寄付金の種類によって、法人の損金として落とせる金額が変わるのはご存知ですか?
法人が寄付した時の損金の計算方法と、確定申告の仕方を解説します。
目次
そもそも企業が寄付したら、節税になるの?
法人が寄付をすることにどんなメリットがあるのでしょうか?
寄付によって利益が出たり、税金を納めるより支出が減る訳ではない
寄付することで特別な利益があるということも、税金を納めるより現金支出が少なくなるということもありません。
但し応援したい団体や活動に資金を拠出したいという場面において、税金が多少なりとも減らせることは、寄付のインセンティブとなり得ます。
あくまで寄付が主目的で、節税は付随物、ということです。
法人税を計算する前に押さえたい、寄付と経費の違い
税制上における寄付とは「金銭や対価などの見返りを求めずに、財産の一部を贈与すること」を指します。
よって「広告宣伝費」や「接待交際費」に該当するような寄付(例えば協賛金・地域の会費など)は、寄付とは認められず経費として計上される点は注意が必要です。
寄付先の法人格ごとに、計算方法をチェック
ケーススタディで計算方法を確認しましょう。
ケース1:国・地方公共団体などに寄付した場合
国や地方公共団体に対する寄付、または日本赤十字社が災害時に募る義援金などは全額損金の対象になります。
ケース2:公益財団法人などに寄付した場合
個人が寄付をしても控除が受けられるような、認定NPO法人や公益法人が該当します。
このケースは、一般寄付金の損金算入限度額に加えて、特別損金算入限度額まで損金に計上することができます。
一般寄付金の損金算入限度額-国税庁HPより引用
特別損金算入限度額-国税庁HPより引用
ケース3:一般的なNPO法人などに寄付した場合
認定を冠さないNPO法人や、一般財団法人、一般社団法人といった団体に寄付した場合、一般寄付金の損金算入限度額まで損金に計上することができます。
例えば、資本金等の額が2,000万円、所得の金額3,000万円、1年決算法人の場合の損金算入限度額は以下の通りです。
(2,000万円×12/12×2.5/1000+3,000万円×2.5/100)×1/4=20万円
所得の金額は、寄付金を損金に算入せずに計算する点は注意してください。
寄付をする前に、注意したい3つのポイント
法人としての寄付を決済する前に、チェックしたいポイントを3つご紹介します。
ポイント1:法人として、個人として、どちらがいい?
法人の財布から寄付するのか、個人の財布から寄付するのかは
- 法人がどれくらい利益を出しているのか
- 個人の所得をどれくらい出しているのか
によりますので、一概に述べることはできませんが、基本的にはより節税効果が高い金額をそれぞれ計算して上限を設定することとなります。
個人の寄付税制の計算方法は、以下の記事も参考にしてください。
しかし法人として寄付することで、団体のHPや年次報告書に社名を掲載してもらえたり、自社のCSRの取り組みとして発信することができる、というメリットもあります。
また「寄付したことをあまり知られたくない」という方なら、個人として寄付する方が良い場合も。
税金の計算をしつつ、寄付後の社会的体裁も加味した上で判断するようにしてください。
ポイント2:領収書と証明書は発行してもらえるか?
法人税で寄付金控除を適用するためには、確定申告書に加えて、「別表十四・寄附金の損金算入に関する明細書」の添付が必要です。
別表十四-国税庁HPより引用
その際、「寄付金の領収書(寄附受領証明書)」と「税制優遇が受けられる寄付先であることを証明するための書類(特定公益信託に該当する証明書)」も必要になります。
寄付を行なった際に、寄付先に上記2点を発行してもらえるかを忘れずに確認しましょう。
ポイント3:決算の前に間に合う?
「法人の決算前は忙しくて寄付どころではない!」ということもあるでしょう。
決算月の3〜4ヶ月くらい前から、今期の利益が出そうなことが分かった段階で、寄付の是非と金額を、税理士の先生などと一緒に検討するようにしましょう。
また送金方法は「クレジットカード決済」もしくは「銀行振込」が一般的ですが、前者はポイント還元がある一方で、寄付先に着金するのが1〜2ヶ月程度遅れます。
寄付先の団体に着金した日が、寄付の受領日となりますので、決算の直前に寄付する場合は銀行振込の方がスピーディに送金できます。
こうしたスケジュールを意識しつつ、余裕を持って寄付されることをオススメします。
以上、法人税の寄付金控除について解説させて頂きました。
あなたの会社の税金対策に資することは勿論ですが、「社会貢献にも理解がある、なんて素晴らしい会社だろう!」と広く市民から応援されることを、心から祈っております。