寄付をしたからには寄附金控除を受けたい、けれども確定申告は書類の作成が面倒だという方も多いかと思います。
そうした声に応えるかのように、近年オンラインで電子的に手続きができるように制度が変わりつつあります。
どのように制度が変わり、私たちはどうすれば活用できるのか?NPO側の対応状況は?など、気になる現在の実情を調べてみました。
目次
そもそも、寄附金控除を受けるための領収書は紙?データ?
これまで、寄附金控除を受けるための確定申告の手続きでは、申告書を整えた上で寄付先団体からの領収書を台紙に貼って税務署に提出する必要があり、準備が面倒でした。
e-Taxの利便性が向上
この面倒な確定申告の手続きを、オンライン上でできるようになったのがe-Taxというシステムです。
このe-Taxは2019年から大幅に便利になり、事前にIDとパスワードを取得しておけば、自宅のパソコンやスマホからも利用できるようになりました。
この場合、領収書などの添付書類は自宅保管(3年)とされ、申告時の提出が不要になったことで、作業はかなり楽になりました。
e-Taxについての詳細は国税庁の以下のリンクページをご参照ください。
e-Tax利用の簡便化についてe-Tax
制度の改正で、2019年から電子データでもOKに
この電子申告の流れでもう一つ期待されるのが、領収書そのものの電子データ化です。
実はこの領収書の電子データ化は平成30年分の確定申告(2019年3月15日期限)からすでに制度上は認められていました。
具体的には、寄付先団体から紙の領収書の代わりとなる「電子的控除証明書」をデータで受け取ることができ、それをe-Tax上で添付送信することができるというものです。
該当年ごとに電子データで提出すれば、紙の場合に心配だった長期保管を気にする必要は無くなります。
この仕組みによって、事実上全ての手続きがオンライン上で可能になったと言えます。
あくまで制度上は。
ただし、現状は対応できている団体はほとんどない
ですが、この領収書の電子データ化については不思議なほど話題になっていません。
実際に自分が寄付した団体に依頼をしたら、電子的控除証明書を発行してもらえるのでしょうか。
いろんなNPOの寄附金控除の解説ページを見てみた
そこで、これまで寄付ナビで取り上げてきた団体のHPにおいて、電子領収書についての記載があるか調べてみました(2019年9月筆者調べ)。
団体名 | 該当ページ | 記載の有無 |
国連UNHCR協会 | 領収証について | 記載なし |
国境なき医師団 | 領収書 | 記載なし |
難民支援協会 | 寄付金控除等のご案内 | 記載なし |
ピースウィンズジャパン | 寄付金控除(税制優遇)のご案内 | 記載なし |
カタリバ | 税制優遇について | 記載なし |
記載のある団体は一つもありませんでした。
日本財団のみ言及あり
唯一、日本財団のHP上で、領収書の電子発行についての記載が確認できました。
平成30年以降の領収書の電子交付について
日本財団HP「領収書について」
平成30年より電子交付による領収書発行が認められますが、電子発行につきましては準備中です。
準備が完了するまで紙面での発行となりますこと、ご了承ください。
まだ準備中でした。
領収書について日本財団
実は、発行する団体側の手続きが大変
各団体が領収書の電子化に全く対応していない理由は、単純に制度ができたことを知らない、または知ったとしても面倒だからのようです。
面倒なポイントは3つあります。
1点目は、発行する電子的控除証明書に付記される「電子署名」が本物であることを証明するための「電子証明書」の取得(印鑑証明のようなもの)が必要である点。
2点目は、それぞれに異なる電子的控除証明書を各寄付者へのメールに添付し、送信する作業が大変であるという点。
3点目は、できれば紙との混在は避けたいので、電子版が主流になるまで紙に統一しておきたいという意識が働くと思われる点。
法人側の大変さについてもう少し詳しく知りたい方は、実際に電子データの作成を試された脇坂税務会計事務所の脇坂先生のブログをのぞいてみてください。
寄付金控除の領収書の電子データでの作成についてNPO会計道
寄付金控除の領収書の電子データでの作成NPO会計道
今後制度が周知され、領収書を発行する団体にとっても負担が少なく、受け取る寄付者がより簡単に申告できるようになることを期待したいですね。
結局、ペーパーレスに向けて今できることは?
という訳で、確定申告の手続きの簡便化はかなり進んできてはいますが、まだペーパーレス化という点にはまだハードルがあるようです。
最後に、今の段階でできることを整理しておきます。
まずは電子申告(e-Tax)を利用しよう
e-Taxを利用すれば、通常は必要とされる領収書の添付が不要になるため、ペーパーレスで確定申告の手続きを行うことはできます。
ただし、領収書の現物を3年間保管する必要があり、完全なペーパーレスとは言えません。
むしろ提出しないで保管の方が煩わしく感じる方もいるかもしれません。
寄付先団体が領収書の電子化に対応するのを待とう
まだ対応している団体はほとんどありませんが、電子化の流れは避けられませんので、いずれは主流になってくると思われます。
現時点では、団体側が対応する準備が整うのを待つしかありません。
最後に
税の制度やその運用については、オンラインによる仕組みが整備されてきて、近年目まぐるしく変化してきています。
正しく、かつ便利な方法を利用できるように、常に最新の情報に注意を払われることをお勧めします。