引っ越し、進学、断捨離など、使わなくなったものを捨てるのはもったいない、せっかくだから途上国や被災地へ寄付したい!
こう考える方も多いのではないでしょうか。
ただ、寄付先で「中古品」が本当に役に立つのかよくわからない部分もありますよね。
また、どこにどのような物を送ればいいのかもあまり知られていないことも。
今回は、物の寄付がどのように役立てられているか、その実例と日本からの送り方、さらには寄付の問題点を交えながら紹介します。
目次
途上国や日本(被災地)で物の寄付が役立っている実例
途上国と被災地でどのように役立っているのかご紹介します。
実例1:途上国(難民キャンプなど)で物資の寄付が役に立った例
途上国の紛争地域では、緊急的に物資の支援が求められます。
難民キャンプをはじめ、紛争地域では生活必需品を手に入れるのが困難な状況の場合が多いです。
身近にある文房具や衣料など、中古品であってもすぐに使うことができるので、生活再建に役立ちます。
主に衣料を途上国に寄付している「日本救援衣料センター」によれば、紛争地域の拡大や気候変動による自然災害などにより、寄付の要請は高まっているそう。
なお、同センターは2019年11月時点、すでに950トンを超える衣料を寄付しています。
(出典:日本救援衣料センターHP)
また、紛争地域以外でも孤児院などの福祉施設からも物の寄付の要請が。
運営資金が限られる組織にとって、すぐに活用できる衣料や文房具などは重宝するようです。
(出典:日本救援衣料センターHP)
なお、ランドセルなど日本特有の物を寄付しても、途上国(紛争地域)では喜ばれることも。
ランドセルを寄付するジョイセフによれば、デザインが象徴的なので子どもの通学の動機となり、教育を受ける子どもが増えるそう。
ランドセルを受け取ることで、学校で教育を受ける機会が生まれ、日本のランドセルは、アフガニスタンの子どもたちの人生に大きなチャンスを与えてきました。
ジョイセフHP
物によっては「教育機会の向上」という新たな効果も期待できます。
実例2:災害時に物資の寄付が役に立った例
東日本大震災以降、日本でも各地で地震や豪雨などの自然災害が多発。
救援物資が被災地に届けられる様子はテレビなどのメディアでも報道されてきました。
復旧から生活再建に至るまで、被災者にとって支援物資は役に立っています。
皆様のおかげですごい量の物資が集まってますありがとうございます。
— 貴朗 (@takya4567) July 8, 2018
トラックの追加段取りをさせてもらって積込み完了したら向かいます!
セブンイレブン バイパス豊成店のオーナー様も場所の提供ありがとうございます┏○))
岡山市南区豊成3-4-104#岡山 #災害 #支援物資輸送 pic.twitter.com/M8BmQiVMi8
(出典:物資支援を受けた方-Twitter)
ただし、被災地への支援物資は、主に避難所での生活に使用されることが多いため、衛生用品の需要が高くなります。
そのため、中古品よりは新品の物が求められる可能性が高いです。
(出典:お礼報告−福岡県早良商工会議所HP)
どうやって送る?古着や靴、文房具の寄贈を受け入れているサービス・団体まとめ
寄付する物ごとに寄付を受け付けている団体例を紹介します。
団体1:ランドセル、文房具などを寄付する(ジョイセフ)
ジョイセフは、アジア・アフリカで妊産婦や女性の健康・生活向上に向けた活動をしている日本生まれの国際NGOです。
ランドセルや文房具をはじめとする物資の寄付を受け付けています。
ランドセルを届ける活動は2004年から始まり、21万人の子供たちの手元に。
文房具もこのランドセルと一緒に、途上国の子どもたちに贈られています。
ランドセルや文房具の寄付の際、海外輸送費のコストがかかります。
ジョイセフでは、例えばダンボール一箱あたり3,000円もしくは書き損じはがき76枚の寄付を依頼し、輸送費として活用しています。
何をどのくらい送付したいのか、送付前には費用がどのくらいかかるのか、予め確認するとトラブルが少ないかもしれませんね。
(出典:ジョイセフHP)
なお、文房具以外にどんな物資を募集しているかについては、HPで確認できます。
箱にまとめてジョイセフに郵送する、委託業者に直接送る(換金され寄付になる)など、物によってそれぞれ「送り方」が異なりますので注意が必要です。
(出典:ジョイセフHP)
団体2:いらなくなった洋服を寄付する(日本救援衣料センター)
日本救援衣料センターは、1982年から途上国や紛争地域の難民へ衣服を届けている日本のNPOです。
個人や法人から要らなくなった衣服を集め、2018年までに、86カ国・18,000トン以上もの衣服を途上国へ届けています。
寄付された衣料は、日本救援衣料センターで保管・検品・梱包されたのち、途上国へ輸送されます。
なお、日本救援衣料センターでも、衣料品10㎏までにつき、1,500円を目安として輸送費の寄付をお願いしています。
受け入れ品目は定められており、「新品」だけを受け付ける場合も。
痛みが激しいものも受け付けていないので、団体の確認の手間を省くためにも、送付前に確認しておきたいですね。
なお、日本救援衣料センター以外にも衣類の寄付を受け付けている団体があります。
詳細については以下の記事を参照ください。
その物資は役に立っている?物の寄付による問題点(送る前の注意点)を調べました。
物を寄付する行為はプラスの側面だけではありません。
実は、思いもよらないマイナスのことが現地で起こることも。
物の寄付により引き起こされるであろう問題を紹介します。
注意点1:物を与えすぎることで依存を助長しないか
災害や紛争といった緊急事態のときは、生活必需品を含めあらゆるものが手に入らず、物の寄付(物資支援)が一時的には効果を発揮することも。
しかし、いつまでも物を与え続けていては頼るばかりになり、自立や再建にはつながりません。
ワールド・ビジョンによれば、過去の経験から物の支援だけでは課題の解決にならないとのこと。
現場の課題を把握して必要な支援を段階的に取り組むことが必要だそう。
(出典:ワールド・ビジョンHP)
本来、支援とは現地の人々が自立して貧困・困窮状態から抜け出すためのお手伝いです。
「自立」ではなく「依存」を引き起こすのでは、本質的な支援とは言えません。
自分で努力しなくても他人から物が与えられるのでは彼らが援助に頼ってしまい、彼らの自立を妨げることになります。
関西NGO協会HP
特にその物資援助が一時的なものだとしたらどうでしょう。
それは送り手の自己満足で終わってしまいはしないでしょうか。
くわえて、現地の過剰な物の寄付は、地場産業の衰退を引き起こすことも。
グローバルニュースビューによれば、サハラ以南アフリカでは世界から衣料の寄付が集まり、余った衣料が古着(服)として安価に転売されているそう。
なんと、市場の3分の1は、寄付された古着(服)で、地場の衣料産業は厳しい状況に追い込まれており、廃業も続出とか。
必要とする人々に届いてほしいという思いで寄付された古着でもビジネスのための「商品」になってしまっているのだ。
グローバルニュースビューHP
集められた古着は数が多すぎるというような理由で貰い手がなく、使われないまま残ってしまう場合があり、それらは廃棄処分されるか、またはそのような古着を買い取る専門の業者が存在する。
廃業が続くことで地場産業が成長努力をしなくなる可能性があります。
過剰な物の寄付によって、地場産業も中古衣料に依存し続けてしまうことが懸念されます。
注意点2:現地とのニーズに即しているか
途上国の気候条件や難民キャンプの現場などをきちんと把握していないとせっかく物を寄付しても無駄になってしまうことがあります。
今必要としている物資は何か最適化できていないと支援にはつながりません。
現地のニーズよりも供給側の都合が優先されることがあるのだ。
グローバルニュースビューHP
それにより、冬でも気温の高い国にコートが送られたり、体型の違いなども含め、必要なサイズが揃っていなかったりするケースもある。
また、難民に迷彩柄の服が送られることもあり、それを着ている人が一見軍人に見えてしまったり、武力紛争を経験した国ではトラウマを生んでしまったりなど送る側からはくみ取るのが難しい問題も発生する場合がある。
日本の被災地への物資支援でも類似する問題が見られました。
復旧の段階に応じて、最初は布団や衛生用品など生活必需品から学用品、食器、キッチン用品などニーズは移り変わります。
また、欲しいタイミングと届くまでに時間のギャップがあり、被災者の手元に来たときにはもう必要なくなっている場合もあるのです。
被災地に届くまでに数日かかります。
レスキューストックヤードHP
その間に被災地で必要なものは変わってしまいます。
受け取り手がいなくなった物資は、被災地で不良在庫になります。
支援を必要としている人たちのニーズを考慮しないで寄付すると、結果として「不用品」をわざわざ遠くに捨てにいくことと同じになることも。
使われない支援物資を廃棄処分するのは現地の人であり、さらなる負担になってしまいます。
物の寄付が有効に活用できるよう届ける先の現状を把握したいものです。
なお、相次ぐ自然災害の発生を受けて、日本では被災地と物資支援をマッチングする仕組みが誕生しています。
2018年の西日本豪雨から稼働を開始し、被災地へニーズに即しつつ適時に物資を届けているようです。
(出典:Yahoo! HP)
注意点3:輸送や管理の負担になってないか
物を寄付するためには、集荷・梱包・保管・輸送・管理・配布と多くのコストがかかるだけでなく労力もかかります。
特に途上国に輸送する場合には、関税がかかることもあるので一層の労力がいります。
人数の限られたNGO・NPOなどでは、労力が足りずに物を届けるのが難しい状況にあり、物の寄付を受け付けていないところがあります。
また、費用面から受け付けないところもあります。
過剰な物の寄付は、NPOなど支援者にとって管理や輸送の負担となる懸念があります。
(出典:ジャパンハートHP)
それでも物品を寄付したい、どうすればよい?買い取りサービスの活用で寄付に
物を直接渡すことにはマイナスの側面もあります。
でも、やはり捨ててしまうのはもったいない、何か支援につなげたいという場合、リサイクル品として換金し、寄付につなげるという方法があります。
物の持ち込み方法ごとに寄付につながるリサイクルを紹介します。
ネットで申し込んで送る方法
中古品の買取を行なっている企業が、不用品の買取金額をNPOに寄付するというサービスを提供している場合があります。
こうしたサイトを通じて物を換金したうえで寄付することが可能。
資金的な寄付で途上国支援を行うことができます。
例えば、ブランド品買取業者のブランディアでは「Brand Pledge」という専用サイトを設置。
支援したい団体を事前に選択し、買取金額を寄付できるようになっています。
なお、査定結果に納得できない場合は返品もできるようになっています。
(出典:Brand Pledge HP)
他にも、NGOやNPOが買取業者と協働しているサービスを利用するという手も。
NGO・NPOなど団体のサイトからリサイクルを申し込み、指定の業者に物を送付すると換金の上、寄付されます。
例えば、グッドネーバーズ・ジャパンでは、主に古本や宝飾品などの寄付を受け付けています。
支援先の選定はできませんが、団体のサイトのバナーから直接申し込めるようになっています。
ただし、換金できない場合は、処分されてしまうので注意が必要かもしれません。
(出典:グッドネーバーズ HP)
チャリティショップなどの実店舗に持ち込む
店舗の収益を途上国支援に寄付しているチャリティショップに物を直接持ち込むことで、支援につなげることもできます。
例えば、WE21ジャパンは神奈川で55店舗を展開するNPO。
国内でリサイクルの促進や啓発を行いながら、チャリティショップでの収益をアジアの女性の自立支援に活用しています。
この店舗に雑貨や衣料などの不用品を持ち込むとリサイクル品として販売されます。
ただし、受け入れない不用品は持ち帰る必要があるので、予め選別しておくとよいでしょう。
(出典:WE21ジャパンHP)
店舗に持ち込みだと、直接スタッフの方とやりとりができるので途上国の現状などいろんなお話ができるかも。
人とのコミュニケーションを通じて途上国への理解を深められるのが実店舗の良いところですね。
なお、各地にチャリティショップは点在。
その他チャリティーショップの一覧を見ながら近くの店舗を見つけてみてください。
まとめ:物の寄付をする前に相手のことを考慮して。資金があったほうが活動を拡大できることも!
途上国や被災地で何も物がなく困っている印象を持つような報告や報道を見ると「これを送ったら役立つかも」と思ってしまいます。
しかし、本当にその物が「今」必要とされ、現地で調達ができず、どうしても欲しい物なのか、立ち止まって考えましょう。
考慮した上で物を送ろうとするとき、現地へ届けてくれる団体についても信頼できるか、しっかり見極めたいですね。
緊急支援として物を渡すことも良いのですが、やはり資金があると支援の可能性を広げることができます。
資金があれば、新しい設備の導入、医療の充実、意識啓発に教育など、ニーズに応じた活動を進めていくことができます。
物を寄付する行為がひとりよがりの支援にならないよう気を付けたいですね。
なお、物の寄付以外に途上国を支援する方法はたくさんあります。
こちらの記事もご参照ください。