なぜ「寄付すると、幸せになれる」と断言できるのか?心理学実験で分かった、意外な事実

「寄付をする」というと、「他人のために自分を犠牲にする」という印象も少なからずあるかもしれません。
「奉仕」「利他」「無私」といった言葉から、連想されるイメージです。

ところが寄付をしたことがある方ならお気付きと思いますが、「困っている人の役に立てた」「共感している活動に一体感を感じられる」といったように、寄付をすることでポジティブな気持ちになる方が多いようです。

実は、寄付によってお金を出した方ご自身の「幸福度をアップする」効果があると明らかになっているのです。

渡された5ドル紙幣の使い方、封筒の指示にしたがうと・・

ある夏の晴れた朝、カナダのバンクーバーのこと。
研究者たちのグループは、封筒が入った箱を持って通行人に近づき、ちょっと変わった頼み事をしました。

実験に参加することを承諾してもらえたら、まずどれくらい幸福かを尋ねて電話番号を教えてもらい、次に、謎の封筒の1つを渡したのです。
封筒を開けてみると中には5ドル紙幣と、短い手紙が入っていました。
(出典:「幸せをお金で買う」5つの授業(エリザベス・ダン、マイケル・ノートン))

一部の人々の手紙には、次のような指示が書かれています。

・Aパターン「今日の午後5時までに、自分への贈り物か、自分のための支出(たとえば、家賃、支払い、または借金の返済など)のどちらかのためにこの5ドルを使ってください。」
・Bパターン「今日の午後5時までに、だれかへの贈り物か、チャリティーへの寄付のためにこの5ドルを使ってください。」

こうしたお金の使い方は、実験対象の方々の幸福度にどのような影響を与えたでしょうか?

「他人のためにお金を使う方が、幸福度が高まる」実験で示された意外な事実

その晩、実験グループは一人ずつに電話をかけていきました。
「何にお金を使ったか?」「今どれくらい幸福と感じているか?」を尋ねたのです。

他人のためにお金を使うよう指示された人は、たとえば次のように支出しました。

・親類の子どものためにおもちゃを買う
・ホームレスにお金を与える
・チャリティーに寄付する

すると意外な傾向が、数字ではっきりと分かりました。

1日の終わりに、他人のためにお金を使った人々は、自分のために使った人よりも明らかに幸福感が高まっていました。
その日の朝には、2つのグループ間にそうした違いは見られなかったにもかかわらず、です。

この1つの実験結果だけでは、「偶然なのでは?」や「特殊な条件があったからじゃないの?」と感じる方もいるでしょう。
しかし、同じような傾向は複数の研究によっても裏付けられています。

「お金持ちだけの特権」ではなかった・・貧しい国でも、同じ結果が!

たとえば米科学誌サイエンスに掲載された論文によると「ボーナスの3分の1を社会のために使った人では、社会のためにまったく使わなかった人よりも、幸せ指数が20%高かった」 そうです。

またハーバード大学の研究によると、「プレゼントを買ったり、慈善事業に寄付した人は、1日の終わりに幸福度が大きく高まり、自分のためにお金を使った人の幸福度は変わらなかった」という結果が出ています。

(出典:「幸福の習慣」トム・ラス・ジム・ハーター

さらに興味深かったのは、これと同じ傾向が出るのは、カナダのように裕福な方が多い先進国には限らないこと。
「一人あたりの収入が下位15%に入る」ウガンダでも同じ実験を行なったところ、「他人への投資が幸福度を高める」という結果が出た(前掲書より)というのです。
136カ国のうちの120カ国では、前の月にチャリティーに寄付した人々は、人生により多くの満足を感じていました。

この関係は、貧しい国でも豊かな国でも同様に見られ、個人の収入を考慮したあとでも変わりませんでした。

驚くべきことに、全対象国の平均で「チャリティーに寄付することは、家庭の所得を2倍にするのと同じくらい幸福度に貢献していた」という数値が出ていたそうです。

「寄付をすると、幸せになれる」というと、なんだか怪しく聞こえるかもしれません。

ですが、「他人のためにお金を使う方が、自分のために使うより幸福度が高まるという傾向は、さまざまな先行研究によって既に定量的に実証されています。

そして重要なことですが、それはお金持ちだけの特権ではないのです。

私自身の体験でも、月1,000円〜の寄付が「仕事に前向きに励む活力」に

私自身も、これまでいくつかのNPOやNGOに寄付をしてきましたが、寄付という行為によって力をもらってきたのを実感しています。

一例を挙げると、学生時代にボランティアで参加していた「認定NPO法人カタリバ」という団体に、毎月1,000円〜のサポーター会員として寄付をしています。

20代の頃から寄付を続けていたのですが、一時期給料が1万円昇級するごとに、毎月の寄付額を1,000円ずつ増やす」というルールを課していました。


カタリバに寄付する「サポーター会員」を10年以上続けての感想と、申込前のチェックポイント
ベンチャー企業でガツガツ働きながら、「自分がやっている仕事は、本当に社会のためになっているのか?」そんなことをモヤモヤ抱えながら時。

「頑張って得られた報酬が、自分以外の大切なもののために役立つ」という感覚は、仕事に前向きに励む活力となっていたのを覚えています。

支援者向けの報告会に出席した時に、かつての古巣が頑張っている姿に刺激されました。

メールや冊子などで活動報告を読むたび、「自分も負けないように走ろう!」と力をもらっていました。

他にも、シリアやロヒンギャなどでの難民の虐待心を痛めていた時、国境なき医師団やUNCHR協会などに寄付をして、「多くはできなくても、少しでも自分にできることがあれば嬉しい」という気持ちになったものでした。

また、日本国内の教育格差に取り組む「スタディクーポン」に、亡くなった父から聞いた話を偲びながら、クラウドファンディングで支援をしたこともあります。

収入の何%を寄付に回すのがよい?「向社会的総支出」の目安

もちろん、「他人のためにお金を使うと、幸せになれる」からと言って、収入のすべてを自分のため以外に回してしまうのは、現実的ではありません。

「年収の1%は寄付に回す」といった目標を立てている方も、いらっしゃいますね。

「自分のために使う金額」(私的総支出)と「他人への投資」(向社会的総支出)はどのようにバランスさせていけばよいのでしょうか?

前掲書の著者(エリザベス・ダン氏とマイケル・ノートン氏)が紹介している考え方は・・

誤解しないでもらいたいのですが、私たちは、住宅費と交通費のすべてを経験と寄付に回すことが非現実的であるのはわかっています。
けれど、ちょっとした小さな買い物ですら、ある1日の私たちの幸福に影響を与えるのでしたね。

自分に問いかける質問は「自宅を売って、その代金のすべてをアメリカ赤十字に寄付するべきか?」ではなくて、「1週間に5ドルずつ、あるカテゴリーから別のカテゴリーに移すことができるか?」なのです。

他人への投資といっても、いろいろなお金の使い方がありますね。

身近なところでは、知人や友人へのお祝いやプレゼント。

そしてチャリティ団体への寄付やクラウドファンディング、ふるさと納税といった、より公共性の高い支出。

他にもたとえばnoteでのサポートや、showroomでの投げ銭などもこれにあたりますね。
さらには税金や社会保障といった、制度として組み込まれている支出も含んで考えてもよいかもしれません。

「向社会的総支出」という観点で、お金の使い方を見直してみよう!

とこの記事を書きながら、私自身は考えました。

寄付をはじめとした「他人への投資」について、今まで考えてなかった方はお金の使い方で意識してみてはいかがでしょうか?
「社会のため」の行動が、自らの幸福度を高めるうえで、思わぬ効果があるかもしれません。

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