬にはならず、「水供給事業は他の商売と同じように扱うことは容易ではない」と結論づけています。

技術的な解決策だけでも不十分

・技術による解決策は、水供給への高まりつつある脅威に対処する役割を果たしている。
・世界には13,000基以上の海水の淡水化施設があり採用が拡大している。
・しかしその割合は小さく、世界全体の脱塩水量の推計値はいろいろあるが、最大の見積もりでも1日5,560万m3で、世界中の水利用のわずか0.5%に過ぎない。

本書では技術革新は水供給の解決策として重要な役割を果たしているとし、その一例として海水の淡水化技術を紹介しています。
しかし、その供給量に加えて依然として少ないことに環境負荷の問題を指摘しています。
電力を大量に消費することに加えて、化石燃料を使う傾向があると言うのです。

水問題を解決するために海水を淡水化することが、温室効果ガスを排出するという別の問題を引き起こしてしまうのは良くないですよね。

ただし、技術の進歩は早いので、本書が出版された2010年と現在では大きく状況が変わっている可能性があります。
技術的な解決策だけでは不十分であることに変わりはないかもしれませんが、技術が占める役割は大きくなっているかもしれません。

まとめ:私たちにできること3つ

ここからは、本の要約ではなく、本書を読んで私が考えた「私たちが水問題の解決に貢献するためにできること」です。

1)直接消費する水のムダ遣いを減らす

監訳者の沖大幹・東京大学生産技術研究所教授はあとがきで「本書が『節水せよ』と特に勧めているわけではない」、「公衆衛生維持、疫病の感染や蔓延を抑え、健康を維持するためにはむしろ積極的に水を使うべきなのである」と言っています。
例えば、新型コロナウイルス感染予防のための手洗いなどに必要な水は節水する必要はありません。

一方で、もしムダ遣いしている水があれば、それは節水できます。
東京都水道局によると、水を1分間流しっぱなしにすると12リットルの水が使われるそうです。
私も洗面、歯磨き、シャワー、皿洗いなどの際にこまめに止めて少しでも節水したいなと思いました。

また、これは節水とは違いますが、ペットボトルの水もできる範囲で水道水に切り替えられるかと思います。
そもそも、「多くの人々は瓶詰めの水か水道水かの区別はできないことが、目隠し調査で明らかになっている」そうです。
加えてペットボトルの水の「産業が環境に与える損害は強烈」であり、「水道水に比べると厳密には検査されていない」そうです。

2)間接消費する水を意識して暮らす

先述のとおり、「1キロカロリーの食べ物の栽培に平均1リットルの水が必要」とされます。
1日2,000キロカロリー分の食事をしていれば約2,000リットルの水が必要です。
しかし、これはあくまで平均であり、何を食べるかによって大きく変わります。

例えば生産のために大量の水を必要とする牛肉を鶏肉に1回切り替えるだけでも、たくさんの水が節約できます。

  • 牛肉200グラムの生産に必要な水:3,100リットル
  • 鶏肉200グラムの生産に必要な水:784リットル
  • 牛肉を鶏肉に切り替えることで節約できる水:2,316リットル

私は焼き肉が好きなので牛肉を食べるのをやめることはできそうにありませんが、時々、牛肉を鶏肉に変えることくらいならできると思います。

また、何か印刷しようと思った際にも、「紙1kgを生産するのに必要な最低水量は324リットル」だということを思い出して、本当に印刷が必要か、自分に問い直したいと思います。

3)水問題の解決に取り組む団体に寄付する

最後は、途上国を中心に水問題の解決に取り組んでいる団体への寄付です。
私も寄付しているオススメの団体を2つ紹介させていただきます。

ロシナンテス

ロシナンテスHPより引用

日本発祥のNPOです。
病気の予防には安全な水が不可欠だと考えて、医療の提供に加え、給水所も建設して安全な水を提供しています。

創立者であり代表の川原尚行医師は、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取り上げられたことがあります。

ロシナンテスでは、月1,000円からの寄付で「水」と「医療」を共に届ける「チーム・ロシナンテス」のメンバーを募集しています。
日本人が設立したアフリカで活動する団体は多くないので、私もぜひ応援したいと思い、「チーム・ロシナンテス」のメンバーに加わりました。

> 団体公式サイトで詳しくみる
寄付金控除の対象団体です

 
私がロシナンテスに継続的な寄付をしようと思った理由は、下記の記事で詳しく書いています。
ぜひ、合わせてお読みください。

ロシナンテスへの寄付「チーム・ロシナンテス」に加入した3つの理由

ユニセフ

日本ユニセフ協会HPより引用

国連機関であるユニセフは、医療・保健・衛生・教育など多岐に渡る分野で、世界190の国と地域の子どもたちを支援しています。

水・衛生の分野では、給水所の設置のほか、手洗いなどの衛生習慣の普及、トイレの設置などの支援を行なっています。
2019年だけで3,530万人に緊急給水を行うなど、大規模な活動が特徴です。

ユニセフ・マンスリーサポート・プログラムに参加することで、世界中の子どもたちに安全な水を届けるお手伝いができます。

> 団体公式サイトで詳しくみる
寄付金控除の対象団体です

ユニセフ・マンスリーサポート・プログラムについては、詳しくはこちらの記事でまとめていますので、よろしければお読みください。

ユニセフのマンスリーサポーターとして私が世界の子どもを支援する3つの理由

この記事を通じて、水問題や対策について多くの学びがあったかと思います。
「知れて良かった」で終わらせずに、ぜひ今日をきっかけに、何か一つでも水問題の解決のために行動していただけるととても嬉しいです。

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