「子どもの貧困」日本の現状は?5分で分かる定義と、貧困家庭の子供の実例

「子どもの貧困」の現状について、時折マスコミやネットで話題になっています。

そもそも子供の貧困の定義は?
2017年現在、GNPが世界第3位の先進国日本で、本当に子どもの貧困があるのでしょうか?

実例や統計をもとに、日本における「子どもの貧困」の現状を解説します。

子どもの貧困の実態は?この日本で本当に起こっているの?

まず、日本で本当に起きている「子どもの貧困」の2人の実例をピックアップしてみました。

実例1:両親離婚、父失業、5人兄弟長女

子どもを支援するNPOカタリバに以下のさくらさん(仮名)の実例が紹介されていました。

環境

  • 家族構成:両親が離婚後、父と幼い弟2人と妹2人の5人暮らし。
  • 家計:父が重い病気になり、失業。
  • 食:三食満足に食べれない。
  • 住:暑い夏にクーラーなし。
    幼い弟妹が騒がしい。
  • 勉強:暑くてうるさくて、勉強できる環境ではない。
    塾にはもちろん行けない。

当時の心情

勉強したいのに、できない(中略)
だんだん自信もなくなり「自分は何もできない人間だ」と思う(中略)
「将来に希望を持つ」「夢を描く」(中略)には程遠い

カタリバHP

支援を受けた後

毎日、放課後教室で夕食の提供と勉強を教わる支援を受ける。
涼しい環境で、みんなで楽しく食事をしてお腹もいっぱいになり、成績も上がって、希望も湧いてくる。
英検3級に合格し、100点を取れるようになった得意な英語を活かして「海外で活躍したい」という夢が出てきた。

実例2:とある母子家庭の男の子

チャンス・フォー・チルドレンが支援をした、とある男の子の事例が掲載されていました。

環境

  • 家族構成:父が3歳の時に他界。母と弟たちの母子家庭。
  • 家計:生活保護と母の事務パート代で生計。余裕がなく貧しい生活。
  • 高校生時:母がガンで入院し、弟たちの世話と家事をこなしながら通学。(その後母親は回復)

当時の心境

母が入院中、弟たちの世話と家事をこなしながら学校へ通っていました。
母が夜遅くまで働きながら、家事や僕たちの世話をしてくれたありがたみを痛感しました。

チャンス・フォー・チルドレンHP

支援を受けた後

学習塾の費用を支援してもらい、必死で勉強。
大学に合格して、現在は週5日アルバイトしながら、学費と母へ渡す生活費を賄う。
楽な生活ではないが、希望はある。

日本の子どもの7人に1人が「相対的貧困」って、どういうこと?

事例を紹介しましたが、自分の身の回りに「貧困」状態の子どもがいる、と言われても、ピンとこない方も多いのではないでしょうか?
現代の日本には、「食べ物に事欠く」「住む場所がない」といった、衣食住など生活ができないレベルの極度の「貧困」状態にある子どもは、実際には多くありません。

日本で問題になっているのは、「相対的貧困」。
“家族団欒の食卓”や“友達と塾通い”といった、現代の日本でごく普通と思われることが叶わない状態、というと(少しアバウトな説明ですが)イメージしていただきやすいかもしれません。

「相対的貧困」とは?定義をひもとくと・・

「相対的貧困」とは、内務省ウェブサイトの資料によると、以下のように定義されています。

厚生労働省が公表している相対的貧困率1の算出方法を参考とし、等価可処分所得(世帯の可 処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分(貧困線)に満たない世帯 を「相対的貧困層」と定義。

(出典:相対的貧困層について

簡単に言うと、国の平均所得の半分以下の家庭が「相対的貧困」層です。

貧困線に当たる、国の平均所得の半分とはいくらでしょう?
厚生労働省の公表している「各種世帯の所得等の状況」(貧困率の状況 P15)によると、2015年時点での貧困線に当たる年収は122万円です。

日本の子供の7人に1人が「相対的貧困」という統計

厚生労働省の公表している「各種世帯の所得等の状況」(貧困率の状況 P15)によると、2015年の「子どもの貧困率」(17 歳以下)は 13.9%。
これは、日本在住の子どもの7人に1人が「相対的貧困」となっている現状を表しています。

特に「ひとり親家庭」の子供の貧困率は高く、「2人に1人」というデータも。

子どもの相対的貧困率は1990年代半ば頃からおおむね上昇傾向にあり、平成21(2009)年には15.7%となっている。
子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は14.6%であり、そのうち、大人が1人の世帯の相対的貧困率が50.8%と、大人が2人以上いる世帯に比べて非常に高い水準となっている。

(出典:平成26年版 子ども・若者白書    第3節子どもの貧困 – 内務省)

ちなみに、内務省が公表している「平成26年版 子ども・若者白書」第3節に、経済協力開発機構(略称OECD=Organisation for Economic Co-operation and Development)がまとめた「相対的貧困率の国際比較 2010年 子どもの貧困率」が掲載されていました。
OECDに加盟している34カ国で、相対的貧困率を比較すると、日本は10位(2009年時点)という高さでした。


(出典:平成26年版 子ども・若者白書    第3節子どもの貧困 – 内務省)

どんな子どもが貧困家庭にいるのか?

見た目

貧困家庭の子供は、見た目ではなかなか判断できないようです。

6人に1人の子どもが貧困と言われても、実感がわかない。
それもそのはず。
「貧しい子どもの姿」を日常生活で見ない。
ファストファッションやファストフードで見た目は変わらない。

(出典:子どもの貧困は外見では見分けられない – 東洋経済ONLINE)

食事内容

一例ですが、1日3食すら、まともに食べれない子供もいるようです。

子どもたちは、給食以外に食べ物を口にできない日もあり、「おなか減ったよ」と繰り返した。

(出典:【貧困の現場から】(1) – 西日本新聞)

教育格差

塾には行かせてもらえないし、進路も公立高校しかダメって言われてる。
私立の滑り止めを受けられる子は羨ましいと思うけど、そんな子は他にもいる

(出典:子どもの貧困は外見では見分けられない – 東洋経済ONLINE)

貧困問題を放置すると、なぜ困るのか?ミクロとマクロの両面から

日本財団が2015年に公開した「子どもの貧困の社会的損失推計」レポートによると、貧困問題を放置すると子どもや家庭にとっても、社会全体にとっても困った状況になる数値が出ているようです。

子どもや家庭にとって

低所得世帯で育った子どもは教育を受ける機会が少なくなってしまう(中略)。
学力の差は学歴の差

(出典:42兆円の社会的損失!子どもの貧困に「こども宅食」が挑む – アゴラ)

内閣府が2018年公表した「国における子供の貧困対策の取組について」(P4)によると、大学等進学率は全世帯平均が73.2%なのに対し、生活保護家庭は33.1%という大きな格差があります。

進学しないと、非正規雇用で収入が低い人や職に就けない人が増加。
つまり、子どもは大人になっても自分の親と同じように貧困層のままでいることになります。

社会全体にとって

進学しない貧困の子供は、大人になってから払う税金や社会保険料は少ないです。
さらに、生活保護などの支援を必要とするので、その分社会全体が負担することになります。

子どもの貧困を放置すると、現在の0〜15歳児について、将来の所得の損失は総額で42兆9000億円、それによる財政収入の損失は15兆9000億円(中略)
1年あたり、所得は約1兆円、財政収入は約3500億円の損失で(中略)あなたも含めた日本国民全体が分かち合うことになる

(出典:42兆円の社会的損失!子どもの貧困に「こども宅食」が挑む – アゴラ)

まとめ

日本の子どもの貧困は、7人に1人という現状。
それを放置すると、子どもは、大人になっても貧困にあえぐ貧困の連鎖が続き、国民の負担も増えることをご理解いただけたかと思います。

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