(出典:こども食堂ネットワークHP)
「今晩のご飯はボク1人なんだ」
こども食堂ネットワークHP
「お母さんがお仕事の日はお弁当を買って食べるの」
このような状況の子どもに、栄養満点の温かいご飯を提供しているのが「子ども食堂」です。
子ども食堂は、「手作りのご飯がなかなか食べられない子どもに、ご飯を提供するところ」と捉えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、子ども食堂は温かいご飯を子どもに提供する以外にも重要な役割を担っています。
この記事では
- 子ども食堂がどんなところなのか
- 子どもの貧困を取り巻く背景と子ども食堂の意義
- 活動に対する疑問や批判
- 実際に運営している人の声
- 子ども食堂を支援したい人ができること
についてわかりやすく紹介します!
目次
子ども食堂は栄養のある温かいご飯が食べられて、地域の人が助け合える場
まずは子ども食堂はどのようなところなのか、子ども食堂が担っている役割とともに紹介します。
子ども食堂とは
子ども食堂とは、子どもが1人で入れて、無料または低額でご飯を食べられるところです。
東京都大田区にある「きまぐれ八百屋 だんだん」が、子ども食堂の始まりでその1号店とされています。
子ども食堂という名前も、店主である近藤博子さんが名づけられました。
気まぐれ食堂だんだん – アメーバブログ
そして全国各地にもネットワークが広がっていき、2020年には合計5,000を超える子ども食堂があることがわかっています。
こども食堂全国箇所数調査2020結果NPO法人むすびえ
また子ども食堂が全国に広まったことから、子ども食堂を題材にした映画も放映されました。
子ども食堂の役割は子どもの貧困対策と地域の交流拠点の2つ
なぜ子ども食堂は全国にこれだけ広がっていったのでしょうか?
そこには日本の子どもを取り巻く社会課題が背景にあります。
相対的貧困の状態にある子どもへの食事の提供
暮らしが豊かになっていると思える日本ですが、実は9人に1人の子どもが相対的貧困の状態にあると言われています。
平成28年 国民生活基礎調査の概況厚生労働省
相対的貧困とは、簡単に言えばその国の一般的な水準よりも貧しい状態のことです。
各家庭の事情にもよりますが、ひとり親など経済的に困難な状態にある家庭の子どもは、栄養のある食事を取りづらくなります。
子ども食堂は、苦しい状況にある子どもが必要な栄養を取り、健康的に発達していくためのセーフティーネットのような役割を果たしているのです。
大人も子どもも地域で支え合えるコミュニティづくり
また子どもの貧困に拍車をかけている事象として、地域コミュニティの希薄化があります。
都市化が進む日本の生活は、今やとても便利になっています。
しかしその反面、近所の人同士のつながりが無くなり、核家族化などもあいまって、困った時に近隣同士で助けあうことが難しくなっているのです。
社会で孤立した家庭が経済的に苦しい状況になると、子どもはますます頼れる人がいなくなります。
人同士のつながりが希薄になるなかで、子ども食堂は近所の人たちが集まるコミュニティとなり、ご飯を提供するだけでなく、困ったことを相談するなどお互いが助けあえる場としても機能しています。
そのため子ども食堂は子どもだけでなく、大人が利用することも珍しくありません。
地域の大人同士が支え合うことで余裕が生まれ、子どもが栄養のあるご飯を食べられるようになっているのです。
子ども食堂の活動に対する疑問や批判
子どもの栄養を補い、地域のつながりを生むという良い側面をもつ子ども食堂ですが、活動に対する疑問や批判的な意見もあります。
たとえば、親が子ども食堂に頼りがちになって、ご飯を作らなくなってしまうのではという意見です。
子ども食堂 別に困ってない人が来ることについて
親に放置されて給食しか食べられてないとか、いつも一人で食べてるとかそういう子どもたちのために始まって今流行ってますよね?
Yahoo!知恵袋
TVで見ただけですが両親が自営で忙しいから一人で来てる子どもとか、母子家庭で仕事してて食事作る時間がないから母子で来てるとか安く食べられるから両親揃って家族全員で来てるとかなんか見てて微妙な感じじゃないですか?
親が楽したいから子ども食堂に来てるだけに見えるけど、こういうのも有りなんでしょうか?
確かに親が全くご飯を作らないというのは、良くないことです。
しかし、ひとり親家庭はともかく、家族で子ども食堂を利用している場合、家庭が何かしら困難を抱えているのかもしれません。
例えば、不況で職を失ってしまった、病を患ってしまいなかなか仕事が見つからないなどです。
親がどれだけ頑張っても解決できないこともあり、国や自治体など公的な支援がないとどうしようもないこともあるのです。
実際に子ども食堂を運営されている方の声 | にしなり☆こども食堂
上記の疑問などをもとに、大阪の西成区で実際に子ども食堂をされている、「にしなり☆こども食堂」の運営団体の代表理事、川辺さんにお話を伺ってみました。
「にしなり☆こども食堂」ができたのは2012年。
食堂を利用する8割くらいはひとり親家庭だそうです。
団体としては子ども食堂を開始する前から、子どもたちに対して料理教室を行うなど様々な活動をされていましたが、なぜかイライラしている子どもが多かったと話す川辺さん。
喧嘩は日常茶飯事で、子どもが暴言を吐いてしまったりすることで悩まれていたそうです。
そしてその原因を、子どもたちがしっかりとご飯を食べられていないからではと考え、子ども食堂を開始。
活動を続けていくなかで、子どもたちがきつい言葉を言ったり、喧嘩になったりする理由が次第にわかるようになったと言います。
それは、子ども自身がきつい言葉を言われているということ。
そしてその親も、頑張って仕事や育児をしているけど思うようにいかず余裕がないこと。
また地域にも頼れる知り合いがおらず、親が寂しい思いをして負の連鎖が起きているのではないかということです。
川辺さんは、5年ほど関わっていたあるお母さんから、
「川辺さん、私ずっとひとりぼっちだったんです。この食堂に来てから、子どもたちが街で声をかけてくれるようになりました。この地域で生活してきて、そんなことは今までありませんでしたが、それから私はひとりじゃないんだって、この地域で生きているんだと思えるようになったんです」
と言われたそうです。
子ども食堂のその先。自己責任で終わらせずお互いに頼れる環境を
食堂でご飯を提供することで、子どものイライラやきつい言葉はおさまってきて、変わってきていると話す川辺さん。
一方で変わらないこともあると言います。
それは子どもが家に帰ったとき、家庭のしんどさは変わらないいうことです。
子ども食堂は営利目的で行われているわけではありません。
そのため毎日食事を提供しているわけではなく、週1-2回だけ活動しているというところが多いです。
「にしなり☆こども食堂」は2021年4月現在、ご飯を提供しているのは月曜日、火曜日と土曜日の週3回。
問題を解決していくには、人と人とがつながり、どうやって苦しい家庭を継続して支えていくのか、自己責任ではなく支え合える環境が必要。
たとえば、滞在型の親子支援などで一緒に住むことによって、親子に当たり前の生活を体験してもらうことが大切、と川辺さんは話されます。
「朝起きたら『おはよう』と声をかけて、ご飯が用意されている。そういう環境であれば、当たり前の生活を当たり前に送るなかで、子どもだけでなく親が頼れるつながりができ、支え合うことができます。」
しかし、ひとつの団体が頑張ったとしても、資金面や人手などの面で壁にあたることもあります。
そのため国や自治体からのバックアップなども必要です。
農林水産省が子ども食堂へ備蓄米を提供するなど、国が子ども食堂の支援を後押しする活動を行っています。
子供食堂と連携した地域における食育の推進農林水産省
このようなことを踏まえると、地域の人同士で支え合える子ども食堂のような場を生かしつつ、社会全体や地域として困難な状況にある家庭や、子どもを救う手段を考える必要があるのではないでしょうか。
子ども食堂の立ち上げ方やボランティアの仕方、食材を提供する方法
紹介してきた子ども食堂ですが、実は誰でも立ち上げることができます。
また人手が足りないときにボランティアとしてお手伝いしたり、食材を支援したりすることも可能です。
子ども食堂の立ち上げ方とネットワークへの参加方法
冒頭で紹介したように、子ども食堂はもともと八百屋さんの店主が、自発的に子どもたちにご飯を提供しはじめたのがきっかけです。
運営方法について、特定の団体が取りまとめているわけではありません。
そのため極端な話、今日からでも子どもたちに食事を提供することで力になることができます。
また、地域の子ども食堂を運営している人たちが交流を広げる連絡会「こども食堂ネットワーク」というものがあります。
このこども食堂ネットワークに参加すると、自分で運営する子ども食堂をウェブサイトに掲載することが可能です。
その場合、ネットワークが定める以下の手続きやルールを守る必要があります。
- こども食堂ネットワークに参加同意書を提出する
- 著しい営利目的で運営したり、特定団体への勧誘を目的したりしない
- ウェブサイト掲載に必要な情報をこども食堂ネットワークに送付する
詳しい手順や子ども食堂の作り方については、こども食堂ネットワークのサイトをご確認ください。
こども食堂の作りかたこども食堂ネットワーク
子ども食堂でボランティアしたり、食材を提供する方法
子ども食堂を作るのは難しいけど、空いている時間にボランティアや食料の支援をしたいという人もいるかもしれません。
何か力になりたいという人は、近くにある子ども食堂に連絡をとってみてください。
こども食堂ネットワークに掲載されている団体は、コチラから調べることができます。
各団体がお手伝いをしてくれるボランティアを必要としているのか、食材を必要としているのか、確認することも可能です。
突然訪れたり、食材を送ったりすると運営している方が困るかもしれませんので、一度問い合わせてから、協力するようにしてくださいね。
子ども食堂に寄付をしたい人は地域の食堂やNPO経由で支援可能
ボランティアや食材の支援以外にも、子ども食堂の活動を応援をしたい人は寄付を通じて支援可能です。
寄付するには、以下2つの方法があります。
- 近くの子ども食堂を調べて直接寄付をする
- 子ども食堂を支援するNPO法人に寄付をする
身近なところにある子ども食堂に寄付をしたいときは、その運営者が寄付を集めているか確認してみてください。
運営者さんによっては、ウェブサイトを運営していてそこから寄付をすることができる場合があります。
その他には、地域の子ども食堂の連絡役になっている団体や、全国的に子ども食堂を支援しているNPOに寄付をすることで、子ども食堂を支援できます。
自分が住んでいる地域の子ども食堂に寄付をしたい方は、そのネットワークを担っている団体に寄付してもいいかもしれません。
この場合、こども食堂ネットワークのウェブサイトから寄付先を調べることが可能です。
また全国的に子ども食堂の活動を応援したい場合、広く子ども食堂の運動を支援しているNPO法人に寄付をすることをおすすめします。
子どもが歩いていけるところに安心・安全なこども食堂がある、という状態の実現を目指しています。
事業紹介 – むすびえ
NPO法人全国子ども食堂支援センターむすびえは、このような目標のもと全国各地の子ども食堂ネットワークの支援活動を行っています。
日本全国で子ども食堂の活動を普及していきたい人は、このようなNPOへの寄付も検討してみてはいかがでしょうか?
以上、子ども食堂の役割や取り巻く課題、支援する方法について紹介しました。
少子高齢化が進む日本で、子どもは未来を担う宝物のような存在です。
日本に住む子どもたちみんなが健やかに育てるよう、一人でも多くの人が子ども食堂の活動を後押ししてくださることを願っています。
<取材協力>
特定非営利活動法人西成チャイルド・ケア・センター
代表理事 川辺康子さま