進学で揃えたりお祝いでもらったりするものの、意外と余ったり使い切らなかったりする文房具。
処分するのはもったいない、どこか寄付して役立てられるのならそうしたいですよね。
ただ、どうやって寄付したらいいのか、本当に文房具が求められているのか、実際よくわからないことも。
文房具の寄付を受け付けている団体や施設への送り方に加えて、寄付することでのメリット・デメリットについてご紹介します。
目次
文房具の寄付を受け入れている団体は?どうやって送る?
文房具の寄付ができる団体例と送り方の注意点をまとめました。
団体例1:途上国の妊産婦と子どものいのちを守る(ジョイセフ)
ジョイセフは日本生まれの国際NGOです。
1968年に国際的な要請を受けて設立。
世界35カ国で外務省や国際機関と連携し、妊産婦の意識啓発、保健人材の育成、保健・医療施設の整備など母子保健に関する活動を実施しています。
これまでに、ザンビアでは2万人以上に母子保健の情報が提供され、産前検診の受診率が向上しました。
(出典:活動一覧-ジョイセフHP)
ジョイセフは、識字率が高くない地域で、女性が読み書きできるよう文房具をはじめとする学用品を届けています。
識字率の向上により、安全な妊娠・出産に関する情報を収集してもらうことがねらい。
なお、文房具は、現地の助産師が使用するカルテや活動記録などにも活用されています。
活動地 | アジア、アフリカ、ラテンアメリカ |
活動内容 | セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ :SRHR(家族計画、母子保健、HIV/エイズ、思春期保健)、 ジェンダー/女性のエンパワメント |
文房具の寄付の目的 | 識字率の向上(特に女性) |
運営団体 | 公益財団法人ジョイセフ |
団体例2:18歳以下の子どもが主体的に活動し支援する(フリー・ザ・チルドレン・ジャパン)
フリー・ザ・チルドレンは、カナダを拠点とする国際協力NGOです。
18歳の若者が主体となって途上国の子どもの権利を守る活動をしています。
学校や図書館の設置、手洗い指導、農業指導など、子どもたちが貧困から抜け出すために必要な支援を提供。
これまでに、1,000校以上の学校を建設しており、20万人以上が教育を受けられるようになったそう。
また、日本支部(フリー・ザ・チルドレン・ジャパン)は、1999年から活動を開始。
現在は、1,500人の子どもと若者がメンバーになっているそう。
メンバーである学生向けに途上国へのスタディーツアーを実施したり、社会課題解決に向けたリーダーシップ養成キャンプを開催したりと、国際協力の人材育成に力を入れています。
今回のスタディーツアーで たくさんのことを学んだので吸収するだけでなく、 今回学んだことを生かして何か社会問題に対する行動を起こしたいです。
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンHP
世界中の子供たちが笑っていられるような世界にしたいと思いました。
また、インドで見てきた光景を忘れずに困っている人たちのために何かできることを考えたいです。
-参加当時 高校2年生 Kさん
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンの活動地域によっては、文房具がほしいという要請があるそうで、スタディツアーの際に届けられています。
文房具のほかにも、歯ブラシや石けんといった生活用品の寄付も必要に応じて実施しているそうです。
活動地 | アジア、アフリカ |
活動内容 | 子どもの教育支援、若者自立支援、緊急支援 |
文房具の寄付の目的 | 教育環境の整備 |
運営団体 | 認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン |
団体例3:日本の児童養護施設などの社会福祉法人
日本の児童養護施設などの社会福祉法人が、文房具をはじめとする物資の支援を受け付けている場合があります。
各自治体の福祉協議会や施設に直接問い合わせてみるのが良いかもしれません。
(出典:社会福祉法人青少年福祉センターHP)
文房具の持ち込みはできる?寄付・送付の注意点
前述した団体などに文房具を送付する際、次のことに注意しましょう。
持ち込みの可否について
多くの団体では郵送での寄付を受け付けているのが一般的。
ただし、団体によっては文房具を始めとする物品を直接持ち込むことができるかどうか、ホームページに明記されていないこともあるので、まずは事前に連絡し相談するとよいでしょう。
なお、チャリティショップなどであれば直接持ち込むことが可能。
この場合、文房具そのものが現地に届けられるのではなく、ショップで販売され収益の一部が寄付されることになります。
費用負担について
現地に文房具を届けるまでには、倉庫保管、海上輸送、関税、現地での配布など、労力や費用がかかります。
文房具を受け付ける団体の多くは、輸送などにかかる費用の負担を寄付者にお願いしています。
(出典:フリー・ザ・チルドレン・ジャパンHP)
使いかけの文房具の寄付について
団体によって異なりますが、鉛筆など消耗するものは新品を受け付ける傾向に。
また、のりやテープなどであれば、使いかけでもよい団体もあります。
送付する前に確認が必要ですが、もらう立場になって考えると、新品のほうが使い勝手がいいかもしれませんね。
(出典:もったいないJAPAN HP)
途上国や国内で文房具の寄付はこうして役に立っている
文房具がどのように途上国や国内で活用されているか紹介します。
事例1:途上国での基礎教育の支援
アジアやアフリカの途上国では学校で使う文房具が手に入らない地域もあります。
そのため、すぐに使える文房具は現地で大変喜ばれるそう。
ウガンダの孤児院兼学校「Frinds of EXODUS」に7月に送った物資が到着いたしました。
もったいないJAPAN HP
シャツやボール、文房具をお送りさせていただいたのですが、子どもたちが大変喜んでいると先生より連絡を頂きました。
途上国では、鉛筆などの学用品がないことで学校にいくのを諦めてしまう可能性があります。
しかし、文房具などの学用品が揃えば、学校や家で学習する機会につながるでしょう。
さらに、読み書きができるようになれば、高等教育の可能性や将来の就職などにもよい影響をもたらします。
小さな文房具ですが、寄付によって子どもの可能性を引き出すかもしれませんね。
事例2:途上国の妊産婦の保健の意識向上
途上国では社会的に女の子は教育を受ける必要がないとされている地域があり、読み書きできない女性が多数います。
そのため、妊娠・出産に関する適切な情報を得られず、産前・産後に母子が危険な状態に陥ることも。
「母子の健康」への意識を促進するためには、女性への識字率が重要な鍵となります。
一般的に途上国の女性は文字の読み書きができないことが多く、健康や保健に関わる知識や情報を十分に得られない状況にあります。
ジョイセフHP
そのため体調に異変を感じても、どのように対処していいのか判断が付かず、その結果手遅れになってしまいます。
ジョイセフは子どもたち(特に女の子)に学用品を寄贈することを通じて基礎教育への支援を行っています。
文房具をはじめとする学用品が配られることで識字率の向上につながるのだそう。
寄付によって妊産婦の保健に関する意識を向上させる効果も期待できますね。
事例3:東京の児童養護施設で役に立っている事例の紹介
全国にある児童養護施設は、国の補助金や寄付などで運営が成り立っています。
財源が豊富というわけではないので、限られた予算内で生活費を節約するなど、やりくりしているのが現状。
そのため、消耗品など「すぐに使える物」の寄付を受け付けている施設があります。
文房具も子どもたちにとっては必需品。
施設によっては、新たに購入する必要が省け、運営の手助けになるでしょう。
(出典:セカンドハーベストHP)
また、被災地でも文房具の寄付が行われることもあります。
たしかに復旧が進めば、文房具自体の要望はあまりなくなるかもしれません。
しかし、こうした寄付活動を通じて、子どもたちを応援している人が他にいることがわかり、元気を取り戻すきっかけになるかもしれませんね。
(出典:セカンドハーベストHP)
送る前に考えたい「文房具」の寄付でこんな問題が起こることも
実は、文房具の寄付を受け付けている団体はあまり多くはないのが実態。
そもそも、物を直接渡すという支援自体をしないというところも。
というのも、物を送ることで考えもよらなかった問題を引き起こすことがあるためです。
一体どのような問題があるのでしょうか。
課題1:文房具をもらえると依存させてないか
一度寄付した場合、いつまでどのくらい寄付するのか考えなければいけません。
寄付に頼りすぎてしまうと自立の気持ちがなくなってしまうこともあるでしょう。
そもそも、途上国を始めとする支援活動は、最終的に現地の人たちの自立を促進するのがゴール。
それを、文房具をはじめとする寄付によって依存させてしまっては本末転倒になります。
自分で努力しなくても他人から物が与えられるのでは彼らが援助に頼ってしまい、彼らの自立を妨げることになります。
関西NGO HP
特にその物資援助が一時的なものだとしたらどうでしょう。
それは送り手の自己満足で終わってしまいはしないでしょうか。
団体によっては、現地からの要請がないと文房具を寄付しないところも。
現地の気候や文化を考慮せずに、やみくもに物を送ると、送ったものが役に立たないことも多々あります。
フリー・ザ・チルドレン・ジャパンHP
そのようなことをふせぐために、事務局にまずはご連絡ください。
現地のニーズによっては、物資を現地に送ることができない場合もございますので、その場合はご了承ください。
寄付行為が途上国などの自立を妨害するかもしれない可能性を認識しておきましょう。
課題2:意外とかかる輸送コスト(関税など)を考慮しているか
文房具を途上国や被災地などに届ける場合、保管や梱包、検品、海上輸送、現地保管、現地輸送などの費用と労力がかかります。
場合によっては、関税もかかることがあるので、その手続きも考慮しなくてはいけません。
一般的には、送付にかかる費用を寄付者が負担するのですが、維持や管理に関する労力や費用などは含まれていません。
管理に手間がかかると、他の業務や本業の支援活動に影響する可能性が。
寄付行為が返って団体の運営にとって重荷になることを頭に入れておきましょう。
保管場所や維持管理費、現地までの運送費などの観点から、衣類、文房具、食器類は集めていません。
シャプラニールHP
国内のバザーやフリーマーケットなどで販売し、その収益によるご支援をお願いしています。
課題3:現地の産業育成の阻害要因になりかねない(現地調達の方が経済効果につながる)
文房具は途上国の極端な僻地や紛争地域でない限り、現地で入手できる場合があります。
文房具が手元にないのは、経済的な理由や文化的な理由(女の子は学校に行かなくてよい)がほとんどです。
実は、文房具を現地でも調達できるのに、むやみに外から持ち込むことで地場の産業の競争力の低下を引き起こしてしまうかもしれません。
むしろ、現地調達することで、市場の活性化にもつながり新たな雇用につながることもあります。
安直に与えることが、経済的に負の影響をもたらす可能性を念頭におく必要があるかもしれないですね。
現地までの輸送費のコストや、税関を通すための業務を考えると、現地で調達した方が効果的な支援を行えることが多いからです。
ワールド・ビジョンHP
また、現地調達を行ったほうが、支援地域周辺の経済的効果を見込むことができます。
まとめ:文房具の寄付は短期では効果的、長期の支援をするならやはり資金的な寄付も
途上国や被災地で文房具がないことで学校に行けない、学べない状態にある子どもがいるのは事実です。
緊急的に文房具が足りない場合、直接届けることで喜ばれるでしょう。
一方、現地の自立の阻害、管理の負担、地場産業への影響など負の側面があることも事実。
文房具が本当に現地で求められているものなのか、その影響を考慮しながら本質的な支援を見極めたいですね。
直接文房具を寄付する以外にも、リサイクル品として現金化し活用するなどの支援もあります。
資金化すれば、プロジェクト運営など含めあらゆる取り組みに活用でき、あらゆる効果が期待できます。
実際、ワールド・ビジョンのようにリサイクル業者と協働し、不用品を換金し支援活動に活用している団体も多く見受けられます。
他にも、チャリティショップなど実店舗に持ち込まれた文房具を販売し、収益の一部を支援活動に活用する団体も。
文房具を寄付したいと思ったとき、現地でのニーズを見極めながら、「換金」による寄付がいいのか、物をそのまま寄付する方がいいのか、検討してはいかがでしょうか。