今も、アフリカやアジアを中心に、5歳から17歳までの子どもたちが、農園や工場で劣悪な環境の中、学校へも満足に行けず働き続けています。
その数、約1億5200万人。
10年前に比べれば、減少傾向にあると言われていますが、まだまだたくさんの子どもたちが児童労働に従事している状況です。
一体、なぜ児童労働が起こってしまうのでしょうか。
家が貧しいから?
子どもに教育など必要ないから?
児童労働の原因は、複数ありかつそれぞれが関係し合っています。
ここでは、根本的な原因、社会的原因、経済的原因、政治的原因について紹介します。
目次
原因1「貧困」:低所得国では、家計を支える子どもも
児童労働の根本的な原因は、子どもが働かなければならないほど貧困であるためです。
国際労働機関(ILO)によれば、低所得国にくらしている子どもの約20%が児童労働に従事しているとのこと。
また、児童労働に従事する子どもの地域間を比較しても、高所得国が約1%であるのに対し、低所得国は約43%と最も高いです。
貧しさが児童労働の根源であることがわかります。
具体的な事例を見てみると、家族の大黒柱を失い、残された家族を支えるため、子ども(年長者など)の労働が必要になってしまっているケースがあります。
ビシャルくんの仕事場は採石場でした。
7歳の時に父親を失った少年は残された家族のために危険な仕事を続けていました。
(グッドネーバーズ ・ジャパンwebサイト「ビシャル10歳。仕事場は危険な採石場」より)
他にも、貧困が原因で最悪な形態の児童労働と言われる「危険有害労働」に陥ってしまうことも。
両親には仕事がなく生活はずっと困窮していました。
ある日「いい働き口を探してあげる」という言葉に騙されて地元の村の男と2人と一緒に電車に乗り、プリヤは自宅から1500キロ離れた売春宿に売られました。
(かのものはしプロジェクトwebサイト 「プリヤは「良い仕事があるよ」とだまされて売られました。」より)
原因2「社会」:児童労働を当然視する文化や差別も
子どもは家族内の仕事を手伝うことが「当然」と思う社会があるため、児童労働は引き起こされています。
ILOによれば、児童労働に従事する子どものうち約70%が家族経営の農場や企業などで働いているそう。
家族が教育を受けさせるよりも、子どもが働くことを期待していることがわかります。
また、世界の地域によっては、未だに「女の子」には教育が必要ないなど、古い伝統的な考え方を持つ家庭があるため、児童労働につながることがあります。
特に、インドでは結婚支度金を女性が用意するという風習があります。
学歴のある子は支度金が高くなるので、豊かではない多くの親が教育を受けさせることを躊躇してしまいます。
インドなどのように、古い社会の差別が児童労働の原因の一端であることがわかります。
コットン畑で女の子がたくさん働く背景には、女の子に対する教育の考え方もあります。
インドのこの地域には、結婚持参金(ダウリー)という習慣があり、親が女の子への教育をためらうのです。
結婚持参金は、結婚時にお嫁さんの家が用意するもので、教育を受けた女の子は持参金の額が高くなります。
この結婚持参金を用意するために、子どもを数ヶ月間毎日コットン畑で働かせる契約をするのです。
(ACEwebサイト「農薬まみれのコットン畑で働くシャンティちゃん(インド)」より)
原因3「経済」:グローバル化のもと、安価な労働力を求める圧力
急速なグローバル経済の発展に伴い、競争が激化。
少しでも安い商品の製造を追求した企業が安い労働力を求めたため、児童労働が引き起こされました。
過去には、1990年にアメリカのナイキ社がベトナムの工場で、児童労働を含む搾取があると、NGOから指摘を受け、不買運動にまで発展しました。
その後も、GAPやスターバックスなどのグローバル企業が指摘に合ったため、2000年には、国連が主導して多国籍企業の行動指針「国連グローバルコンパクト」が発行されています。
2014年には、NHKのクローズアップ現代で、ヤンゴンの工場での児童労働とグローバルサプライチェーンとの関連を指摘する内容が放送されました(NHKクローズアップ現代webサイト)。
グローバル経済(サプライチェーン)が効率化を進める一方、児童労働という歪みを発生させていることがわかります。
原因4「政治」:国内規制や義務教育など、政府の対策が不十分
国家の労働基準や教育などの政策が十分に機能していないため、児童労働が引き起こされることがあります。
ILOの報告によれば、児童労働の撲滅を進めるには、次の政策の徹底が必要としています。
・労働基準の徹底:
就業の最低年齢を規定した国際労働基準法は世界170カ国批准。世界の80%の子どもカバーしているので、今後は、運用を徹底する必要がある。
・教育の徹底:
学校で学ぶことが働くことよりも優先されるように、無償で義務教育を提供する必要がある。
・社会保護の徹底:
貧しい家庭が子どもを働かさせないように、親に対する社会保護を徹底する必要がある。
児童労働の背景にある、貧困、社会・文化、経済を考慮した政策の制定および運用の徹底が重要であることがわかります。
児童労働の原因は複雑。子どもの状況に応じた支援を
児童労働の原因は、貧困・社会・経済・政治と多面的です。
そして、それぞれが複雑に絡み合っています。
家が貧しい家庭では、「子どもの労働」で家計を助けてもらうことを期待。
貧しくなくても社会的に子どもが親を助けて当たり前、女の子はそもそも教育いらない、という家庭では、必然的に児童労働に従事。
一方、子どもを不法に雇ってしまうのは、雇用主がグローバル経済での価格競争から、少しでも廉価な人件費を追求するため。
児童労働が頻発するものの、国家の政府が十分に機能していないところでは、規制も進まない。
このように、児童労働は従事する子どもの数だけその原因も異なります。
国際社会(NGO・NPOなど)が立ち向かう
複雑な原因によって引き起こされる児童労働。
根絶するためには、どれかひとつの原因にアプローチすればよいという簡単な話ではありませんし、時間もかかります。
子どもの置かれた状況に応じながら、その子に寄り添った支援が今求められているのです。
こうした状況を打開すべく、国際機関を始め世界ではNGO・NPOが現地において児童労働撲滅に向けた活動をしています。
日本も例外ではありません。
懸命に、途上国での活動を通じて児童労働に立ち向かう団体があります。
わたしたちにできること
では、児童労働の撲滅に向けて、わたしたちひとりひとりができることは何でしょうか。
- 日頃の生活の中で購入しているものが児童労働によって作られたものかどうか確認する。
- 児童労働に立ち向かうNGO・NPOの活動を支援する。
ひとつひとつは小さな力かもしれませんが、集まれば大きなうねりとなり児童労働の改善に貢献できるかもしれません。
こうしている間にも、家計を支えるために農園や工場で働き続ける子どもたちがいます。
一方、グローバル経済の恩恵を受け、わたしたちは便利で何不自由ない生活を送っています。
世界の未来ある子どもたちのために、わたしたちは無責任でいられるのでしょうか。
支援を待つ子どもたちにできることを続けていきましょう。
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