募金はどこにすべき?「効果的な利他主義」からひも解く、寄付先選び3つのポイント

「お金を出すのだから、きちんと役立ててほしい」
「無駄に使われないでほしい」
寄付をしている方や募金先を探している方なら、当たり前に思うことですね。

どの団体に募金をすべきなのか?
逆に言えば、どこに「寄付してはいけない」のか?

これらの質問に答えを出すために、アメリカなどで広まりつつあるのが「効果的な利他主義」という考え方。
〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ」(ウィリアム・マッカスキル )という本から抜粋して、事例やチェックポイントとともにお届けします。

アフリカの子供達のため“逆効果”だった、募金の使われ方の事例

1990年〜2000年代のアフリカ。
熱狂的な支持を得て、巨額の資金が投入されたものの、後で「むしろ悪影響だった」と分かった慈善プログラムがありました。

プレイポンプ」は、メリーゴーランド型の水汲みポンプシステム。
発展途上国の農村では、村の女性たちが何キロメートルも歩いて手押しポンプで水をくんだり、無風の日に風車ポンプの前に行列したり・・

そんな光景に心を痛めたアメリカ人の男性が開発したのは、「電力などを使わず、子どもたちが遊びながらグルグルまわすと水が汲み上げられるという画期的な仕組み」。
「水くみは子どもの遊び」「魔法のメリーゴーランド」といった見出しでメディアにも注目を集め、「タイム」誌でもビル・クリントン元大統領も「すばらしいイノベーション」と絶賛しました。

  • 「ONEウオーター」というミネラルウォーターのブランドを立ち上げ、利益をプレイポンプの活動に募金
  • 当時のファーストレディのローラ・ブッシュが1640万ドル(約18億円)の助成金を提供

さまざまな企業や財団、個人から資金が集まり、2000年代半ばには「国際開発分野で最も熱い話題」となりました。
それらの支援を受けて、南アフリカやモザンビーク、スワジランドにザンビアなどで1800台のプレイポンプを設置したそうです。

ところが問題だったのは、設置した後のこと。
「それまでプレイポンプの実用性についてまともに考察した者はひとりとしていなかった」そうです。

水をくみ上げるには、常に一定の力を加えつづける必要があるため、実は遊ぶ子どもたちはすぐに疲れてしまっていた、とのこと。

プレイポンプから落ちて手足を骨折したり、回りすぎて気分が悪くなり嘔吐したりする子どももいた。
ある村では、現地の子どもたちにお小遣いをあげて遊んでもらっていた。
ほとんどの場合、結局は村の女性たちがメリーゴーランドを自分で回すはめになり、疲れるうえに惨めな思いをさせられていた。
(「〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ」より)

旧来の手押しポンプと比べ、性能はほとんどの面で劣っていたものの、 1台あたりのコストは1万4000ドルと従来型のなんと4倍。
メディアのバッシングが盛んになるにつれて、運営団体は米国部門を閉鎖。
スポンサーも失敗を公に認め、今ではほとんど活動は行われていない、ということでした。

有益な寄付先の選び方は?3つのチェックポイント

こうして「プレイポンプ」は、多額の寄付が投じられてものの、後に「効果がなかった」と分かる支援プログラムの例として知られています。

そのような事態が起こらないために、どんな活動に資金が流れるようにすればよいのでしょうか?
一人ひとりが募金先を選ぶときに、どのような点をチェックすればよいのか?

著者のまとめたポイントのうち、3つをご紹介します。

ポイント1:寄付金の使い道が「最終的に誰の何のために役立つか?」を明らかにしているか?

多くの方が気にかけるのが、寄付金の使い道ですね。
使い道を公開していない団体は、なかなか信頼しにくいのは当たり前です。

では、「5,000円で○○できます」と公開していれば、それで十分なのでしょうか?

著者が例に挙げたのが、「ユナイテッド・ウェイ」という非営利団体のニューヨーク市支部。
「50ドルの寄付でひとつの家庭に5冊の育児ガイドブックを配付できる」そうです。

この情報開示は「方向性としては正しい」ものの、十分ではないと著者は指摘します。

その本で子どもの学業成績が向上するのか?
世の中への理解が深まり、家族の生活が豊かになるのか?
その本で誰の生活も向上しないとしたら、50ドルの寄付はムダになってしまう。
(「〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ」より)

「配付された教科書の冊数のような中間基準ではなく、むしろ生活の向上という観点で考えるべき」ということ。
団体の活動によって「何人がどれくらいの利益を得るか?」が明らかにされているか?を、チェックしてみましょう。

ポイント2:他の団体と比べて、寄付金を効果的に使っているか?

「募金が、最終的に役立っているか?」をポイント1で確かめたら、次に見極めるべきは「どのくらい効率的に役立っているか?」。

たとえば発展途上国の教育について、4つの援助プログラムの有効性を確かめます。
1000ドル(約11万円)の援助につき、「子どもたちの、就学年数がどれだけ増加したか?」に換算して検証してみたところ・・

  • 少女への送金:0.2年
  • 成績に基づく奨学金:3年
  • 無料の制服:7年
  • 寄生虫の駆除:139年

いずれのプログラムも、子どもが教育を受けるのに「目に見えるプラスの影響がある」という意味では ′′有効′′なのですが、その効果となると圧倒的な差が出ました。
「学校に通う少女に現金の報酬を与える」では、1,000ドルの支援をしても0.2年しか就学年数が伸びていないのに対して、「生徒の寄生虫の駆除」は139年と、500倍以上も効果的だったと判明したのです。

人々の役に立つという点でいえば、お金を効率的に使うのと、ものすごく効率的に使うのとの差は大きい。
だから、「このプログラムはお金の効率的な使い方か?」ではなく、「このプログラムはお金の最高の使い方か?」と問うことが大事なのだ。
(「〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ」より)

「これはあなたにできる最も効果的な活動か?」を、問いかけてみてはいかがでしょう。

ポイント3:必要以上の支援が、集まっていないか?

3つ目のポイントは、慈善団体の活動する分野です。
著者は、災害支援の寄付を引き合いに「収穫逓減の法則」を使って説明します。

ハイチ大地震や東日本大震災などは、ニュースで大々的に報じられると多額の寄付が集まりました。
一方、一般的には「災害支援よりも貧困と闘う最高の慈善団体に寄付するほうが理に適っている」と著者は主張します。

毎日、多くの人々がAIDS、了フリア、結核のような簡単に予防できる病気で亡くなっ ていっている。
これは ハイチ、東北、四川の地震をはるかに上回る災害ともいえる。
毎日、東北の地震の犠 牲者を上回る1万8000人の子どもたちが予防可能な原因で死んでいる。
(「〈効果的な利他主義〉宣言! ――慈善活動への科学的アプローチ」より)

たとえば「犠牲者1人あたりに受け取った寄付の金額」に換算すると、以下のように大きな落差があるそう。

  • 東日本大震災:33万ドル
  • 貧困関連:1万5千ドル

ほとんどの人は直感に従い、昔から続いている問題よりも、自然災害などの新しい出来事に反応してしまう。
そんな人間の性向を見据えたうえで、逆に「この分野は見過ごされているか?」を問いかけ、注目されてない分野を探すと、効果的な募金先を選びやすいでしょう。

日本のNPO・NGOの現実と、それでも大切なこと

前章で挙げた3つの他にも、本書では「この行動を取らなければどうなるか?」「成功の確率は?成功した場合の見返りは?」と合わせて、5つの基準を挙げています。

この記事では割愛しましたが、ご興味がある方は書籍をご覧になってみてください。

ここで正直に申し上げますと、実はこれらのチェックポイント、日本で寄付先のNGOやNPOを選ぶ方にとって、どこまで直接に役立つかは分かりません。

寄付を募っている団体のWEBサイトやプラットフォーム上で、大抵は「募金の使い道」は公開されていることでしょう。ところが・・

  • 寄付金を用いた事業の、最終的な効果(インパクト)は?
  • 他の団体と比べると、その費用対効果は高いのか?
  • 受益者のニーズに対して、資金の必要性はどれだけ満たしているのか?

これらのポイントに答える情報の全てが、分かりやすい形で公開されていることは、ほとんどないと言えるからです。
もちろん寄付金を受け取る団体側が「サボっている」「ダマそうとしている」訳ではないと、私は理解しています。

  • 支援活動の現場では、受益者のニーズに答える活動に追われ、リソース(人材や資金)が不足しがち
  • 定量的な検証に割く時間をとれず、支援者には活動実績や事例(ケース)の報告で精一杯に
  • そもそも「教育」や「政策提言」など、定量的な効果を検証しづらい分野もある

といった事情で、寄付にともなう「費用対効果をはかる」のは現実的に難しくなってしまっているのです。

私もNPO法人のフルタイム職員でいた経験もあるので、そういった現実を十分に理解をしたうえで、あえてお話しすると・・
この本に載っていたような定量的な効果検証の考え方、支援活動の現場でももっと取り入れられていくと良いなと捉えています。

もちろん、支援者への報告にコストをかけすぎて、肝心の支援活動がおろそかになっては本末転倒です。

ですが、「多大なリソースを投入したものの、むしろ逆効果だった」というプレイポンプのような事例を生まないよう、より質の高い活動を展開していくためにも、レポーティングは大事なこと。

こんな事業をすれば「困っている人を助けられずはず」「世の中をより良く変えていけるはず!」というビジョンや計画は、あくまで仮説。
その仮説が「現実に当てはまるのか?」を絶えず検証し、当てはまらない場合は軌道修正していく。
そのために定量的な証拠(エビデンス)を収集していく。

そんな謙虚な姿勢をもったNPOやNGOを、応援したいですね。
社会的インパクトを評価していこう」という流れは、非営利セクターの中でも数年前から盛り上がっており、今後の展開に個人的にも期待しています。

もしあなたが支援している団体があれば、「活動の最終的な効果」について、報告会や交流会などで質問してみてください。

(ぜひ公開情報には目を通したうえで、整理した形で問いかけてみましょう。)
この「寄付ナビ」でも、支援先をピックアップするにあたって、今回の記事に載せたようなポイントを取り上げていきたいと思います。

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