難民問題とは?5分で簡単に分かる、「難民」の定義と世界の現状

近年ニュースでもよく取り上げられる「難民問題」。
一口に難民問題と言ってもシリア難民、ロヒンギャ難民、南スーダン難民など様々な人たちが難民と呼ばれています。
難民とはどういった人たちのことで、何が問題になっているのでしょうか。
要点をまとめてみました。

そもそも難民とは?わかりやすいポイントと定義

「難民」とはどういった人たちを指すのでしょうか。

シンプルに条件は2つ

ポイントとなる条件が2点あります。

①「移動を強いられた」

②「国境を越えている」

この2点が両方とも当てはまる人々を難民と捉えるのが、もっともシンプルでわかりやすい考え方です。
国境を越えただけでは、大きな枠組みでの「移民」であり、移動が強いられることで難民とみなされます。
また、移動を強いられたとしても、国境を越えない人々は「国内避難民」と呼ばれ、難民とは呼ばれません。

参考

難民と移民の違いとは難民支援協会

難民条約における定義

ポイントを2点挙げましたが、1951年の「難民の地位に関する条約」において明文化された定義があります。

人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者

(UNHCR駐日事務所WEBサイトより)

この中では迫害が主な理由として書かれていますが、現在では紛争の危険から逃れて難民となるケースが多くなっています。
そのため、紛争から逃れた人々に対して、多くの国において厳密には条約上の難民とはみなされなくても人道的観点から広義の難民として支援するという考え方が広く定着しています。

参考

難民条約についてUNHCR駐日事務所

世界の難民の現状は?中東やアフリカなど、5年間で1.5倍に

現在どのくらいの数の人たちが難民となっているのでしょうか。

国連難民高等弁務官事務所(以下UNHCR)が毎年発表している統計によれば、最新の2017年末時点のデータで、約2,540万人の人々が難民として自国を離れて生活しているとされています。

参考までに、IOM(世界移民機関)の推計による、同時期の移民全体の数が2億5,800万人ですので、生まれた国以外で生活する人の約10人に1人は難民という計算になります。

また、UNHCRの統計では、国境を越えていなくても難民と同様に移動を強いられている国内避難民は約4,000万人にのぼります。
難民と国内避難民、さらに庇護申請中の方々310万人を併せると約6,850万人が住んでいた場所を追われていることになります。

近年の著しい増加

2012年からの直近5年間は増加の一途を辿っており、1年間で300万人近く増加している年もあります。
この5年間の合計で、難民の人数は約1,000万人増え、1.5倍以上に膨れ上がっています。

参考

数字で見る難民情勢(2017年)UNHCR駐日事務所

難民の発生国

では、国別で見てみるとどうでしょうか。

2017年末時点の主な難民発生国UNHCR Global Trends2017より
 1位:シリア       (630万人)
 2位:アフガニスタン  (230万人)
 3位:南スーダン     (240万人)
 4位:ミャンマー     (120万人)
 5位:ソマリア      (99万人)

シリアは、かつてはイラクなどからの難民を受入れる側の国でしたが、8年前に始まった内戦が長期化し、今では世界で一番の発生国となっています。

アフガニスタンとソマリアは長期間にわたって発生国の上位に居続けており、難民問題の長期化が周辺の難民受入国の疲弊にも繋がっています。

南スーダンとミャンマーは、それぞれ近年起こった内戦の激化や、ロヒンギャ問題によって急激に難民の人数が増加しました。

難民の受入国

難民のほとんどは陸路で隣の国に逃れるため、発生国と国境を接している国々が多くの難民を受け入れることになります。

2017年末時点の主な難民受入国UNHCR Global Trends2017より)
 1位:トルコ      (350万人)
 2位:パキスタン    (140万人)
 3位:ウガンダ     (140万人)
 4位:レバノン      (99万人)
 5位:イラン       (97万人)
 6位:ドイツ    (97万人)
7位:バングラデシュ (93万人)

トルコとドイツを例外として、受入国の多くが開発途上国とされる国々で、難民全体の約85%を途上国が受け入れています。
自国も決して豊かではない中で、多くの難民の保護を請け負うことは大変なことです。
元々の規模が大きくないレバノンに至っては、人口の6分の1に当たる人数の難民を受け入れています。

「難民問題」は何が問題か?国家と個人の視点から、整理しました

難民問題という言葉もよく目にしますが、非常に多様な問題をひとまとめにしている言葉です。
少しわかりやすくするために、国家と難民に分けて、問題を整理してみます。

問題1:国家の視点から難民問題

難民の前提の一つは国境を越える事ですから、国家の問題として難民問題が語られる事が非常に多いです。

発生国

まず問題となるのは発生国の問題です。
本来保護すべき自国民を守れない、あるいは逆に脅かす国家の問題点はよくニュースとして取り上げられます。
国内の対立構造だけでなく、他国からの介入や歴史的な背景、経済問題や気候変動の影響など多岐に渡り、複合的なケースも多くあります。

受入れ国(第一庇護国:最初に逃れた先)

発生と同時に問題となるのは受入れ国の問題です。
主な受入先となる隣国の方針は、逃れてきた人々の命運を左右するため注目されます。
また、受入れ国としては内政問題化するリスクもあり、国民の関心も非常に高まります。
長期間設置してきたキャンプの閉鎖を決める国もあれば、居住地を提供して非常に寛容に受け入れている国もあります。

第三国

最後に第三国の問題があります。
発生国と受入れ国以外の国々がどのように負担を分担するかも大きな問題の一つです。
ドイツのシリア難民受入れについては、国内世論を二分したり、経由国でトラブルが生じるなど、様々な問題が起きました。
日本は残念ながら国際的な水準で考えると受入れには消極的と見られても仕方のない状況です。

問題2:難民となった人たち個人の視点から問題

短期的に:難民キャンプなど

難民問題として当事者の人々に焦点があたり易いのが、受入れ国内の難民キャンプの状況です。
受入れ体制の整備が追いつかないと、食糧や水といった生きるために必要な物資が不足したり、衛生環境が劣悪だと感染症の拡大といった問題が生じます。

一方でキャンプに入りきらない人たちをどのようにサポートするかも問題です。
トルコにおけるシリア難民の9割以上がキャンプ外で生活しており、その実態を把握するだけでも大変なことです。

長期的に:教育や労働、言語・文化など

難民生活が長くなってくると、生じる問題も細分化してきます。
子どもであれば教育、大人であれば労働の問題が出てきます。
そしてそれらの前提として、言葉の問題も大きなハードルの一つとなります。
また、病院や行政サービスへのアクセスなど、難民の立場で保障されている権利を正しく行使するための支援も必要となってきます。

受入れ地域の住民との軋轢も大きな問題です。
それは最初の受入れ地域だけでなく、第三国での定住の場合も同様です。
難民の人たちが現地の言葉や習慣に適応するだけでなく、受入れる地域の住民の側にも多様なバックグラウンドを持つ人々に対する理解と許容が求められます。

最後に:難民の問題は他人事ではありません

難民の定義や現状、難民問題の多様さや複雑さについて解説しましたが、それらを知ってもなお、他人事のように聞こえるかもしれません。

ですが、日本でも2019年の1年間で10,375件の難民申請があり、44名の方が難民認定を受けています。
決して遠い国の話ではありません。
もちろん日本にいながら国内外の難民を支援する方法もたくさんあります。
この機会に他の関連記事などにも目を通してみてください。

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