(出典:国連UNHCR協会HP)
86,531,669人。
この数字は何を表していると思いますか?
答えは、難民支援を行うUNHCRが2019年に支援対象とした人の数です。
全人類のうちおよそ1%もの人たちが、紛争や暴力などで迫害を受け避難を余儀なくされたことになります。
これほど膨大な数の人が支援を必要としていることに、衝撃を受けた方もいるでしょう。
しかし難民が具体的に何に困っているのか、どのような支援が必要なのか、少し理解しにくいと感じている方も多いはず。
そこで今回の記事では、世界で起きている難民問題やUNHCRの活動内容、日本での取り組み、支援方法などをできるだけわかりやすく解説してみました。
難民問題やUNHCRについて知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
UNHCRとは世界各地で難民問題の解決に取り組む国連機関
まずはUNHCRとはどのような機関なのか、難民とはそもそもどのような人なのでしょうか。
UNHCRとは
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)とは、難民問題の解決に取り組む国連機関のひとつです。
正式名称はThe Office of the United Nations High Commissioner for Refugeesですが、長いのでUNHCRと略称で呼ばれています。
UNHCR設立のきっかけとなったのは、第二次世界大戦で避難を余儀なくされ、家を失った何百万人ものヨーロッパ人の存在でした。
その後、難民問題が拡大・複雑化したため、UNHCRは世界各国の政府や民間団体から支援を受け、約130ヶ国で活動を続けています。
緒方貞子さんという名前を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
この方はUNHCRを統括する国連難民高等弁務官を、日本人として初めて務めた方です。
難民は人種や宗教、紛争などが理由で迫害を受ける恐れがある人々のこと
一言で説明すると難民とは、人種や宗教、政治的な意見、紛争、人権侵害などを理由に、自分の国にいると迫害を受ける恐れがある人々のことを言います。
想像してみてください。
政治に関する意見をしただけで命が狙われることを。
このような状態にある人は生きるか死ぬかの瀬戸際にいるため、その後の生活を考える余裕もなく逃げ出すことになります。
そのため他国はもちろん、国内の別の場所に避難をした方々でも、生きるために基本的な衣食住などを確保することが難しいです。
ましてや教育などはもってのほかでしょう。
そしてそれは、遠く離れた場所だけで起きている問題ではありません。
難民条約の締結国である、ここ日本に逃れてくる難民の方もいます。
UNHCRは世界各地にいる、明日を生きることさえ難しい人々に対して支援活動を行っているのです。
UNHCRの主な活動内容は難民の緊急援助と自立支援
UNHCRの主な活動内容は、緊急支援と自立支援の2つです。
緊急支援
緊急支援では逃げてきた難民に、住居や生活に必要な物資の支援を行い、彼らが迫害の恐れのある自国へ送還されることがないよう努めています。
難民にとって命が狙われる自国に帰ることは、最も危険なことです。
かといって、逃れてきた場所で家や仕事がないまま生活することもできません。
UNHCRはそのような人々が生活を続けられるよう、雨風から身を隠せるテントや寒さをしのぐ毛布、食糧や医療なども届けています。
緊急支援活動の事例のひとつとしてシリア難民への援助があります。
イラクやヨルダンなどシリア周辺国では冬は気温が氷点下に。
UNHCR(国連UNHCR協会)HP
シェルターは凍えるようなすきま風で底冷えし、夜も眠れない寒さとなります。
UNHCRは、難民キャンプやキャンプ外に暮らす難民に、布やトタン一枚のシェルターの壁や天井を補強・補修するための防寒材や工具を提供。
凍てつく寒さから難民を守ります。
自立支援
自立支援では子どもへの教育や女性のエンパワメントを行っています。
子どもが未来を生き抜くため、教育を受けることはとても重要です。
また男性が戦争に駆り出されたり、戦闘で亡くなられたりした場合、女性が家族を支えていくことになります。
しかし避難生活のなかで、暴力にさらされてしまう女性も少なくありません。
UNHCRは社会的・経済的に弱い立場に追いやられてしまいがちな子どもや女性を、積極的に支援にしています。
紛争や迫害で避難している子どもの難民のうち、学校に通う年齢に到達している子どもの数は710万人。そのうち40%以上を、実はたった5か国、トルコ、レバノン、パキスタン、スーダン、ウガンダが受け入れています。
UNHCR(国連UNHCR協会)HP
これらの国々では、多くの難民を受け入れているため、学校が不足して教室が混み合い、教師の数が足りないだけでなく、机や椅子、学習用品も十分に行きわたっていません。
すべての難民の子どもが、避難先で教育を受けられるようになるためには、受け入れ国の協力だけでなく、世界からの支援が必要なのです。
これらの支援に加えて国連機関という立場から、UNHCRは政策提言や国際会議で支援団体のイニシアチブを取り、難民問題の恒久的な解決に取り組んでいます。
UNHCRの活動実績 | ノーベル平和賞を2回受賞
UNHCRは1954年と1981年にノーベル平和賞を受賞しています。
1954年には東西冷戦下に難民を政治的かつ法的に保護した活動に。
1981年には難民の移住と定着、処遇を改善する活動に対してノーベル平和賞が授与されています。
ちなみに国連機関でノーベル平和賞が授与されたのは、1951年のUNHCRが初めてとなります。
また2019年の支援総額はおよそ36億米ドル。
日本円にして3,600億円以上もの募金が世界中から集まっています。
※参照:Voluntary contributions in 2019 | USD – UNHCR’s 2020-2021Financial Requirements
日本国内で広報と寄付集めを行う国連UNHCR協会
ノーベル平和賞を2度受賞し、世界中から支援が集まるUNHCRですが、日本ではどのような活動が行われているのでしょうか。
UNHCRの日本公式窓口は国連UNHCR協会という認定NPO法人です。
日本全国で広報と募金活動を行っています。
主な活動としては以下の3つ。
- お手紙やお電話で支援のお願い
- 商業施設や街頭でのキャンペーン
- イベント(世界難民の日、WILL2LIVEムーブメント)の実施
駅前などの街頭で活動を見かけた人も多いのではないでしょうか。
世界各国で活動するUNHCRの支援を行うために、これらの活動を通じて国連UNHCR協会は、個人や団体から寄付金の募集や難民問題に興味関心を持つ人を増やしています。
寄付金の使い途や個人でUNHCRを支援する方法
国連UNHCR協会へ寄付することで、日本にいながら難民支援ができます。
最後に具体的な寄付の仕方や使途を紹介します。
寄付でできること
UNHCRに寄付をして難民の方に貢献したいと思った人は、公式窓口である国連UNHCR協会への寄付を通じて支援することができます。
寄付金の使い途はたくさんあり、皆さんが託したお金はUNHCRが最も必要とされる活動に充てられます。
下記がその一例です。
・月3,000円
避難先でも学校教育が受けられる教科書49人分
・月4,500円
避難中でも、家族と温かい食事が取れる調理器具セット30人分
・月10,000円
暑さや寒さ、風雨から家族を守るテント2張
・月15,000円
安全な水を供給できる小規模な浄水システム4台
(参照:ご寄付でできること– 国連UNHCR協会)
2019年に国連UNHCR協会に送られてきた支援総額はおよそ40億円にものぼります。
割合としては個人からの寄付が92%を占めており、それだけ難民問題に関心を持つ人が多いことが伺えますね。
寄付の方法
個人でUNHCRの活動を支援したいという方は、国連UNHCR協会に毎月の寄付や単発の寄付をすることからはじめられます。
・毎月の寄付
月1,000円以上、500円単位で寄付を行うことが可能です。
クレジットカードまたは口座振替で簡単に申し込みできます。
・単発の場合
1,000円以上から1,000円単位で寄付が可能です。
支払い方法としては、クレジットカードやコンビニエンスストアでの申し込みに加えて、郵便局などからも支払いできます。
国連UNHCR協会は、認定NPO法人ですので寄付金控除の対象となります。
寄付をすることで所得控除や税額控除を受けることも可能です。
また寄付をした方には感謝状も送られてくるそうです。
(参考:よくあるご質問– 国連UNHCR協会)
その他の支援
また寄付以外にUNHCRの活動を支援するのに、以下のような方法もあります。
- イベントへの参加やSNSで友人に広める
- UNHCRを支援している企業の商品やサービスを購入する
- 街頭で募金活動を行うファンドレイザーになる
難民問題についてもう少し理解を深めたいという方は、このような支援から始めてみてもいいかもしれません。
以上、UNHCRがどんな問題の解決に取り組んでいるか、活動内容や寄付の方法について紹介しました。
難民について知らなかった方は知ることから、支援を考えていた方は自分なりにできることから始めてみてはいかがでしょうか。