途上国を中心に児童労働が問題となっています。
文字だけをみれば「子どもが働いている」こと。
何がいけないことなのでしょうか。
そもそも児童労働とは、15歳未満で就労し、または18歳未満で危険で有害な労働に従事することで、十分な教育を受けられずに、子どもに身体的、社会的、精神的、道徳的な悪影響を与えることです(国際労働機関 ILOの定義より)。
ここでは、児童労働の実態をより深く理解するために、児童労働の実例と定義、そして解決にむけわたしたちができることについてご紹介します。
目次
児童労働って、本当に起こっているの?実例をみると・・
ここでは、世界で起こっている「児童労働」の実例をご紹介します。
働いている子どもたちは、一体どのような環境で、どうして働くことになったのでしょう。
そして、子どもたちが抱える問題とは。
実例1:カカオ畑で働くオティ・ゴッドフレッドくん
ガーナに暮らすオティくん(当時13歳)は、7歳のころにお父さんを亡くしました。
3人兄弟の長男として家族の家計を助けるため、9歳からカカオ農園で働き始めました。
過酷な労働環境で1日中働き、学校にも通えない日々が続いていました。
カカオ農園での仕事はとても骨が折れます。
朝は、誰よりも早く、5時から農園へ行き、カカオの実を収穫しました。
(略)毒をもったヘビやサソリにかまれて亡くなる人もいます。
カカオ農園での仕事は作業が大変なだけでなく、危険がたくさんあります。
まるで強制労働のようでした。(ACE webサイト「カカオ畑での児童労働を伝えるため来日したゴッドフレッドくん(ガーナ)」より)
実例2:カーペット工場で働くスニタちゃん
ネパールに暮らすスニタちゃん(当時12歳)も、幼い頃にお父さんを亡くしています。
目の不自由なお母さんの代わりに生活を支えるため、カーペット工場で機織りの仕事をしていました。
劣悪な環境の13時間も工場で働きながら、家事もしていたので、学校へは行けませんでした。
夕方家に帰ったら、家事をしたり、山に水を汲みに行きます。
終わったら、工場に戻ってまた働きます
工場はほこりだらけで、目も喉も痛いです。(グッドネーバーズ・ジャパンwebサイト「スニタ、12歳。ほこりだらけの工場で毎日13時間働いています。」より)
実例3:売春宿に売られたサリナさん
インドに暮らすサリナさん(当時17歳)は、7人兄弟がいましたが裕福な家庭ではありませんでした。
家計を助けようと思った時、騙されて売春宿に売られてしまいました。
意図しない性産業への従事の末に、心身ともに傷つきました。
家に招かれ、勧められたお茶を飲むと、意識を失ってしまいました。
たぶん睡眠薬が入っていたのでしょう。
気がついたら電車に乗っていて、知らない男が隣にいました。
(略)
そして、連れて行かれた先は売春宿。
朝から晩まで、つらい暴力をたくさん受けながら、嫌な仕事をさせられ、食事も与えられず、 劣悪な環境でつめこまれるように眠る。そんな生活が何年も続きました。(かものはしプロジェクトwebサイト「だまされて売春宿に売られてしまう少女を、あなたの寄付で助けてください」よりより)
世界中で、約1億5200万人の子どもが働かざるをえない実態
2018年に発表された国際労働機関(ILO)の報告書「Global Estimates of Child Labour」によると、世界では約1億5200万人の子どもたちが、十分な教育を受けずに働いています(男子 約8800万人、女子 約6400万人)。
そのうち、約7300万人は、「危険有害労働」といって、売春、ドラッグ、強制労働といった最悪の形態の労働に従事しています。
ここでは、児童労働の実態を「地域別」「産業別」「年齢別」で見ていきましょう。
地域別で見る児童労働
地域別では、アフリカが約7200万人、ついでアジア太平洋の約6200万人と続き、大半を占めています。
この数字は、アフリカ全体の子どもの約20%が、アジア太平洋では約7%の子どもが児童労働に従事していることを意味します。
産業別で見る児童労働
産業別でみると、農業の児童労働が約1億800万人と児童労働全体の約70%を占めています。
家庭内の農作業に無給で従事している状況がほとんどです。
次に、サービス業が約2600万人で約17%、工業が約1800万人で約11%と続く。
また、地域別での児童労働の産業をみると、アフリカでは農業が約85%なのに対し、アジア太平洋では、約57%に留まります。
むしろ、アジア太平洋では工業が、約21%と他の地域よりも多い状況です。
年齢別で見る児童労働
年齢別にみると、5歳から11歳までの子どもが約7200万人(約48%)と最も多く、12歳から14歳までが約4100万人(約28%)と続きます。
危険有害労働では、15歳から17歳が約3700万人と最も多く、5歳から11歳の約1900万人、12歳から14歳の約1600万人と続きます。
参考:さらに詳しいことを知りたい場合は、「児童労働の世界推計:推計結果と趨勢、2012~2016 年」をご覧ください。
2025年までに児童労働をなくしたい!目標は達成できる?
児童労働に国際社会が取り組んできた歴史は長く、国際労働機関(ILO)の設立時(1919年)より始められています。
以降、ILOを中心に各国は、児童労働根絶への挑戦を続けています。
2015年には国連で「ミレニアム開発目標」の後継として新たに、2030年までの貧困問題や環境問題のない社会の実現を目指した「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択され、児童労働への取り組みが進められています。
このSDGsの児童労働に関する目標は次の通りです。
目標8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終わらせるための迅速で効果的措置の実施、最も劣悪な形態の児童就労の禁止・撲滅を保障する。
2025年までに少年兵の徴募や利用を含むあらゆる形態の児童就労を撲滅する。(SDGs webサイトより)
国際レベルの取り組みにより児童労働は減少傾向
確かに、これまでの国際レベルでの取り組みにより、児童労働は減少傾向にあります。
ILOの報告書によると、2000年には約2億4500万人だった児童労働が、2016年には約1億5200万人と減少傾向にあります。
危険有害労働も、2000年の約1億7000万人から2016年の約7200万人と半数以上も減少。
地域別、年齢別で見ると減少が進んでいないところも
依然、児童労働の撲滅には課題も多く残されています
一見、児童労働の絶対数は減少しているように見えます。
しかし、地域別にみるとアフリカでは2012年から2016年の児童労働を比較すると、1ポイント増加。
減少傾向とは言えない状況です。
また、年齢別に見ても、15歳から17歳の児童労数は2012年から2016年にかけて約1万人程度減少。
一方、5歳から11歳までの児童労働の減少は、約480人と15歳から17歳の子どもに比べて停滞しています。
また、性別でみると2012年から2016年の男子の減少率約12%であるのに対し、女子は約6%。
女子の児童労働の減少率は、男子のそれの半分程度という結果が出ています。
児童労働の撲滅には、上記のような個別の課題などがまだまだ残されています。
先に述べたSDGsの目標(児童労働の撲滅)を実現するためには、もう少し急ぐ必要があります。
ILOによれば、今のペースでは、2025年にも依然として約1億2100万人が児童労働に従事している計算になるそう。
根絶には、到底及びません。
まとめ:わたしたちにできること
児童労働の歴史は長く、何十年以上も国際レベルでの取り組みが進んできたました。
その結果、一定の成果が見られましたが、根絶するためにはさらなる取り組みが必要となります。
地域や性別、産業構造といった個別の事情に応じた細かな対応が重要になってくるでしょう。
児童労働への取り組みは、国際機関だけでなく、多数の国際NGOなどにより、草の根のレベルで行われてきました。
こうした国際NGOは、現地での活動に重点を置くところが多いため、それぞれの子どもたちに寄り添った活動を行っています。
児童労働の根絶。実現するために、わたしたちひとりひとりは一体何ができるでしょうか。
日本でも懸命に活動を続けるNGOがあります。
これらのNGOへの寄付によって児童労働の根絶に向け貢献ができると思います。
これ以外にも児童労働に関する知識を得る、自ら現地に赴きプロジェクトを実施するなど様々あると思います。
撲滅に向けた最初の一歩。
それは、遠いどこかで起こっていることとして捉えるのではなく、自分ごととして捉え何ができるか考えること。
わたしたちひとりひとりの一歩は小さいけれど集まれば、世界の子どもたちの未来を創ることができると思います。
そして、これは新たな時代に生きるわたしたちの使命ではないでしょうか。
この記事を読んだ方にオススメ
途上国の子どもを支援したい、そんなあなたにおすすめの寄付先を3つご紹介します。
寄付先の選び方を知りたい、おすすめの寄付先を教えてほしい、そんなあなたに読んでいただきたい記事です。
みんなはどんなところに寄付しているの?寄付ナビの読者が選んだ最新の寄付先ランキングです。