セレブや経営者がチャリティ・慈善活動に、多額の資金を出す”合理的”な理由

地震や台風など自然活動が起こると、経営者や芸能人、アーティストなどの方が、巨額の寄付を発表して話題になりますね。
なぜセレブや有名人には、寄付やチャリティといった行動をとるのでしょうか?
「お金が余っているから」や「世間体を気にするから」といっただけではない、合理的な理由がありました。

数千億円単位の寄付をする方まで!アメリカや日本の事例

セレブによる多額の寄付といえば、記憶に新しいのがFacebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏。
2015年、娘さんの誕生後に、450億ドル(約5兆5000億円)相当のFacebook社保有株の99%を、慈善事業に充てると発表しました。

ザッカーバーグ氏だけでなく、アメリカでは2017年の「年間寄付額トップ10の総額は、102億ドル(約1兆1300億円)」というデータも。
日本の方を含めて、大口の寄付をしているセレブ・有名人で印象的な事例をピックアップしました。

名前(敬称略) 職業 内容
稲盛和夫 京セラ・創業者 母校・鹿児島大の教育・研究に80億円相当を寄付
イチロー プロ野球選手 東日本大震災後に、日本赤十字社を通じて1億円を寄付
エマ・ワトソン 女優 セクハラ被害者らを支援するための基金に、100万英ポンド(約1.49億円)を寄付
レオナルド・ディカプリオ 俳優 「ハリケーン・ハービー」に100万ドル(約1.1億円)を寄付
ビル&メリンダ・ゲイツ マイクロソフト・創業者 2017年だけで、46億ドル(約5100億円)を寄付

表に載せたレオナルド・ディカブリオ氏は、ハリケーンに際して自身が寄付をしただけでなく、さらに大物セレブと協働して、電話番をするチャリティイベントで16億円以上の寄付金集めに成功のが話題になりました。

年収増加による幸福度アップは、800万円で頭打ちに・・

このようにチャリティや慈善活動に多額のお金を投じている方々ですが、その背景には何があるのでしょうか?
なぜ彼らは、本来なら自身や家族のために残しておく資産から差し引いてまで、寄付をするのでしょうか?

「お金が余っているから」や「世間体を気にするから」といった事情もあるかもしれませんが、私が注目するのは、収入や資産が一定を超えると、それだけでは幸福度が高まらないという傾向。

たとえばハーバード大学の研究では、年収が1万ドル(約80万~100万円)増えても幸福度は2%しか増えないことがわかったそうです。
(出典:「幸福の習慣」トム・ラス・ジム・ハーター

これだけでなく、年収と幸福度の相関度を測る調査は、さまざまな国で行われてきました。

平均年収を下回る人々、たとえば日本では「300万円」といったラインでは、年収が増えれば増えるほど幸福度が高まります。
すなわち、「お金が増えれば増えるほど、幸せになる」と言えるのです。

ところが、この綺麗な相関関係は、だんだんと違った形を描くようになります。
つまり、500万円、600万円、700万円と年収が増えていけばいくほど、「稼ぐお金が増えても、それだけでは幸せを感じにくく」なってしまうのです。

もちろん個人によって異なりますが、アメリカでは年収7万5000ドル、日本では年収800万円を超えると幸福度はほとんど上昇しなくなることがわかっています。
興味深いことに、アメリカと日本で幸福度が一定になる金額はほとんど変わりません。”
(「幸福の資本論」橘玲より)

これらの統計調査の結果からも分かるように、収入が高くなればなるほど、その増加によって追加にもたらされる喜び、限界効用が薄れていきます。

したがって、一定のお金を得られるようになったら、闇雲に収入を上げようと奔走してもダメなのはもちろん、これまでと同じお金の使い方をしても、幸せにはなれません。
お金を稼げば稼ぐほど、「欲しいものを買う」「もっと広い家に住む」といった行動をとっても、効果がないというパラドックスが生じてしまうのです。

お金の使い方と幸福度の関係性、科学的に実証された法則とは?

そこで大事なのは、「いかにお金を使うか?」に意識的になること。

お金の使い方と幸福度の関係性について科学的に研究した、「『幸せをお金で買う』5つの授業」(エリザベス・ダン、マイケル・ノートン)という本があります。

同書によると単純に「モノを買う」よりは、「経験を買う」「ご褒美にする」「時間を買う」「先に払って後で消費する」「他人に投資する」といった5つにお金を使うことで、幸福度を高められることが、心理学者たちの実験で証明されているそうです。

注目すべきは、「他人に投資する」に寄付も含まれていること。

別の記事(なぜ「寄付すると、幸せになれる」と断言できるのか?心理学実験で分かった、意外な事実)にも書きましたが、寄付をすることは幸福度を高める有意な効果があるのです。

驚くべきことに、全対象国の平均で「チャリティーに寄付することは、家庭の所得を2倍にするのと同じくらい幸福度に貢献していた」という数値が出ていたそうです。「寄付をすると、幸せになれる」というと、なんだか怪しく聞こえるかもしれません。ですが、「他人のためにお金を使う方が、自分のために使うより幸福度が高まるという傾向は、さまざまな先行研究によって既に定量的に実証されています。
(上記記事より)

ここで強調したいポイントは、寄付によって幸福度が高まるのが、お金持ちに限らないこと。
さまざまな年収や国籍の方にとって同じ効果が出ると実験でも結果が出ていますし、先ほど紹介した統計でも年収700〜800万円前後で幸福度の頭打ち効果は出てしまうのです。

セレブや有名人といった特別なお金持ちだけでなく、この記事を読んでいるあなたも、ちょっとしたお金の使い方を変えるだけで、同じ収入でもより幸せに過ごせるかもしれません。
その1つに、「寄付」という選択肢があること、ぜひ覚えておいてください。

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