ランドセルを途上国や児童擁護施設に寄付して、子どもに役立つの?現場の声まとめ

子どもが大きくなるにつれて不要になるものはたくさんありますが、ランドセルもそのひとつ。
丁寧に使っていればまだまだ使えるものもあり、捨てるのがもったいない気もします。
どこかに寄付して誰かの役に立ってもらえたら有意義ですよね。

ランドセルの国内外の寄付の現状に加えて、そのプラスとマイナスの影響についても紹介します。

ランドセルの寄付をしたいけど、中古でも大丈夫?寄付できる団体の紹介

日本国内では、一部の児童養護施設などでランドセルの寄付を受け付けている場合が多く、そのほとんどが新品のもののようです。
一方、途上国では、中古のランドセルであっても寄付されています。

中古のランドセルの寄付を受け付けている団体や組織を紹介します。

団体例1:途上国の妊産婦や乳幼児の保健問題に取り組む(ジョイセフ)

ジョイセフは、1968年に設立された日本生まれの国際協力NGO。
妊産婦や乳幼児の死亡率が高い途上国で、自身の健康に対する意識を高めてもらえるように、意識の啓発や保健人材の育成などの活動を実施しています。
これまでに35カ国の途上国で活動してきました。

活動地アジア、アフリカ
活動内容プライマリーヘルスケアサービスの導入、
保健衛生人材の育成、リプロダクツヘルス(家族計画)の研修
設立年1968年
運営団体公益財団法人ジョイセフ

ジョイセフによるランドセルの寄付は、2004年から始まり、多くの女性に就学機会を提供してきました。

女性が自ら自分の意識を変えていくためには、きちんとした基礎教育を経て、正しい情報を得ることが必要です。
ランドセルの寄付を通じて就学機会を提供しています。

(出典:ジョイセフHP

団体例2:途上国に学用品を届ける(NGO時遊人)

NGO時遊人は、アジアの途上国に学用品を届けている国内のNGOです。
2007年に創設され、2011年から教育環境の改善のためにランドセルを届けています。
成績上位の子どもに配るなど、学習意欲の向上も目指しています。

活動地ベトナム、カンボジア
活動内容学用品の寄贈
設立年2007年
運営団体一般財団法人NGO時遊人

NGO時遊人は、ランドセルなど物資の輸送を「POSTMAN」とよばれるボランティアにお願いしています。

この「POSTMAN」とは、プライベートでカンボジアなどに旅行する機会がある場合、一緒にランドセルをハンドキャリーで持ち込み、学校や施設に届けてもらうというもの。

また、NGO時遊人が主催する「POSTMAN」のボランティアツアーもあります。
なお、旅費は個人の負担となりますので注意が必要です。

(出典:NGO時遊人—Facebook)

団体3:期間限定の企業のキャンペーン(ソフトバンク株式会社、イオン株式会社)

期間限定ではありますが、一部の企業がNGOと連携してランドセルの寄付を受け付けています。

ソフトバンク株式会社(以下、ソフトバンク)は2019年4月1日(月)から2019年5月31日(金)まで、NPO法人YouMe Nepalを通じてネパールにランドセルを寄付する「愛のランドセル寄付プロジェクト」を実施していました。

指定の期間内に、全国のソフトバンクショップにランドセルを持ち込むことで寄付できます。

回収後は、ソフトバンク社員などボランティアによる検品、ネパール政府からの海外輸送の関税別免除などを経て、現地の子どもたちの手元に届きます。
現在、ネパール西部の196校にランドセルが配布されているようです。

2019年から始まったこのプロジェクト。
現時点(2019年11月時点)では募集期間は終了しています。

(出典:ソフトバンクHP

NPO法人YouMe Nepalは、日本に暮らすネパール人シャドライ氏が大学生のときに設立。
ネパールの子どもたちの教育環境を改善しようと、ITや日本式の教育を取り入れた小・中学校を運営しています。

現在、ネパール国内に2校を開設、360人の子どもたちに新しい教育を提供。
他にも、子どもの心身の健全な成長を促進するために、給食プログラムやカウンセリングなど、さまざまな活動を実施しています。
新しい組織ですが、ネパールの子どもの未来創りに尽力しているようです。

活動地ネパール
活動内容子供の教育環境改善、栄養改善、カウンセリング
運営団体NPO法人YouMe Nepal

なお、イオン株式会社(以下、イオン)は、2019年10月4日~10月31日の間、前述のジョイセフと協働し「キッズリパブリック 思い出のランドセルギフトプロジェクト」を実施していました。

不要になったランドセルを、一定期間全国のイオンの店舗440箇所に直接持ち込むことで、寄付ができます。
検品や梱包の後にアフガニスタンへ輸送。
ジョイセフとの連携を通じて現地の子どもたちに配布されています。

(出典:イオンHP

ランドセルの送料は誰が負担?ボロボロのものは寄付できない?送る前に確認したいポイント

ランドセルを寄付する前に確認しておきたいポイントを上記の方法ごとに紹介します。

寄付の方法NGO・NPOに直接寄付する企業のキャンペーンで寄付する
(ソフトバンクの例)
ランドセルの持ち込み場所なし※郵送のみ受付ソフトバンクショップ、
ワイモバイルショップ
※事前にネットで申し込み登録が必要
宅配での寄付
※送料は自己負担
不可
費用ランドセル1つにつき1,000円以上の寄付が必要
※海外輸送費などの経費として
不要
状態・ベルトが取れるなど破損が激しくない
・落書き寄せ書きはOK
付属品(防犯ブザー、名札、キーホルダーなど)を取り除く
・卒業後5年以内・破損や落書きがない
・付属品(防犯ブザー、名札、キーホルダーなど)を取り除く
その他・宗教上豚皮のランドセルは受け付けないことも
・預かったランドセルの返却はできない
・預かったランドセルの返却はできない
・子ども一人につきひとつの寄付まで(まとめて寄付は不可)

(出典:破損の程度−ジョイセフHP)

(出典:落書きの例−ソフトバンクHP)

途上国や国内の児童養護施設にランドセルを寄付すると、どんないいことがあるの?

ランドセルの寄付による3つの効果を解説します。

効果1:教育環境の整備

途上国では教育環境が充実していなかったり、教育の質が良くなかったりと、教育の問題を抱えています。

そして、基礎教育がままならず、高等教育も受けられない子どもたちは、将来の就職機会を失う可能性も。

大学にもいけない子ども達の多くは、中東やマレーシアなどに過酷で危険な出稼ぎに行かざるを得ません。
現在、毎日1,500人にのぼる出稼ぎ労働者がネパールを後にしており、 この3年間で6,000人もの人が出稼ぎ先で命を落としている悲惨な状況です。

YouMeNepal HP

こうした状況を少しでも改善する手段のひとつが「教育環境の整備」。
その一環としてランドセルなどの学用品を揃えることは大変重要です。

きちんとした学用品があることで、「物がないから勉強を諦める」ということが減り、学習意欲を継続させる効果が期待できるそう。

例えば、ネパールの僻地では、教科書などの入手は困難。
通学にも1時間近くかかります。
1冊1冊が大事な学用品となるので、長い通学路の雨風から保護できるランドセルは重宝されています。

また、自宅で勉強する際の机の代わりにもなり喜ばれているようです。

(出典:ソフトバンクHP

「家で机がないので、教科書をおいて勉強できるのがうれしいです。」
「このカバンは素敵で、強い。大切にします」

ソフトバンクHP

困難な状況であっても、ネパールの子どもたちは、学ぶ意欲が高いそう。
子どもたちの純粋な学習意欲を絶やさぬよう、ランドセルに期待される役割は大きいのではないでしょうか。

効果2:妊産婦・新生児の健康改善(識字率=知識定着)

途上国の地域によっては、社会的に女性に教育を受けさせる必要がないと考えられているところが、依然としてあります。
その結果、アフガニスタンでは15歳から64歳の女性の非識字率が68%と高いです。

学校に通わない女の子は、家事労働に従事したり早期結婚をしたり。
十分な教育を受けられず、知識がないまま若い女性が妊娠・出産し、母子ともに危険な状態に陥る可能性が高いのです。

アフガニスタンでは女の子たちは十分に教育を受けられないまま、12~13歳で結婚し、出産を始めることが少なくありません。
母体が十分に発達しないままの妊娠・出産は、妊産婦死亡、新生児死亡の危険と直結しています。
また文字の読めない妊産婦は、保健や衛生の知識や情報を印刷物から得て理解することができず、妊娠・出産・育児における適切な手当てができない状況にあります。

ジョイセフHP

妊産婦や新生児の健康を維持するためには、女性(母親)が基礎的な教育を受け、きちんとした妊娠・出産に関する情報を得ることが重要です。

ランドセルは、親も子どもも「学校に通いたい(通わせたい)」と思うきっかけになるそうで、女の子の教育の普及の一助になります。

何もない農村地域ではランドセルの配付を始めて1年であっという間に学校へ通う子どもたちの象徴となりました。
貧困のために、子どもの就学に同意しなかった親たちの間にも、子どもたちに日本から贈られたランドセルを背負わせて勉強させてやりたいと気持ちが芽生えました。
ランドセルを男女に平等に配ることで、「女の子も男の子と同じように学校へ通うのが当たり前」という考えが地域で根づきはじめています。

ジョイセフHP

女の子も、男の子と同じように学校に通うことで自分の未来を守ることができる。
ランドセルがきっかけで、平等な教育機会という効果をもたらすこともあるようですね。

効果3:児童福祉施設の支援

日本国内でもランドセルの寄付が役に立っているケースがあります。
児童養護施設では、さまざまな理由から親元を離れて暮らす18歳までの子どもたちが暮らしており、進学シーズンなどランドセルの寄付は運営にとって大変助かるものになっています。

児童養護施設は、一般的に国や自治体からの補助金や寄付金によって運営費がまかなわれています。

しかし、必要最低限の費用となり資金繰りが苦しいところも。
限られた財源の中で複数の子どもたちの生活費をやりくりするため、高額なランドセルが寄付されることで、他のものを購入する余裕が生まれるかもしれないですね。

進学のための入学支度金は小学校で3万9,500円、高校生でも5万8,500円。
ランドセルを買うだけでほとんどがなくなり、高校では制服代にも足りない場合も多い。

2011年1月22日付朝日新聞ネット

ただし、日本の国内の場合は新品のランドセルのみを受け付ける傾向にあります。
施設によっては、中古品はすべて断る場合もあるので事前の確認が必要でしょう。

「ランドセル」の寄付は単なる自己満足になることも?!知っておきたい寄付先の現状

ランドセルの寄付をしたからといって、すべてが解決し支援は終わりになるということではありません。
寄付先の現状を理解しておくと、より効果的な支援につながることも。

国内外の寄付先はランドセルを本当に求めているのでしょうか。

資金的な寄付を求めているケースも

国内では「タイガーマスク運動」としてランドセルが寄付されているのをよく目にします。
施設にとってはありがたい話である一方、複雑な思いをもつところも。

幼い子どもにとって「ランドセル」は進学の象徴であり、楽しみのひとつ。
与えられたものの中から選ぶのでは、選択肢が限られてしまい、選ぶ楽しさがありません。

自分で探したり、好きなものを選んだりという「経験」そのものが成長につながるという意見もあり、購入するための資金の寄付を求めている施設があります。

一貫して「ランドセルそのものではなく、買うための費用を届けてください」と伝えているという。
子どもが施設職員と一緒にランドセルを買いに行き、悩みながら自分の好きな色のものを選ぶことが、大事な経験になるからだ。

2019年3月15日付河北新聞

また、ランドセルの寄付がミスマッチになるときも。
進学する子どもがいない、過剰に寄付され過ぎてしまうなど。

ランドセルのようにほかに使い道がないものは、余ったら処分しなくてはならないので、その負担やコストがかかることがあります。

過去には、ランドセルが送られた施設に新1年生となる子がいなかったり、過剰に寄せられて対処に苦慮した事態もあった。

2019年3月15日付河北新聞

なお、支援が一過性のものだと、子どもに寂しい思いをさせることになると考える施設もあります。

さまざまな理由があって施設に来ている子どもたち。
支援をする際には、できるだけ相手の心情を理解する必要があるでしょう。

「子どもたちにとっては、一時的な寄付やボランティアは寂しさを増やす。物よりも、まず理解と愛情を向けてほしい」

2011年1月22日付朝日新聞ネット

ランドセルを寄付するのは、子どもに楽しい小学校生活を送ってもらえるよう支援したいため。
支援先の子どもたちや運営者に真から喜んでもらえるよう、寄付する前に、施設の現状や意向をよく把握することが大切でしょう。

また、児童養護施設は資金的にもっと余裕があれば、子どもたちに手厚いサポートが可能に。
寄付先の現状を踏まえて、資金的援助がいいのか、物資支援がいいのか判断しましょう。

ランドセルはきっかけ。息の長い支援が必要

途上国では、貧困問題・環境破壊・教育の欠如など、さまざまな問題が複雑に絡み合っています。
特に、教育問題は重要な途上国の課題のひとつ。

教育を受けることで、貧困を繰り返す負の連鎖を断ち切ることができるためです。

(出典:ユネスコHP

発展途上国にみられる、貧困による負の連鎖は非常に大きな問題です。
教育を受けられないことで、読み書き・計算ができないまま大人になってしまい、仕事に就けず、収入が少ない状態が続き、さらには本人や子どもが教育を受けられなくなるという悪循環が続いてしまいます。
この負の連鎖の根本的な問題は教育、つまり読み書き・計算が出来ないということに大きな原因があると考えられています。

ユネスコHP

ランドセルの寄付は、教育を受けられなかった子どもたちが「学校に行きたい」と思うきっかけにはなります。
しかし、学校に行ったからといってすぐになにもかも問題が解決するかというと、そこまで単純な話ではありません。

教員や教材の改善、授業の更新、学校の建設・運営など、解決に向けて取り組まなくてはいけない課題は山積み。
途上国の子どもたちが質の高い教育を受けられるようになるには、一定の時間を要するでしょう。

日本国内には、途上国の子どもたちの教育問題に取り組むNGOやNPOがあります。
こうした団体の努力によって少しずつ状況は改善しています。

教育問題の解決に本質的に貢献したいのであれば、ランドセルの寄付に留まらず、資金的な寄付により活動支援することもひとつの方法です。

物資による支援と資金的な支援をうまく組み合わせながら、途上国支援を継続していくことが大切です。
教育問題に取り組むNGOの紹介はこちら。

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